『格差不安時代のコミュニティ社会学――ソーシャル・キャピタルからの処方箋』
金子 勇 20071110 ミネルヴァ書房,240p.
last update:20111124
■金子 勇 20071110 『格差不安時代のコミュニティ社会学――ソーシャル・キャピタルからの処方箋』,ミネルヴァ書房,240p. ISBN-10:4623049221 ISBN-13:978-4623049226 \3500 [amazon]/[kinokuniya] ※ e03 d04 s p02 f04 w01 w0111 wm06
■内容
内容(「BOOK」データベースより)
「少子化する高齢社会」を内包する新しい「格差不安社会」概念により、この現状分析と克服方法を学術的に論じたコミュニティ社会学。質的調査が4事例、量的調査も4都市2000人を対象に実施して、事実関係を論理的にとらえるために、比較社会学のロジカルシンキングを実践した。膨大なオリジナルな資料に基づき、パットナム命題の一つであるソーシャル・キャピタルと自由意識との相関を反証した。加えて日本とフランスの少子化対策までも目配りして、「格差不安社会」超克のための総合的な素材を満載している。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
金子 勇
1949年福岡県生まれ。1977年九州大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。北海道大学大学院文学研究科教授。文学博士(九州大学、1993年)。第1回日本計画行政学会賞(1989年)、第14回日本都市学会賞(1994年)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
■目次
はじめに
第1章 格差不安社会と社会学の位置
1 格差不安社会のなかでの研究姿勢
無料アパートが消えた
全国市長会の調査
四都市の比較調査
正確な観察と診断から
偏見や差別的記述を克服して
2 社会学とは何か
古典にみる社会学の評価
社会学の定義
社会学の誕生
家族と地域
3 社会学の理論
理論と方法論
全称命題と特殊命題
政策的応用
何のために、何を、どのように明らかにするか
アノミー
4 リアリティの比較
ヴェーバーの偉大さ
社会学の有効性の基準
台北での経験
パリでの経験
調査対象地を変える
第2章 共生創出のコミュニティ社会学
1 地域社会研究に何が求められるか
マッキーバーの導き
QOLとコミュニティ研究
コミュニティモラールとノルム
2 コミュニティ論の応用と地域福祉
コミュニティの定義
キーコンセプトとしてのコミュニティ
理論と現場は同根
社会福祉学系の地域福祉論
三段階のコミュニティ論
3 共生をめぐって
「共生」の認知度は低い
五つの分析基準
マイノリティは一種類ではない
マジョリティとマイノリティ
マイノリティ間の共生可能性
二冊の研究書
共生には利益や効果が不可欠
4 富良野共生調査とソーシャル・キャピタル
家族とコミュニティ
富良野での地域福祉システム調査
遠くの親戚より近くの他人
社会資源とは何か
共生の多様な側面
5 世代間共生と福祉コミュニティへの途
世代間共生活動
富良野Lモード電話活用実験
長崎県「にんじんネット」
口からはじめる健康づくり
柳川のピコグラブ
鳥栖ベネッセの会
社会資源を活用したソーシャル・キャピタル
第3章 少子化する高齢社会の家族
1 人口と家族の現状
三位一体の人口変化
高齢者世帯の縮小
団塊世代の高齢化
二〇一五年までに対応できるか
2 家族と問題家族
家族の定義
家族の個人化は目標にならない
家族類型
家族の感情構造
家族団らんを求める日本人
朝日新聞の家族調査結果
家族問題
家族の相談件数
家族相談で留意したいこと
3 「少子化する高齢社会」の家族のあり方
部分的拡大と全体的縮小
ファミリー・フレンドリー企業
子育て基金の創設を
子ども家庭連帯省新設の提唱
第4章 ソーシャル・キャピタルと自由意識の比較分析
1 都市少子化調査の目的と方法
二〇一五年が準備の最終年
四都市調査対象者の属性
ソーシャル・キャピタル規定要因としての学歴と年収
家族形態
2 ソーシャル・キャピタルと自由意識
ソーシャル・キャピタルの定義
ソーシャル・キャピタルは万能ではない
豊かなソーシャル・キャピタルと自由意識とは正相関するか
3 二都市間の自由意識の比較分析
土着と流動
自由意識の測定項目
精神面での子育て負担感
家族意識の相違
4 二都市間のソーシャル・キャピタルの比較分析
自由意識はソーシャル・キャピタルの豊かさをもたらさない
伊達市民の社会的ネットワークは乏しい
ボランタリーアソシエーションの比較
集団参加文化の同質性
5 比較都市論からみたソーシャル・キャピタルの構造
四都市データによる比較
富良野と鹿児島が豊か
ボランタリーアソシエーションの測定
伊達と白老でのボランタリーアソシエーション参加は乏しい
鹿児島市は集団文化の都市
パットナム命題は日本都市では否定された
第5章 少子社会研究の新段階
1 子育てと家族に関する社会規範
個人主義か家族主義か
日本とフランスの比較
女子労働力率と合計特殊出生率とは無相関
M字型労働支持者が一番多い
三歳児神話の日仏比較
婚外子率の相違
2 フランスでのインタビュー調査と観察から
パリでの調査
脱家族化は少子化克服を説明しない
移民の旺盛な出生力
マグレブ移民の増加
エスニシティの負の側面
コミュニティごとに異なるエスニシティ
フランスの調査結果の応用
3 少子化克服のための日本的課題
子育て基金の有効性
社会学からの処方箋
人口減少にどう立ち向かうか
パラダイムを変える
第6章 少子化の社会的要因の探究――北海道と札幌の事例分析から
1 少子化克服への途
少子化へのマクロ社会学的対応
札幌市の保育児童率は18.9%
専業主婦による在宅保育が無視されている
政令指定都市にみる合計特殊出生率の低さ
2 「少子化する高齢社会」は日本社会の何を変えるか
豊かさは社会性に富む
北海道にみる格差を伴う二極化――地域社会
イフの言説は有害無益
北海道にみる格差を伴う二極化――企業職場
恵まれたファミリー・フレンドリー企業は東京本社が多い
3 北海道と札幌市における少子化原因の解明
北海道における六つの社会的要因
持家は借家より広い
子ども部屋は上昇以上の十分条件ではない
家族力の低さ
一人暮らしを支える消費社会構造
北海道における働き方
所得と貯蓄
預貯金残高が少ない
消費支出が多い
少子化要因の重回帰分析
居住室数と女性労働力比率が正相関
預貯金残高は負相関
第7章 少子社会――何をどうするのか
1 少子化対策の現状と問題点
十分条件としての子育て基金
少子化は現行の社会保障制度を破壊する
具体的な提言
子ども保険と育児保険の併存
制度を変えると意識も変わる
少子化社会白書のメニュー
マクロレベルにおける日本の少子化の原因
2 都道府県における少子化促進要因の計量的分析
少子化要因の多変量解析
有意な説明力をもった変数
保育所増設は切り札にならない
男性の労働時間の長さは少子化の原因の一つ
3 子育て基金の現実問題
子育て負担の社会的共有から
公共社会学
最優先すべきは専門社会学
おわりに
参考文献
人名・事項索引
■引用
■書評・紹介
■言及
*作成:樋口 也寸志