『脳神経倫理学の展望』
信原 幸弘・原 塑 編 20080825 勁草書房,357p.
■信原 幸弘・原 塑 編 20080825 『脳神経倫理学の展望』,勁草書房, 357p. \3150 ISBN-10: 4326153970 ISBN-13: 978-4326153978 [amazon]/[kinokuniya]
■内容紹介
脳の時代を生きるための新しい倫理学が誕生!問題の所在と広がりを示し、世界各地で精力的に研究が進む分野の全貌を明らかにする。
今日、目覚ましい進展を見せる脳神経科学。だが、脳を解明し操作することは私たちの心の働きに介入することでもある。脳の研究にどのような倫理的制約を課すべきか、また研究成果をどう社会に生かしてゆくのがよいのかを考えるのが、脳神経倫理学である。分野の射程と現在までの動向を紹介する、日本人研究者の手による初の入門書!
[関連書]M.ガザニガ 『脳のなかの倫理』 (紀伊國屋書店)ほか
内容(「BOOK」データベースより)
私たちの心や人間観にまで影響を及ぼす脳神経科学。その倫理的問題を徹底検証し、問題の所在と広がりを示す。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
信原 幸弘
1954年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授
原 塑
1968年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科特任研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
■目次
序章 脳神経科学と倫理 信原幸弘 1
1 技術的応用の恵みと災い 1
2 人間観への影響 5
3 可能性のなかでの問い 7
4 脳神経科学からの逆襲 10
Ⅰ 脳神経倫理学とは何か
第一章 「応用倫理学」とモンスターの哲学――脳神経倫理学の可能性 香川知晶 15
1 はじめに 15
2 応用倫理学とは何か――生命倫理学の成立事情から 16
3 脳神経倫理学の登場 24
4 モンスターの哲学という視座 29
5 「応用倫理学」と脳神経倫理学の可能性 35
第二章 脳神経倫理学の展開――成立からの経過と展望 福士珠美 39
1 脳神経倫理学の総論の成立 40
2 諸外国における各論の展開 43
3 日本における脳神経倫理学の成立と展開 49
4 脳神経倫理学の国際連携 55
第三章 歴史にみる脳神経科学の倫理問題――骨相学、精神外科、そして現代 奥野満里子 71
1 はじめに 71
2 一九世紀の骨相学 73
3 二〇世紀半ばの精神外科手術 83
4 最後に――現代人が反省すべきこと 94
Ⅱ 脳神経科学の技術的応用をめぐる倫理問題
第四章 「究極のプライバシー」が脅かされる!?――マインド・リーディング技術とプライバシー問題 染谷昌義・小口峰樹 101
1 はじめに 101
2 脳活動から心を読む技術の現状 103
3 心の読み取りの理論的問題 107
4 「究極のプライバシー」とは何か? 114
5 まとめ 121
第五章 責任の有無は脳でわかるか――精神鑑定から脳鑑定へ 河島一郎 127
1 精神鑑定のどこがまずいのか 129
2 精神鑑定から脳鑑定へ――脳神経科学を利用する 132
3 脳鑑定は万能か 137
4 適切な鑑定へ向けて――精神鑑定を利用する 140
5 まとめ 142
第六章 メディア暴力と人間の自律性 原 塑 149
1 はじめに 149
2 法的規制をめぐる倫理的論争 151
3 自律性の神経哲学的検討 157
4 まとめ 167
第七章 薬で頭をよくする社会――スマートドラッグにみる自由と公平性、そして人間性 植原 亮 173
1 スマートドラッグの現状と将来 173
2 社会的帰結をめぐる対立――自由と公平性 176
3 価値と人間性をめぐる対立 181
4 人間性と社会の変化をどう捉えるか 193
第八章 記憶の消去と人格の同一性の危機 中澤栄輔 201
1 はじめに 201
2 忘れたくても忘れられない記憶 204
3 PTSD 206
4 PTSDの治療とプロプラノロール 208
5 記憶の消去・変更と人格の同一性 210
6 まとめ 221
Ⅲ 人間観への深刻な影響
第九章 脳神経科学からの自由意志論――リベットの実験から 近藤智彦 229
1 リベットの実験のインパクト 230
2 内観報告は信頼できるのか 235
3 「拒否」の可能性 238
4 行為をより大きなプロセスの中で考える 242
5 脳神経科学からの自由意志論の展望 245
第一〇章 脳神経科学からみた刑罰 鈴木貴之 255
1 反社会性の脳神経科学 255
2 刑罰から治療へ 259
3 責任能力の行方 263
4 治療的介入の妥当性 266
5 予防的介入の可能性 270
6 まとめ 273
第一一章 道徳的判断と感情との関係――fMRI実験研究の知見より 蟹池陽一 283
1 はじめに 283
2 fMRI実験研究の背景となった損傷研究 286
3 単純な道徳的判断における脳の活動 287
4 自動的な反応としての道徳的感情 291
5 脳の各部位の機能と諸実験の結果の含意 294
6 複雑な道徳的判断での「感情」と「認知」 302
7 まとめ 305
第一二章 神経神学は神を救いうるか 高村夏輝 315
1 病理学的アプローチ 318
2 宗教経験はいかにして生じるか 320
3 新たなる神の存在証明 325
4 脳神経科学は宗教を葬り去れるか 331
あとがき 341
脳を調べる主な装置
事項索引
人名索引
■編著者紹介(*「奥付」より)
編者略歴
信原幸弘(のぶはら ゆきひろ、序章)
1954年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。著書に、『意識の哲学』(岩波書店、2002年)、「考える脳・考えない脳』(講談社現代新書、2000年)、『心の現代哲学』(勁草書房、1999年)、『シリーズ心の哲学』全3巻(編著、勁草書房、2004年)ほか。
原 塑(はら さく、第六章)
1968年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科特任研究員。主論文に“An Ecological Theory of Rational Interpretation” (Annals of the Japan Association for Philosophy of Science, vol.3, no.2, 2005),「抽象的記号システムと意味理論」(『哲学』56号、2005年)。
執筆者略歴
香川知晶(かがわ ちあき、第一章)
1951年生まれ。山梨大学医学部教授。著書に「死ぬ権利』(勁草書房、2006年)、『生命倫理の成立』(勁草書房、2000年)ほか。
福士珠美(ふくし たまみ、第二章)
1971年生まれ。(独)科学技術振興機構社会技術研究開発センター「脳科学と社会」研究開発領域研究員。著書に『ニューロエシックス』(共著、講談社現代新書、近刊)、『研究留学術』(共著、医歯薬出版、2003年)。
奥野満里子(おくの まりこ、第三章)
1970年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校客員助教授。著書に『シジウィックと現代功利主義』(勁草書房、1999年)、訳書にシンガー『私たちはどう生きるべきか』(共訳、法律文化社、1999年)、ヘア『道徳的に考えること』(共訳、勁草書房、1994年)ほか。
染谷昌義(そめや まさよし、第四章)
1970年生まれ。高千穂大学准教授。著書に『岩波講座哲学5 心/脳の哲学』(共著、岩波書店、2008年)、『シリーズ心の哲学II ロボット篇』(共著、勁草書房、2004年)、訳書にエルスター『合理性を圧倒する感情』(勁草書房、近刊)など。
小口峰樹(おぐち みねき、第四章)
1980年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍、東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター」リサーチアシスタント、日本学術振興会特別研究員(DC2)。主論文に「知覚内容をめぐる概念主義の擁護」(『哲学・科学史論叢』10号、2008年)。
河島一郎(かわしま いちろう、第五章)
1972年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。主論文に「行為の一般性と個別性」(『哲学・科学史論叢』8号、2006年)、訳書にデイヴィドソン「行為・理由・原因」(『自由と行為の哲学』春秋社、近刊)。
植原亮(うえはら りょう、第七章)
1978年生まれ。東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター」研究拠点形成特任研究員。主論文に「知識を世界に位置づける」(「科学基礎論研究』108号、2007年)、「脳神経科学を用いた知的能力の増強は自己を破壊するか」(『科学基礎論研究』109号、2008年)。第一回社会倫理研究奨励賞受賞。
中澤栄輔(なかざわ えいすけ、第八章)
1975年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍、東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター」リサーチアシスタント。主論文に「時間意識と時間図表」(『現象学年報』23号、2007年)。
近藤智彦(こんどう ともひこ、第九章)
1976年生まれ。秋田大学教育文化学部講師。著書に『ドゥルーズ/ガタリの現在』(分担執筆、平凡社、2008年)、主論文に「運命愛はストア的か?」(『思想』971号、2005年)、「カルネアデスによる運命論批判」(『哲学雑誌』121巻793号、2006年)。
鈴木貴之(すずき たかゆき、第一〇章)
1973年生まれ。南山大学人類文化学科専任講師。著書に『シリーズ心の哲学I 人間篇』(共著、勁草書房、2004年)、訳書にドレツキ『心を自然化する』(勁草書房、2007年)、デイヴィドソン『合理性の諸問題』(共訳、春秋社、2007年)ほか。
蟹池陽一(かにいけ よういち、第一一章)
1962年生まれ。國學院大學兼任講師。著書に『哲学の歴史11 20世紀II 論理・数学・言語』(共著、中央公論新社、2007年)。
高村夏輝(たかむら なつき、第一二章)
1972年生まれ。自由学園非常勤講師。訳書にラッセル『論理的原子論の哲学』(ちくま学芸文庫、2007年)、ラッセル『哲学入門』(ちくま学芸文庫、2005年)、ウエストン『ここからはじまる哲学』(共訳、春秋社、2004年)。
*作成:植村 要