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『医療が悲鳴をあげている――あなたの命はどうなるか』

近藤 喜代太郎 20071205 西村書店,246p.

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■近藤 喜代太郎 20071205 『医療が悲鳴をあげている――あなたの命はどうなるか』,西村書店,246p. ISBN-10: 4890136150 ISBN-13: 978-4890136155 952+ [amazon][kinokuniya] ※

■広告/h2> 内容(「BOOK」データベースより)
 妊婦たらいまわし事件の根本はここにある。ひとごとではないこれだけの問題が…。医師らが病院から去っていくわけ。

■著者

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
 近藤/喜代太郎 こんどう・きよたろう
1969年東京大学医学部卒業。同大内科、新潟大学助教授(神経内科)を経て北海道大学医学部教授(公衆衛生学)、放送大学客員教授(健康科学)を歴任。北海道大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次/h2> 1章 医師、看護師が病院から去ってゆく
2章 ぜひ知ってほしい医療と病院の現実
3章 医療の安全と安心
4章 医療と法、裁判
5章 医療崩壊をどう防ぐか―著者の提言
6章 患者本位の医療の仕組み

■引用/h2> 「6章 患者本位の医療の仕組み
 […]
 7.患者の団体活動
 患者らの「アドボカシー(advocacy)」とは、自らの病気を理解してもらい、当局、医療界、世論などに希望を伝え、実現をめざすことである。
 患者が苦境を訴え、制度を求める時代になったようだ。近年、同じ考えをもつ人々が集団で意思表示し、制度の新設・廃止などを求めることが多くなった。このような運動体には行き過ぎ、身勝手もあるが、多くの場合、激動する社会のなかで行政が硬直し、きめ細かい役割を果たせないことへの人々の告発でもあり、幅広い市民が共感を覚えている。
 患者数の少ない難病などは、患者も座していては医療福祉政策が自然に増進するものでは△244 なく、行政、学界に自らの問題を知らしめ、望む成果を自ら闘いとる時代なのである。
 こうした運動体には目的を達すれば解散する「期成同盟」もあるが、多くの問題を抱える難治性の病気などでは恒常的な患者団体がつくられる。一般に病気ごとに国内の患者団体ができ、国際的にも同じ病気の団体が国際組織をつくる例がある。
 患者団体の目的・意義は病気によって異なる点もあるが、@患者・家族の親睦、情報交換、慰め合い、A官公庁への制度要求、研究費の増額などの要求、B医療界への研究の振興、専門的医療の充実などの要求、C集会の主催、会誌の発行などの広報活動、などがあり、必要に応じてデモ行進、街頭募金、ビラ配りなども行われている。
 外国だけでなく、日本にも成功例がある。「日本筋ジストロフィー協会」は、一九五〇(昭和二五)年代に「進行性筋萎縮症児親の会」として発足し、空床がめだつ結核病棟をどう転用するかを考えていた当時の厚生省に、筋ジス病棟を全国展開させた。また、その時点の総理大臣への直訴によって国立精神・神経センター創立の原動力となり、多くの筋ジス関係の研究班に巨額の国費が投じられる圧力となっている。
 最近の顕著な例にがん患者の運動がある。自身、がんを患う医師、議員が主体となって日本のがん患者のおかれた苦境を訴え、マスコミのカも借りて「がん対策基本法」という立法をかちとった。△245

 あとがき
 現役を退いた医学者の身で本書を著したのは、地域病院の崩壊を座視できず、その原因が医療費削減に加えて、社会と医療人の互いの無理解にある、と考えたためである。これらの地域病院は数も多く、開業などの診療所と大学病院の中間にあり、生死にかかわる重い病気を含めて、国民の医療の中核を担っている。崩壊は地方からはじまり、また産科、小児科からはじまったが、崩壊への病根は全科、全病院に及んでいる。
 無理解の最たるものは、医療事故をめぐる軋轢である。事故にあったご家族の驚き、落胆は察するに余りある。わけを知りたい、責任者に謝らせ補償させたい、と感じるのは当然である。これまで医療界、厚労省はこの問題に無頓着すぎた。国民の疑念にこたえ、健康保険のなかに事故の解明と補償の仕組みをつくり、大部分の事故はそれで決着し、裁判は一方・双方がそれでは満足しない場合△244 に限るべきではないか。
 医療の結果が悪ければ、逮捕、裁判という国は、世界で日本だけだ。それに抗議して医師、看護師がリスクのある地域病院をどんどん去っている。とくに問題の起きやすい産科は、すでにほぽ崩壊した。お産のできる施設は半減し、新卒医はもはや産科など、見向きもしない。
 確かに医療ミスはある。そして、カルテ改ざんのような悪徳行為がそれに伴っていることもある。これらは予防できることで、起こしたら罰せられるべきだ。
 しかし、やむをえない事故もある。医療は不完全で、多くのリスクを内包している。それらは「不可抗力」で、過誤とはまったく違い、個人責任はなく予防法もない。この過誤と「不可抗力」のニつを区別することがなにより大切だ。医療を受けることは「虎穴に入って虎子を得ること」なのだ。
 しかし、すべてがごちゃ混ぜになり、医療側の責任として疑惑の眼を向けられている。事故の本質をよく知らないまま、「虎子は欲しい、しかし親虎に噛まれたら、医療のせいだ」という身勝手を警察も裁判所も後押ししている。医師たちはそれに抗議して、そうでなくとも過労を強いられる病院を去ってゆくのであ△245 る。
 このままではいけない。本書は医療とはなにか、医師らの立場はどうかに加え、患者、公衆の立場にも等しく配慮し、患者本位の医療をつくるには、現在、なにが大切かを述べた。
 日本の医療は各界の人々の努力もあって、ようやく旧来の「お任せ医療」を脱し、「説明と同意」に基づく医療になりつつある。しかし、病院から肝心の医師、看護師が撤退しはじめ、医療崩壊の危機に立たされている。この背景を知り、崩壊を食い止めるにはどうすれぱいいのか、とくにニ、五章をじっくり読んでご理解いただきたい。また、著者直通の専用メールを開設したので、医療崩壊や本書の内容に関して、ご意見、ご感想、ご批判などをお寄せいただければ幸いである(メールアドレスは奥付べージ)。
 医療は社会の支柱である。急がなければならない。これは医療、医学研究という場に長くいた著者の、やむにやまれぬ緊急提言である。
                     近藤喜代太郎」

奥付
近藤喜代太郎(こんどう・きよたろう)
 1969年東京大学医学部卒業。同大内科、新潟大学助勃教授(神経内科)を経て北海道大学医学部教授(公衆衛生学)、放送大学客員教授(健康科学)を歴任。北海道大学名誉教授。著著に『左きき学一その脳と心のメカニズム』(西村書店)など。
 この本に対するご感想や、医療崩壊についてのご意見などをお寄せください。
iryouhoukai@kha.biglobe.ne.ip

■言及

◆立岩 真也 2018 『病者障害者の戦後――生政治史点描』,青土社


UP:20160713 REV:20180531
近藤 喜代太郎  ◇病者障害者運動史研究  ◇医療/病・障害 と 社会  ◇身体×世界:関連書籍 2000-2004  ◇BOOK
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