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『障害者の権利条約と日本――概要と展望』

長瀬 修・東 俊裕・川島 聡 編 20080729 生活書院,307p.


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長瀬 修東 俊裕川島 聡 20080729 『障害者の権利条約と日本――概要と展望』,生活書院,307p. ISBN-10:4903690237 ISBN-13: 9784903690230 \2940 [amazon][kinokuniya] ※ undc
→ (増補改訂) 長瀬 修東 俊裕川島 聡 編 20121020 『[増補改訂] 障害者の権利条約と日本――概要と展望』,生活書院,404p. ISBN-10:4903690989 ISBN-13:978-4903690988 2800円+税 [amazon][kinokuniya]

■内容

(「BOOK」データベースより)
2008年5月3日、条約発効!―国際人権における新たな歴史の始まりを告げ、21世紀における障害者の法的状況を根幹から変革し、社会への完全参加と機会の実質的平等をめざす障害者の権利条約について、策定過程に参画した第一線の執筆者がテーマごとに詳説。日本における条約の理念の実現に向けて、いま何が必要なのかを論じる。

■目次

第1章 障害者の権利条約の成立
第2章 障害に基づく差別の禁止
第3章 強制医療・強制収容
第4章 司法へのアクセス
第5章 手話・言語・コミュニケーション
第6章 教育
第7章 労働
第8章 自立生活

■引用

◇条約の理念
 「障害者の権利条約は、障害者を治療や保護の客体としてではなく、人権の「主体」として捉える障害者観に立脚している。このような障害者観の転換にとって基本的な重要性を有するのは、(中略)第2条に定める一般原則(general principles)である。(中略)すなわち、(a)固有の尊厳、個人の自律(自ら選択する自由を含む)、(b)非差別、(c)社会への完全かつ効果的な参加とインクルージョン、(d)差異の尊重と、人間の多様性の一環及び人類の一員としての障害者の受容、(e)機会の平等、(f) アクセシビリティ、である。これらの原則は、たとえば条約の「根本原則」(underlying principles)や「指導原理」(guiding principles)と言われたりすることもあるように、条約の解釈や実施に際しての基本的な指針となる。一般原則は条約のいわば「屋台骨」として位置付けられるのである。」(p14)

◇社会権の「漸進的実現」
  「障害者の権利条約は「すべての人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有」(第1条)という目的を掲げている。この引用部分からもわかるように、本条約を支える重要な柱たる「非差別・平等」の原則は、市民的権利及び政治的権利(以下略して自由権)と、経済的、社会的及び文化的権利(以下略して社会権)を含めたすべての権利群に結び付けられている。(中略)
 ここで大きな論点の1つとなるのが「資源」(resources)の問題である。というのも、資源の希少性ゆえに国家は社会権を即座に実施することができない状況にしばしば置かれるからである。この点、社会権の「完全な実現」にはそれなりの時間を要するという「漸進的実現」の概念は、社会権規約委員会によれば、現実世界の実状と社会権の「完全な実現」を確保することの困難さとを反映した「否定しえない柔軟性の仕掛け」(a necessary flexibility device)である。(中略)
 たしかに社会権の「完全な実現」は漸進的に達成される側面があり、一般的に短期間ではなしえないであろう。しかしこの概念は、その「完全な実現」に向けて可能なかぎり迅速かつ効果的に措置を講ずる義務があることを意味しているのである。この点で、国家が故意に後退的措置をとる場合には「最も入念な考慮」(the most careful consideration)が求められる。この場合にはまた、国家は最大限利用可能な資源を十分に投入したか等、そうした後退的措置を十分に正当化する必要がある。このような理解は、国際人権法の支配的な学説によっても支持されており、社会権であっても即自的義務を国家が負う場合があることは、国際法上すでに確立していると言うことができる。」(p17)

◇人権と開発
「障害者の権利条約に定める義務を履行するための財政的負担その他の負担は、とりわけ発展途上国にとっては大変厳しいものとなる場合がある。この点で注目されるのは、本条約が主要人権条約のなかでは初めて、国際協力に関する独立した条文(第32条)を設けたことである。」(P18)
「もとより、国際協力の視点を盛り込まなければ、それは結果として障害者に不利な影響を及ぼすことになる。障害者のニーズを考慮しない開発援助や国際協力が行われてきたことで、障害者を排除する社会制度が固定化され、強化された側面があることは否定できまい。
 たしかに伝統的な国連障害者政策においても、開発政策の主流に障害者問題を組み込む必要性は指摘されてきた。しかしながら、これまでの国連障害者政策は国連人権法との接点が希薄であったため、「障害を包摂した開発」における「規範的基礎」は抽象的かつ一般的な次元にとどまっていた。これに対し、障害者の権利条約は、その具体的な「規範的基礎」をもたらしてくれるのである。したがって、今後は「障害を包摂した開発」を本条約上の義務として位置づける理論の構築と、実践の積み重ねがいっそう重要となる。その際には、これまでの国際人権法の蓄積を十分に踏まえる必要がることは言うまでもない。
 以上で述べたことから明らかなように、障害者の権利条約は、国際人権法分野はもとより、国際協力・開発分野においても大きな役割を果たす可能性を有する。」(p19)

■書評・紹介


■言及



*作成:角崎 洋平
UP:20090128 REV:20091218
長瀬 修  ◇東 俊裕  ◇川島 聡  ◇障害者の権利条約  ◇身体×世界:関連書籍 2005-  ◇BOOK
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