当事者の経験に当事者が学ぶ !! 家族間系、国際結婚、学校生活から、青年期・成人期に戸惑わない、人と状況に応じた支援のヒントがいっぱい。
オーティズム・リトリート・ジャパン―支援者も学べる自閉症者のための当事者大会。成人期当事者の経験や実態から具体的支援のかたちを探る―家族関係、国際結婚、学校生活から青年期・成人期に戸惑わない、人と状況に応じた支援のヒントがいっぱい。
■著者紹介アスペルガー症候群についてわかっていること
■言及アスペルガー症候群について、現時点でわかっていることを申しますと、まず神経学的な状態であることがわかっています。たとえば視覚障害の人は、誰が見ても「この人は視覚障害だ」とわかりますから、視覚障害方が横断歩道を渡ろうとしていたら、みなさんは手を貸すでしょう。でも、私たちの難しさは頭の中にあって、人の目には見えません。だから、なかなか支援してもらえないのです。
私たちの問題は、前頭葉・側頭葉の右半球における障害だということがわかっています。そして、その思考は遺伝によって影響をうけています。また。広汎性発達障害であり、社会性、言語、認知、色彩的な問題をもち、障害のスペクトラムであることがわかっています。
高機能自閉症者のテンプル・グランディンさんは、子どもの頃、言葉を話しませんでした。いま彼女は、私の出発点と同じ状態、すなわちアスペルガーの状態にいらっしゃると思います。私は、子どもの頃、アスペルガーでした。しかし、いろいろなセラピー・介入を受けたおかげで、いまは神経学的にほとんど定型発達に近いところまで来ています。トニー・アトウッド先生は、「アスペルガーであることはかわりないけれども、神経学的にはほとんど定型発達に近い」とおっしゃています。
もう一度まとめてみましょう。アスペルガー症候群と診断された人がいても、その人たち全員が同じなのではありません。また、アスペルガー症候群は、親が子どもに対して十分な配慮をおしなかったために起きる問題でもありません。アスペルガー症候群は、行動障害でも行為障害でもないのです。もし問題行動があるとすれば、それは感覚が過度に刺激されたことによって起きるもの、もしくは、いったいどう振舞えばいいのかわからず混乱したことによって起きるものです。
そして、この問題行動は側頭葉の痙攣発作によるものであり、てんかん発作と同様に、自己統制ができなくなってしまう、という言う人もいます。
アスペルガー症候群と診断された人でも、一人ひとり違っています。それは親からいろいろな遺伝的要素を受け継いでいるからです。たとえば私の両親の話をしますと、私の母親は非常にアグレッシブな人で、声高に自分を主張し、すべて自分でコントロールしばければと思っていた人でした。一方、私の父親は非常に物静かで、知的な人でした。私は母親の気質を受け継いでいると思います。だからこそ私は、こうやって人前で大きな声で、身振り手振りを交えて、表情豊かにお話しているのだと思います。逆に私の娘は、その父親(つまり私の夫)の気質を受け継ぎ、私の夫と父の気質は似ています。そういう面でもアスペルガーの出方は違いますし、親の育て方によっても変わってきます。だから一人ひとり違うのです。
(pp. 33-5)