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『精神科医ですがわりと人間が苦手です』

香山 リカ 20080330 大和書房,181p.


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香山 リカ 20080330 『精神科医ですがわりと人間が苦手です』,大和書房,181p. ISBN-10: 4479781803 ISBN-13: 978-4479781806 \1300 [amazon][kinokuniya] ※

■内容
・(「BOOK」データベースより)
精神科医として20年+αを迎えた著者の今なら言える、少し早めの回顧録。
■目次
はじめに……人間が苦手な私でも
1章 精神科へようこそ(精神科医はフツウの仕事です;うつは「心のカゼ」は本当か ほか)
2章 愉快で不思議な患者さん(私には“きこえない声”がある;家庭内暴力少女と、その母 ほか)
3章 いまどきのニッポンの病(いじめ相談は誰にする?;いじめる理由 ほか)
4章 おちこぼれ新人時代(教授にとっての私の印象;医師だって、うつになる ほか)
5章 それでもまだ日陰の身?(「おかげさまで」は未経験;精神科医の爆笑対談本を読んだ ほか)
おわりに

■引用
・うつは「心のカゼ」は本当か
心のカゼ。
よく考えてみると、わかったようなわからないような言葉だ。おそらくは、「誰もがかかる」「特殊ではなくてよくある病気」「本人が気をつけていてもかかる」「治療すれば治る」「たいていはそう重くない」といった意味で使われているのだろうが、それなら「心の虫歯」「心の肩こり」でもいいはずではないか。
と、言いながらも、この「心のカゼ」という言葉はなかなか便利なので、診察室でもときどき使う。 他に私がよく使うのは、「心がガゾリン切れを起こしている」という説明だ。p.14
しかし、最近は心の病についての情報も広がり、自分で勉強する人も増えているため、こんな幼稚なたとえが通用しない場合も少なくない。
「心にとってのガゾリン、っていったいなんですか。セロトニン?アドレナリン?そして、それを貯めるための薬っていったいどういう作用メカニズムなんですか?」
といった厳しい質問に、「いやいや、これはちょっとしたたとえ話で……」としどろもどろになることもある。
「私に起きていることを、神経化学的にきちんと説明してください」と言われたときは、思わず「ごめんなさい、よくわからないんです」と謝ってしまった。p.15
医者としては、「どこがどうなっているかよくわからなくても、とりあえず症状が治ればそれでよし」というところなのだが、探究心の強い患者さんは「はっきりわからないけど、とりあえずこれ飲んで」などと言われたら不安になるのも、よくわかる。
そう考えると、カゼという病気も実はそのメカニズムははっきりわかっていない、という点がやはりうつ病に似ているのかもしれない。p.16

・いじめと統合失調症
統合失調症は近年は、“心の病”に近い、と考えられることが多い。もちろん、ストレスなどが発祥に関与することもあるが、それだけで即、この病気が始まるとは考えにくい。いじめはいじめとして許されないことだが、それとこの病気との因果関係をはっきり決めることなど、果たして可能なのだろうか。
裁判所の判決では、いじめはあくまで「原因のひとつ」とされており、これが発病を招いた、と断定されているわけではないようだ。とはいえ、診察室で親たちはこの記事を見てどう思っているだろうとどうしても気になってしまう。p.85
多くの親は未だに我が子が病気になると、「私の育て方が間違っていたから」と自分を責めようとする。その気持ちはわかるが、因果関係がはっきりしないのに「私が悪い」と決め込んでも、子どもと自分の苦悩は増すばかりだ。p.86

・掃除力って、何?
「掃除力」なるものの効果をうたった本が売れたせいか、診療室に来る女性たちから「私、掃除ができないんです」という相談を受けることが何度かあった。「“片づけられない女”は脳の病気、という話もきいたのでうが、私もそうでしょうか?」とかなり不安そうな人もいる。
「掃除力」とは、換気、ふき取り、整理整頓、いらないものを捨てる、といった日常生活の中で簡単にできる「そうじ」をすることによって、性格も変わり、願望もどんどん実現する、という一種の成功哲学だ。関連本は二〇冊近くあり、累計で二〇〇万部以上、売れているのだという。この本でなりたい自分になれた、という人も大勢いるのだろうが、「やっぱり掃除ができない私はダメなんだ」と落ち込んだ人も少なからずいる。p.102

・心の病気に隠れた体の病気
まず「身体の病気かも」という視点で「眠れない」「やる気が出ない」と精神科にやってくる人たちをチェックさせられ続けるうちに、かなりの割合で身体疾患が見つかるケースがあることがわかってきた。内科医が「あなた、うつ病ですよ」と精神科受診を勧めた患者さんをもう一度、丁寧に診察、検査したら、実は甲状腺機能に異常があることがわかった、などというときは、本人には申し訳ないがちょっと得意げな気持ちがした。p.131

■書評・紹介

■言及


*作成:山口 真紀
UP:20090625 REV:
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