『保健医療福祉くせものキーワード事典』
保健医療福祉キーワード研究会 200807 医学書院,256p.
■保健医療福祉キーワード研究会 200807 『保健医療福祉くせものキーワード事典』,医学書院,256p. ISBN-10:4260006169 ISBN-13: 978-4260006163 ¥2100 [amazon] ※
■内容
・医学書院HPから
なぜあなたの話は通じないのか!?
医療と福祉、病院と在宅、医師と看護師……職種やフィールドが違うとなぜか話が通じない。同じ言葉を使っているのに、いや同じ言葉だからこそ通じない? 本書では「ADL」「キーパーソン」「医療行為」「障害の受容」など、“うなずかれるけど通じない”微妙なキーワードを徹底解説。職種による使われ方の“違い”に焦点を当てた初の事典!
■目次
くせものキーワードとは何か
01 寝たきり老人
寝かせきり老人/寝たきり起こし/寝たきり度/「処遇」概念/寝ていたい老人
02 社会的入院
特別養護老人ホーム/福祉の医療化/老人病院/療養病床・療養病棟
老人保健施設/介護施設/長期療養施設/社会的転院
03 インフォームドコンセント
知る権利/説明義務/パターナリズム
04 障害受容
リハビリテーション/リハビリテーション心理学/病識の欠如/脊髄損傷
05 ターミナルケア
ムンテラ/疼痛緩和・疼痛管理/死の受容/告知
06 認知症
せん妄/意識障害/治療可能な認知症/徘徊
07 カンファレンス
サービス担当者会議/チームワーク
08 医療行為
看護行為/身体介護/吸たん/体位ドレナージ
09 尿失禁
神経因性膀胱/腹圧性尿失禁/ほかの疾患による尿失禁/機能性尿失禁
10 往診と訪問診療
定期往診・臨時往診/寝たきり老人在宅総合診療料
在宅時医学総合管理料/居宅療養指導管理料/在宅療養支援診療所
11 主治医
一般医・総合医/総合診療/家庭医/プライマリケア医/かかりつけ医
12 呼び寄せ老人と遠距離介護
集合住宅/ムラから消える老人
13 訪問リハビリテーション
在宅リハビリテーション/地域リハビリテーション
理学療法/作業療法/言語(聴覚)療法
14 通所サービスと送迎
通所介護/通所リハビリテーション/社会参加/介護休養
外出支援/移動支援/福祉タクシー/介護タクシー
15 問題行動
異常行動/行動障害/介護への抵抗
16 福祉用具・福祉機器
介護用品/補装具/日常生活用具/補助器具
テクニカルエイド/テクノエイド協会/福祉用具プランナー
17 ADL
バーセルインデックス/FIM
「できるADL」と「しているADL」/モーニングケア・イブニングケア
18 カルテ開示
カルテ/プライバシーの権利/レセプト開示
19 感染症
感染症新法/伝染病/疥癬/MRSA/結核
20 キーパーソン
保護者/成年後見制度/地域福祉権利擁護事業
21 服薬指導
訪問服薬指導/居宅療養管理指導/配達/処方薬/一般薬
医薬分業/薬漬け医療/自己決定/服薬コンプライアンス
22 家族介護
介護地獄/介護の社会化
23 生活習慣病
成人病/脳卒中/健康増進法/健康日本21/過労死
24 虐待
DV/児童虐待/高齢者虐待
25 健康診断
健康診査/健康診査の指針/集団検診/人間ドック/健康診断書
26 老人ホーム
小規模・多機能/地域密着型/第三カテゴリー
27 見守り・一部介助・全介助
要介護度/介護認定審査/生活機能
28 ソーシャルワーカー
介護支援専門員/医療ソーシャルワーカー
精神医療ソーシャルワーカー/社会福祉士/精神保健福祉士
文献
あとがき
■引用
「1968年には全国社会福祉協議会の「居宅寝たきり老人実態調査」が実施され、その結果は新聞やテレビなどで報道された。「高齢者問題を初めて本格的に検討した『昭和45年版白書』も、この全社協調査を詳しく紹介」[二木1996]している」22
二木立1996「公的介護保険の問題点」、里見賢治ほか『公的介護保険に異議ありーもう1つの提案ー』ミネルヴァ書房:103-104
「寝たきり老人たちは、はじめ地域の片隅にひっそりと暮らしていた。その実態は明らかでなく、寝たきり老人を「発見」していく運動が必要であったのだ。これらの運動は、隠れた寝たきり老人の存在とともに、在宅医療や生活支援の必要性を示し、参加した保健・医療・福祉関係者や市民・高齢者の行動や発言を通じて、寝たきり老人のことを広く社会問題化した。
「だまってみてはいられない」を合いことばに、1976年から東京の東部下町の6区(足立、葛飾、墨田、荒川、江戸川、江東)で行われた「東部地域ねたきり老人実態調査懇談会(代表・増子忠道)の活動は、その代表的な例である」23
「1990年代から、厚生省(当時。以下略)の示した分類方法(「障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準」=JABCの四段階に分けるもの)が広く使われている。「寝たきり度」は厚生省がこの分類に公式につけた通称である。
実は、一見すると厚生省分類とやや似ており、おそらくその原型となったと思われるADLの分類に、二木立(日本福祉大学教授、元代々木病院リハビリテーション科医長)が脳卒中の早期リハビリテーションにおける予後予測の研究で用いたものがある[二木・上田1992]。
これは脳卒中患者のADLを全介助、床上自立、屋内自立、屋外自立に分類したもので、分類の基準は、先の厚生省基準よりはるかに緻密である。年齢などの因子と組み合わせ、入院して早期に予後を予測するために用いられてきた。
この分類のカテゴリーに「寝たきり」ということばは用いられていない。ADLという客観的な能力障害の尺度を表現するうえで、それは実は当然のことであった。
前述したように、「寝たきり」ということばで表現されているものには、"寝たきりでいる"という客観的な状態と"寝かせきりで置かれてきた"という「処遇」的な状態の両側面がある。その人が寝たきりでいないために必要な介護や器具が何なのかを正確にとらえるために、このふたつの意味は峻別する必要がある。
厚生省のJABC分類は、「寝たきり度」という通称をみずから名乗ることによって、行政のあいまいな姿勢を露呈させたといえる。」24
二木立・上田敏1992「脳卒中の早期リハビリテーション(第2版)」医学書院
■書評・紹介
■言及
*作成:田島 明子