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『「はだかの王様」の経済学──現代人のためのマルクス再入門』

松尾 匡 20080619 東洋経済新報社,xxi+288p.

last update:20120402

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松尾 匡 20080619 『「はだかの王様」の経済学──現代人のためのマルクス再入門』,東洋経済新報社,xxi+288p.  ISBN-10: 4492371052 ISBN-13: 978-4492371053 \1900+税  [amazon][kinokuniya]

■内容

荘子から現代ゲーム論までを貫くマルクス疎外論の社会図式。

■著者からのコメント

本書は、極力専門用語を使わずに日常用語で語り、原稿のわかりにくいところを何度も書き直し、多くの立ち入った話を涙を飲んで削り、 できるかぎり気軽に読めるよう努力して作りました。「市場」や「国家」や「主義主張」など、「大きなこと」「全体的なこと」が、 個人個人の具体的な現場の事情やくらしの事情におかまいなく、勝手に一人歩きして、個人個人を振り回してしまう。こんな不条理を、 本書では「疎外」と呼び、なぜこんなことが起きるのかを、「はだかの王様」の童話に見られる仕組みから説明しています。 本書では、その解決法については、現実のいろいろな困難をふまえた詳しい提案をする余裕がありませんでしたが、この点については、 『市民参加のまちづくり【戦略編】──参加とリーダーシップ・自立とパートナーシップ』の私の執筆章をご検討下さい。

■著者略歴

1964年生まれ。87年金沢大学経済学部卒業。92年神戸大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。久留米大学経済学部助教授・教授等を経て、 2008年4月より立命館大学経済学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次

はじめに

第1章 「はだかの王様」で世の中を見ると
心にもない「おいしい」
イジメも同じ構図
もっとシリアスな例も
三〇〇〇万人が餓死した
「権力」っていったい何?
なぜ信長は絶対権力を持てたのか
「上様は生きておわす」!?
権力者不在の権力
本能的な実感と社会的な「思い込み」
なぜ「はだかの王様」になるのか
観念がひとり立ちしてしまう

第2章 おカネはどうして通用するのか
権力なき貨幣――マリア・テレジア銀貨
銀の量も軍事力も理由ではない
誰もが王様ははだかだと知っていた
ドルはなぜいまだに基軸通貨なのか
みんながドルが欲しいからドルが欲しい
日本陸軍のニセ札作戦
お前は一文の値打ちもない……
おカネの亡者はじつはエゴイストではない
おカネがないほうが自然
貨幣の出現
ニーズがわかりあえないことが原因
短命に終わった「政府紙幣」
不換銀行券とインフレ
一〇の一七乗倍のインフレ
デフレは「貨幣のファッショ」
デフレは不況をもたらす
「流動性のわな」の恐怖
やはり「思い込み」の暴走
永日小品「金」

第3章 「疎外」ということ――「はだかの王様」の哲学
有史以来続いている問題
「人類解放」のひとり歩き
かつての日本から現代のテロまで
これを「疎外」を言う
身近な疎外の例
もっと深刻な例も
「疎外」という言い方の由来
フォイエルバッハの宗教批判
底の浅い宗教批判ではない
「理念からの堕落」ですましてはならない
シュティルナーの「唯一者」
そしてマルクス
「国家」も疎外論で説明される
「国家=支配階級の暴力装置」説は正しいか
「階級国家」は結果弊害にすぎない
今どきの「改革派」の危うさ
私有財産が諸悪の原因か
労働がイヤイヤやるものに疎外
疎外こそが資本家や私有財産を生みだす
労働疎外があれば階級支配は生じる
どうして階級支配が起こってしまうのか
その後の疎外分析の例

第4章 資本主義経済の仕組みを疎外論で説く――価値・価格・搾取
『資本論』体系全体が意味すること
労働価値説はトンデモか
投下労働量を基準にする意味
見込み生産では過不足が起きる
「物象化」という疎外
投下労働量どおりの交換から話を始める意義
モノがモノを評価する疎外
「抽象」が「具体」を支配してしまう
貨幣は神の地位につく
貨幣物神崇拝教
貨幣から資本へ
いったん否定されたマルクス搾取論
マルクスの基本定理
マルクス搾取論の真意
公正な商品交換の場と支配関係の場

第5章 資本主義経済の仕組みを疎外論で説く――資本の蓄積
貨幣の自己膨張
生産手段の自己膨張
人間は手段化
際限ない搾取
資本家機能が要る理由
「労働者がしいたげられているから立ち上がる」?
資本家が要らなくなる理由
歩く「人間の本質」がいた!
私的所有と個人的所有
「一部の人の決定」から「みんなで決定」へ
一般的利潤率の形成
商業資本も銀行資本も同じ図式
国有化では問題は解決しない
壮大な本末転倒

第6章 ゲームに理論よる「はだかの王様」型制度分析
方法論的個人主義
昔の左派が数学嫌いだったわけ
個々人と秩序の相互作用
方法論的個人主義こそ体制批判的
ゲーム理論とは何か
彼と彼女の地震ゲーム――その1
パレート最適は実現するか
「制度」が人間からひとり立ちする
彼と彼女の地震ゲーム――その2
なぜ長子相続がとられたか
「はだかの王様」のナッシュ均衡
パレート劣位が持続してしまう
「政治経済」を必須受験科目にできない
日本型企業制度は伝統ではなかった
各企業に特有の技能のために終身雇用制
年功序列と微妙な出世競争
日本型とアメリカ型の二つのナッシュ均衡
まわりに合わせざるをえない
たまたまはまり込んだ均衡だった
ジョブ・ローテーションの意義
企業別労働組合
日本型企業制度の前提条件が崩れた
現実的なものは合理的であり……

第7章 制度の変化のゲーム理論分析
時処機相応――「思い込み」も不滅ではない
観念に縛られたナッシュ均衡
ナッシュ均衡が消えるとき
長子相続も維持されるか
国際通貨という均衡――ポンドからドルへ
どのようにしてポンドからドルへ移ったか
二つの均衡がありうる
均衡のジャンプ
これが革命だ
合理的でない振る舞いの益
これが唯物史観だ
疎外のひとり歩きもやがてはくつがえる
中世ヨーロッパの村落
市場経済の広がり
中世から近代へ
市場経済の発展が市民革命をもたらした
公家の支配の空洞化
武士の政権の誕生
歴史を作ったのは庶民たちの日常の積み重ね

第8章 疎外なき社会を求めて――今できることとできないこと
自分の手の届くところから
「地上の星」
アソシエーションの構想
アソシエーションは一九世紀の普通の理想
マルクスとアナーキストの対立
疎外のなくし方が違っていた
資本主義の発展をどう見るか
上部構造が土台を変える?
国家主導イメージへの変質
マルクスの展望が失われた独占資本主義時代
社会民主主義と共産主義への分裂
複雑労働力という商品の生産
くらしを犠牲にして労働能力をみがく
シグナリングとは何か
複雑労働力の質を表すシグナル
かくして社会保障が始まった
福祉国家も疎外の産物だった
複雑労働力が要らない新時代
水平的組織の企業
ニーズに基づく生産
二〇世紀のどこが引き継がれるべきなのか
なぜ福祉や医療から始まったのか
ニーズに基づく生産のネットワーク
「市民参加のまちづくり」
まず足もとから取り組むことの意義
資本主義を変える営みとは

おわりに

■引用

■書評・紹介

■言及

■参考

◇中島みゆきオフィシャルYouTube
「地上の星」
http://www.youtube.com/watch?v=v2SlpjCz7uE


*作成:北村 健太郎
UP: 20120402 REV:
経済(学)  ◇Marx, Karl[カール・マルクス]  ◇労働  ◇共同体運動・コミューン運動  ◇国家/国境  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
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