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『女性医療の会話分析』

西阪 仰・高木 智世・川島 理恵 20080610 文化書房博文社,253p.


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■西阪 仰・高木 智世・川島 理恵 20080610 『女性医療の会話分析』,文化書房博文社,253p. ISBN:4830111283 ISBN-13:978-4830111280 \3570 [amazon][kinokuniya] ※ f03

■【著者情報】(「kinokuniya」データベースより)
西阪仰[ニシザカアオグ]
明治学院大学社会学部教員。専攻は社会学・会話分析・エスノメソドロジー

高木智世[タカギトモヨ]
筑波大学大学院人文社会科学研究科教員。専攻は言語学・会話分析

川島理恵[カワシマミチエ]
埼玉大学教養学部 日本学術振興会特別研究員。専攻は社会学・会話分析(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
はじめに

序章  会話分析と女性医療の社会学

第1部 道具と相互行為―環境のなかの身体
1章 技術的環境における分散する指し示し―超音波検査における相互行為
2章 非技術的環境における指し示し―経腟殖診における相互行為
3章 診療記録媒体への指し示し―婦人科カウンセリングにおける相互行為

第2部 女性医療における相互行為の秩序
4章 婦人科カウンセリングにおける「心の問題」をめぐる問題
5章 不妊治療方針に関する提案の構造
6章 不妊治療における患者意思の立ち現れ方
7章 妊婦が心配事を語るとき―非正当的位置における防御的問題提示について

付録(依頼書・承諾書;データ使用の手引き)

■引用
 本書は、産婦人科の医院、総合病院の産婦人科外来、および助産院において、医療専門家(医師、助産師、看護師)と妊婦もしくは患者との相互行為(問診や検査)を扱ったものである。2002年から2004年にかけて、著者たちは、機会があれば、ビデオを抱えて産婦人科医院や助産院を訪れた。以下の諸章は、そのとき録画したものを詳細に分析することにより、産婦人科医療における、あるいは医療におけるやりとり、あるいは、そもそも人間どうしのやりとりは、いったいどのように組織されているのか、その一端を明らかにしようとするものである。(p15)

 まず医師は、日常的に使われるような言葉を使うことで、患者に対してよりわかりやしく説明する努力をしていることを示している。ただそういった言い表し方は、医学的なことをわかりやすく説明できるという医師の熟練を示している。またそれと同時に、この言い表し方は、相互行為的にその場で相手がどのような知識を持ち、なにが理解可能であるのかを話し手が考慮して発話する「相手の知識を考慮した発話のデザイン」であるとも言える(Sack et al., 1978)。アンシ・パラキュラは、医療的な権威というものが、ただ単に「医師である」とは「看護師である」というだけで成立するものではなく、相互行為上で診断を「説明可能なもの」として患者に提示することで支えられていると論じている(Perakyla, 1998)。
 医師は医療上の判断にのみ志向した形で治療手段の提案を行っているわけではない。意思決定過程では、相互行為上の極めて局所的な連鎖の構造が重要となってくる。治療手段の提案は、特定の治療手段に一種の価値を付加して行われる。例えば、人工授精という一種の治療方法の説明の最中には、「成功率を高くする」という価値を付けることで提案がなされる。医師は、その価値を患者と交渉しながら、提案を組み立てていく。
 実は、この説明と提案の2つの行為は、緊迫したバランスの中に成り立っていた。一方で、説明は医師が患者に情報を提供するという、言わば「中立的な立場」から行われるものと考えられる。また提案という行為は、患者に応答を求める局所的な必要性や義務を生じさせてしまう為に、高圧的、強迫的な関わりともなりえる。医師は、交渉の中で中立な立場を保つ姿勢を見せながら、相互行為上に生じる必要性や義務にも志向した形で話を進めている。(p174-175)

■書評・紹介

■言及



*作成:櫻井 浩子
UP:20081030 REV:
フェミニズム  ◇身体×世界:関連書籍 2005-  ◇BOOK
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