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『ネットメディアと〈コミュニティ〉形成』

遠藤 薫 20080310 東京電機大学出版局,290p.


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■遠藤 薫 20080310 『ネットメディアと〈コミュニティ〉形成』,東京電機大学出版局,290p. ISBN-10: 4501622709 ISBN-13: 978-4501622701 \3360 [amazon][kinokuniya]

■内容

(「BOOK」データベースより)
現代社会が求める“コミュニティ”の夢と現実。インターネット・SNS・地域・雇用・文化・メンタル…気鋭の論考15本が読み解く。

著者略歴

(「BOOK著者紹介情報」より)
遠藤 薫
東京大学教養学部基礎科学科卒業(1977年)、東京工業大学大学院理工学研究科博士課程修了(1993年)、博士(学術)。信州大学人文学部助教授(1993年)、東京工業大学大学院社会理工学研究科助教授(1996年)を経て、学習院大学法学部教授(2003年)。日本学術会議連携会員、日本社会情報学会会長、情報通信学会副会長。専門は理論社会学(社会システム論)、社会情報学、文化論、社会シミュレーション

■目次

複合メディア社会における“コミュニティ”とは何か
第1部 ネットメディアと“コミュニティ”の夢(インターネット創世神話と“コミュニティ”願望―“心”は接続されるか
リトル“ビッグ・ブラザー”たちの共同体―ネットとTV、遍在/偏在する“眼”
複製映像の“コミュニティ”―映像を媒介とした社会的相互行為と三つのファッド現象
否定の“コミュニティ”―“オタク”の発生とインターネット ほか)
第2部 ネット“コミュニティ”の現実(精神疾患を患う人びとのネットコミュニティ―彼女ら・彼らはなぜネットでなければならないのか?
閉鎖的コミュニティという迷走―ゲーテッド・コミュニティとSNS
オンラインコミュニティの困難―オタクとオンラインコミュニティ
オンライン上における音楽制作者のコミュニティとその変容―コミュニティからコミュニティ・サービスへ ほか)

■引用

本章で取り上げる対象は、すべて何らかの精神疾患で受療中の人々である。ここでは彼女ら・彼らのことを便宜上、Net-MH(=Networkers who have Mental Health Problems)と呼ぶ事にしよう(p. 147)。
Net-MHのなかには、学校や職場で病について理解されず、単なる怠けとみなされた経験をした者が多かった。このような状況においても、ネットであれば人目を気にせず、同じ境遇の者同士コミュニケートしやすい(内藤 2002)。筆者がおこなった調査でも、Net-MHの多くはこのことをネットの利点であると語っていた(p. 150)。
ONと匿名性
Net-MHの活動は、大きく二つの側面に分けられる。オンライン=ONとオフライン=OFFである。ONでは掲示板やチャットを利用して、さまざまなコミュニケーションがおこなわれる。世間話や相談、あるいは辛い心情や悩みが書き連ねられ、応答のある/なしはそのときどきで違う。ただ共通しているのは、これらの多くが匿名でおこなわれることである。匿名のままコミュニケーションが可能なことは、スティグマを恐れる人にとって、気軽に参加できるという意味で重要である。しかし同時に、ある困難を招く源泉にもなってしまう。ONの匿名性とは、都市空間において顕著にみられるような、本名や社会的属性が不明ということではない。これに加え、成りすましや、一人が複数人を装うことも可能となることから、ONではコミュニケートする他者の同一性、存在すらも不確かになる。そしてこの匿名性は、一方で気軽さを保障する反面、他方で誹謗中傷が起きやすい状況を生む(p. 152)。
親密性のOFF
この混沌としたONのコミュニケーションのなかで、オフ会の告知もなされる。もちろん、オフ会の告知さえ偽情報の場合もあり、疑心暗鬼はさらに強くなる。たとえば、オフ会の告知に応じて待ち合わせの場所にいったものの、結局誰も来なかったということがあったという(p. 153)。
実際、オフ会ではしばしば親密な関係が生まれる。それはONの匿名性から生じる不確かさと疑心暗鬼の地獄とは対照的に、ある確かさをともなったものである。OFFとは、他者の存在さえ不確かになる状況が常態化しているONとはまるで違う(p. 154)。
交錯するON・OFF
Net-MHの活動には、いくつもの離脱が存在していた。まず、病を患うことによって、それまでの社会関係から離脱を余儀なくされる。ふつうなら、その後すぐさま医師―患者関係のなかへ拘束されるべきところが、Net-MHの場合まずそこから離脱する。ここまでならば、ネットとかかわりのないSHGにおいても可能であるが、Net-MHの場合はさらなる離脱へと向かう。すなわち、SHGといったオルタナティヴな組織からも離脱し、当事者同士の対人関係からも常に離脱する可能性が担保されている。これらの離脱を、幾重にも重なるという意味で「重畳の離脱」と呼ぶことにしよう(p. 155)。

■書評・紹介


■言及


*作成:中田 喜一
UP: 20091208 REV:
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