HOME > BOOK >

『心理主義化する社会』

日本社会臨床学会 編 20080330 現代書館,シリーズ「社会臨床の視界」第四巻,298p.


このHP経由で購入すると寄付されます

日本社会臨床学会 編  20080330 『心理主義化する社会』,現代書館,298p. ISBN-10: 4768434789 ISBN-13: 978-4768434789 \3000 [amazon][kinokuniya] ※ mp i02

■内容
「心理主義」をキーワードに、現在の社会に、いかに心理学的手法が蔓延しているかを提示し、教育・医療・暮らしのさまざまな場面を検証していく。「専門家」による客観的なまなざしが、生徒と教師、親と子ども、さまざまな人々やものごとの直接的関係に介入していくよ様子、また、人々が、自ずから「心理学的」な視点を獲得していく姿を、批判的に描き出している。

■目次
シリーズ「社会臨床の視界」(全四巻)刊行にあたって (7)
序章  中島浩籌 (9)

第一章 「心理主義」と、その教育への浸透  中島浩籌 (19)
 はじめに (19)
 第1節 心理主義と精神医療 (23)
 第2節 心理主義の浸透とコントロール技法の変化 (38)
 第3節 広がる「病気」へのまなざし (56)
 おわりに (67)

第二章 社会の心理主義化をどのように捉えるか?──三つの立場──  森真一 (75)
 第1節 心理主義の問題化――本章のねらい (75)
 第2節 心理主義化論の現在 (78)
 第3節 心理主義化の社会学的理解をめざして (101)

第三章 健康不安の湧出と「癒し」イデオロギー──禁煙言説にみる「悪」と「癒し」の創出過程──  八木晃介 (115)
 はじめに (115)
 第1節 医原病としての「喫煙病」、そして禁煙ファシズム (117)
 第2節 「癒す」権力と「癒される」権力 (128)
 第3節 「与死」もまた「癒し」の社会政策なのか? (142)
 おわりに (153)

第四章 「ファシズム的な社会」と心理学  三輪寿二 (156)
 第1節 問題意識 (156)
 第2節 質問紙調査から「ファシズム的な社会」を考える (159)
 第3節 現代日本のナショナリズムとカウンセリング (166)
 第4節 グローバリゼーションと自己実現 (175)
 第5節 「ファシズム的な社会」と「ファジーの心理学」 (181)
 最後に、そして、いまの日本 (193)

第五章 いま、なぜ、「発達障害」なのか、WISC-Vなのか  篠原睦治 (200)
 はじめに (200)
 第1節 「精神薄弱」の発見の道具としての知能テスト (203)
 第2節 「軽度発達障害」概念の強調と特別支援教育 (214)
 第3節 「軽度発達障害」診断としてのWISC-Vの登場 (229)
 おわりに 状況捨象の個人・心理元主義を問う (236)

第六章 発達論としてのアイデンティティ論──エリクソン理論を再考する──  山下恒男
 第1節 自意識からアイデンティティへ (245)
 第2節 アイデンティティ論の系譜とエリクソン (251)
 第3節 概念浸透の契機と受容 (255)
 第4節 エリクソン理論の諸相 (259)
 第5節 アイデンティティ論をめぐる諸問題 (278)
 第6節 エリクソン理論の本質 (283)
 第7節 主体の後に来るもの (290)

■引用
「さて、後日判明するのだが、K市の特殊学級は、親の願い〔「就学猶予や施設収容を拒否して、地域の学校へ通わせたい」(p.203)という願い〕を実現したかのごとくだったが、実際は、文部省の方針が認める「中度」特殊学級であった。開設要求した側の子どもたちは、「中度児」と「重度児」に分断されて、当面、前者はこの学級に入り、後者は就学猶予のまま、生活訓練会に留まることとなった。各々子どもたちが、IQで区切られて、当該の特殊学級に入れたたり、入れなかったりする現実に直面して、だまされた思いの者たちは、やがて、「低学年用で、低IQでも入れる学級を!」という要求運動の立て方そのものがおかしかったのだと気づいていった。そのなかで、「それだったら、わが子も地域の普通学級へ」という方向転換が起こるのだが、それにしても、「軽い子ども」と「重い子ども」それぞれに対する排除的力は違っていた。ここでも、子ども同士、家族同士が一緒につながりにくくなっていく現実に直面する。ある子どもたちは普通学級に通いだし、他の子どもたちは収容施設へと隔離されていった。」(篠原 2008:204-205,〔 〕内引用者)

■書評・紹介

■言及


*作成:野口 陽平 
UP:20081031 REV:
医療と心理学  ◇知能/知能指数/知能テスト  ◇身体×世界:関連書籍 2005-  ◇BOOK
TOP HOME (http://www.arsvi.com)