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『終末期医療と生命倫理』

飯田 亘之・甲斐 克則 編 20080701 太陽出版

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飯田 亘之甲斐 克則 編 20080701 『終末期医療と生命倫理』,太陽出版,生命倫理コロッキウム4,282p.ISBN-10:488469578X ISBN-13:9784884695781 [amazon][kinokuniya] ※ et.be.


■内 容

本書は日本医学哲学・倫理学会企画の「生命倫理コロッキウム」シリーズの1つである。
本書そのものの企画は4年余り前に遡る。2003年の秋、日本医学哲学・倫理学会のコロッキウムで「安楽死」がテーマとして取り上げられ、他のシリーズ本と同様、その討論参加者中心の論文集出版の企画がなされた。
この論文集は一覧してお分かりのように終末期医療研究資料集というのがその内容により一層ふさわしい名称と思われる。すなわち、これは通常の終末期医療に関する論文、フランス国家倫理諮問委員会の終末期医療に関する意見書、日本医師会諸報告書の比較検討、わが国の最近の裁判の判決文、フランス尊厳死法、ヨーロッパやオーストラリアの終末期医療の調査報告等から成っている。

■目 次

 T 終末期医療における病者の自己決定の意義と法的限界
 U 積極的安楽死違法論再構築の試み―「人間の尊厳」は「死への自己決定権」ではなく「生命の価値」を導く―
 V わが国の医療現場における「尊厳死」の現状―告知の問題―
 W 終末期医療のガイドライン―日本医師会のとりまとめた諸報告書の比較
検討  
 X 「安楽死の意図は患者の死亡、鎮静の意図は苦痛緩和」という二極分化的思考の問題点
 Y フランス国家倫理諮問委員会:「生命の終わり、生命を終わらせること、
安楽死」に関する見解

資料編 
  収録されている資料は、日本の関連判例(東海大学病院事件判決、川崎協同病院事件第1審および第2審判決)、厚生労働省「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」、フランスの「『病者の権利および生命の末期に関する2005年4月22日の法律370号』による改正を経た、法典の関連する規定」、および同法の解説、ヘルガ・クーゼほかの論文「オーストラリアの医療における意思決定」の部分翻訳、A・ファン・デル・ヘイデほかの論文「ヨーロッパ6カ国における終末期の意思決定:記述的研究」(要約)、J・ビルセンほかの論文「余命短縮という副作用の可能性を持つ症状軽減に使用される薬剤:ヨーロッパ6カ国における終末期ケア(要約)、G・ミッチネージほかの論文「持続的な深い鎮静:ヨーロッパ6カ国における医師の経験」(要約)、A・ファン・デル・ヘイデほか「安楽死施行下のオランダにおける終末期医療」(要約)、クライブ・シール「英国開業医による終末期の決定の全国調査」である。


Tの甲斐克則論文「終末期医療における病者の自己決定の意義と法的限界」は、終末期医療における病者の自己決定に焦点を当て、安楽死、自殺幇助、尊厳死の各場面について、国内外の最新動向を踏まえて刑法的観点から病者の自己決定の意義と法的限界を明らかにしている。誰もが直面する死であるが、こと生命に関わると誰かが代わることができない、という宿命がある。したがって、「自分らしく最期を迎える」とは言うが、安楽死や尊厳死の問題を考えるときには、「いかに自分らしく最期を生きるか」という問題だと筆者は捉えている。法的に言うと、生存権を十分に保障したうえで最期を考えるということでなければならない。最期を良く生きることを考えずに、死ぬことばかり、あるいは死なせることばかりを考えるのは、前提を取り違えた議論である。このような問題意識から、本稿では、病者の自己決定(権)の意義と限界に焦点を当てつつ、まず、安楽死の中でもとりわけ議論が分かれる積極的安楽死の問題について論じ、次に、自殺および自殺幇助の問題について論じ、最後に、最も難解な尊厳死の問題について論じている。

Uの秋葉悦子論文「積極的安楽死違法論再構築の試み」は、その副題が示すように、「人間の尊厳」は「死への自己決定権」ではなく「生命の価値」を導くことを刑法的および生命倫理学的観点から主張している。そこには、「人間の尊厳」に根ざした奥深い論理展開を読みとることができる。ここではまず、最近の生命倫理学の議論を参考に、人間の尊厳原則は「死への自己決定」の尊重を要請せず、反対に「生命の客観的価値」を導くこと、したがって自己決定権と緊急避難の法理による積極的安楽死の合法化は困難であることの論証を試み、最後に、患者の自己決定権に基づく積極的安楽死の合法化を実現したオランダで生じている逆説的な医療実務の現状と、ヨーロッパ緩和ケア協会倫理対策委員会の提示する積極的安楽死合法化の代替案を概観している。

Vの松島英介ほか論文「わが国の医療現場における『尊厳死』の現状」は、精神神経内科の専門家として緩和医療の問題についての数年来の実態調査に基づき、がんの告知をめぐるコミュニケーションのあり方について臨床現場から問題提起をしている。

Wの加藤尚武論文「終末期医療のガイドライン」は、日本を代表する哲学者・倫理学者が、日本医師会のとりまとめた諸報告書を批判的に比較検討したものである。筆者ならではの鋭い分析から、なお解決すべき課題を見いだすことができる。

Xの飯田亘之論文「『安楽死の意図は患者の死亡、鎮静の意図は苦痛緩和』という二極分化的思考の問題点」は、倫理学の観点から終末期医療の問題について長年にわたりヨーロッパ諸国やオーストラリアの動向をフォローされた筆者ならではの筆致で二重結果論を検討し、鎮静について考察を加えている。

Yは、フランス国家倫理諮問委員会の「『生命の終わり、生命を終わらせること、安楽死』に関する見解」(2003年)を飯田教授も加わって翻訳されたものであり、「生きる」ことと「死ぬ」ことをめぐるフランスの議論がここに圧縮されている。



◆終末期医療における病者の自己決定の意義と法的限界 甲斐 克則 著 13-67
◆積極的安楽死違法論再構築の試み 秋葉 悦子 著 68-93
◆わが国の医療現場における「尊厳死」の現状 松島英介 ほか著 94-118
◆終末期医療のガイドライン 加藤 尚武 119-137
◆「安楽死の意図は患者の死亡,鎮静の意図は苦痛緩和」という二極分化的思考の問題点 飯田 亘之 著 138-167
◆フランス国家倫理諮問委員会:「生命の終わり,生命を終わらせること,安楽死」に関する見解 168-205
◆終末期医療に関する判例 甲斐 克則 209-220
◆厚生労働省「終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会」「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」 221-222
◆「病者の権利および生命の末期に関する2005年4月22日の法律370号」による改正を経た,法典の関連する規定 本田まり 訳 223-231
◆解説「病者の権利および生命の末期に関する2005年4月22日の法律」 本田まり 訳 232-239
◆オーストラリアの医療における終末期の意思決定 ヘルガ・クーゼ ほか著 240-256
◆ヨーロッパ6カ国における終末期の意思決定:記述的研究 A.ファン・デル・ヘイデ ほか著 257-263
◆余命短縮という副作用の可能性を持つ症状軽減に使用される薬剤:ヨーロッパ6カ国における終末期ケア J.ビルセン ほか著 264-266
◆持続的な深い鎮静:ヨーロッパ6カ国における医師の経験 G.ミッチネージ ほか著 267-269
◆安楽死法施行下のオランダにおける終末期医療 A.ファン・デル・ヘイデ ほか著 270-273
◆英国開業医による終末期の決定の全国調査 クライブ・シール 著 274-279



甲斐 克則 20080701 「終末期医療における病者の自己決定の意義と法的限界」,飯田・甲斐編[2008:13-67]
◆秋葉 悦子 20080701 「積極的安楽死違法論再構築の試み」,飯田・甲斐編[2008:68-93]
加藤 尚武 20080701 「終末期医療のガイドライン――日本医師会のとりまとめた諸報告書の比較検討」,飯田・甲斐編[2008:119-137]
飯田 亘之 20080701 「安楽死の意図は患者の死亡,鎮静の意図は苦痛緩和」という二極分化的思考の問題点」,飯田・甲斐編[2008:138-167]


作成:中村聡志
UP:20080810
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