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『労働法を考える――この国で人間を取り戻すために』

脇田 滋 20071030 新日本出版社,238p.

last update:20110520

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■脇田 滋 20071030 『労働法を考える――この国で人間を取り戻すために』,新日本出版社,238p. ISBN-10: 440605071X ISBN-13: 978-4406050715 1600+税 [amazon][kinokuniya] ※ w01 w0107 w0114

■内容

◆帯文
「雇い止めの不安、
 出ない残業代…
 こういうことはしかたない!?」

◆出版社/著者からの内容紹介
雇用と労働の「無法化」を根源からただす!
蔓延する不払い残業・違法残業、雇い止めなどの形の解雇の横行...。「労働法のない世界」が広がる日本の現実に引きつけ、なぜ働くルールが必要なのか、それはどんな法体系かを解き明かす。豊富な事例、国際的な流れをふまえた説得力ある理論。
生活と命を守るためにも、不安定化する社会を立て直すためにも、必読の一冊。

◆著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
脇田 滋
龍谷大学法学部教授(労働法、社会保障法)。1948年大阪市生まれ。著書に、『労働法の規制緩和と公正雇用保障』(法律文化社)、『新現代労働法入門(第3版)』(法律文化社、共編)、『現代社会福祉辞典』(有斐閣、共著)、『規制緩和と労働者・労働法制』『派遣・契約社員働き方のルール』(いずれも旬報社)など。民主法律協会派遣労働研究会の一員として、インターネット上での派遣労働者への相談活動「派遣労働者の悩み110番」に1996年8月からとりくんでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次

第1章 命と暮らしを脅かす働き方の拡大――「労働法のない世界」の広がり
 1 労働相談からみた雇用社会の変化
 2 非正規雇用の深刻な状況
 (1)無権利状態を生み出す不安定雇用
 (2)非正規雇用の急増
 3 若者の未来を奪う働かせ方
 (1)企業にのみ都合のよいフルタイム型非正規の低賃金
 (2)教育訓練・福利厚生の欠如
 (3)20代・30代に多い長時間・過密労働
 4 労働組合の後退
第2章 働くルールが必要な労働者
 1 人口の大多数を占める労働者
 2 労働法の主体となる労働者とは?
 (1)アルバイト学生は労働者か?
 (2)「労働者」と「個人事業主」との違い
 3 偽装雇用の広がりと「働くルール」の適用
 (1)使用者責任の回避=「偽装雇用」の悪質さ
 (2)就労の実態に基づく労働者保護
第3章 働くルールの形成と発展
 1 「自由・平等」の名目での「不自由と不平等」
 (1)自由・平等の市民革命
 (2)契約の自由と働く契約
 (3)自由な契約から生ずる労働者の不自由
 2 「働くルール」の発展と労働法の体系化
 (1)工場法の登場
 (2)労働者の団結活動の自由
 (3)ニューディールとワグナー法
 (4)国際労働法の発展
 3 労働者保護法
 (1)労働者保護法と労働条件規制
 (2)国際基準と日本の労働者保護法
 4 労働団体法
 (1)労働組合を中心とした集団的活動
 (2)争議行為とストライキ権
 (3)団体交渉と労働協約
 (4)労働組合の公的・社会的な役割
 5 雇用保障法・社会保障法
第4章 世界の働くルール――EU諸国、ILO、韓国
 1 労働法が生き生きしている国
 (1)有給休暇はこれを放棄してはならない
 (2)イタリア流バカンス体験
 (3)配転のない国。家族を大切にする働き方
 2 人間らしい働き方を支える代表的労働組合
 (1)多重的・多層的な労働者団結(労働組合)
 (2)産業別労働協約
 (3)労働者全体を代表する労働組合
 3 産業別労働組合への転換
 (1)産業別集団的労働関係こそ本来の労働法モデル
 (2)企業別労働組合の限界
 (3)企業別労働組合から産業別労働組合へ――韓国の新たな動き
 4 厳しい非正規雇用への規制
 (1)ヨーロッパ諸国の法制と非正規雇用
 (2)ILOの非正規雇用関連規制
第5章 日本の制度と大企業の思惑――世界とは異質な日本的労働慣行・労働法
 1 戦後の民主的労働法
 (1)第二次大戦後の民主的労働法と労働市場
 (2)労働市場全体を代表する労働組合
 2 企業別分断と「内部労働市場」論
 (1)占領後期の労働法・労働行政の後退
 (2)経済成長と日本的雇用慣行
 (3)「内部労働市場」と企業内雇用調整
 3 1980年代前半から95年まで――「多様な雇用形態導入」論の登場
 (1)「内部労働市場」論の限界と破綻
 (2)労働者派遣制度導入と「中間労働市場」論
 4 1995年以降――市場原理主義へ
 (1)「雇用の安定」から「雇用の流動化」へ
 (2)雇用をめぐる政策的対立
 (3)「労働市場法」論
 5 「労働ビッグバン」と矛盾の顕在化
第6章 働くルールの確立のために(その1)―権利闘争の課題
 1 権利の自覚と点検闘争
 (1)労働者の権利をめぐる相談例から
 (2)権利のためのたたかい
 (3)権理の認識と自覚
 (4)職場における権利の点検と「労使自治」
 (5)権利行使や個人の「自己決定」を可能とする条件づくり
 (6)最も弱い労働者の視点と連帯
 2 働くルールと労働者の基本的権利
 (1)人間としての尊厳をもって自由に働く権利
 (2)安全かつ健康に働く権利
 (3)不当な差別を受けずに平等に働く権利
 (4)人たるに値する生活を営める労働条件で働く権利
 (5)労働の権利、労働能力を向上・発展させる権利
 (6)労働者として団結し、団体行動する権利
 3 職場・企業の視点から地域的・国際的な視点へ
 4 権利の普及と労働法教育
第7章 働くルールの確立のために(その2)――非正規雇用をめぐるたたかい
 1 家計補助からフルタイムへの非正規の広がり
 (1)家計補助型非正規雇用と権利をめぐる闘争
 (2)フルタイム型非正規の広がり
 2 有期雇用
 (1)労使を拘束する「雇用期間」
 (2)解雇法理回避目的の有期雇用
 3 偽装雇用とILO
 4 間接雇用
 (1)「偽装請負」の告発とたたかいの広がり
 (2)違法な関係を拒否し、直接雇用を求める権利
 (3)安全・健康に働く権利
 (4)人間として尊重されて働く権利(人格権)
 5 非正規雇用をめぐるたたかいの課題
 (1)ピンチはチャンス――困難の中に希望の光を見る
 (2)非正規労働者との連帯
 (3)非正規労働者自身の団結
 (4)産業別組織への展望
あとがき

■引用

◆紹介:村上 潔
 本集会の基調講演を快諾していただいた脇田先生の最新の単著。「労働法のない世界」が広がっている日本の現状を概観したうえで、その根源にある問題――労働行政における不公正――を糺す。ずばり、「闘う希望」が見い出せる本。
 本書の特徴としては、@「非正規労働者への差別的待遇は社会正義に反する」という明確な意思表示に基づいて、課題と対抗戦略が提示されている。A従来の労使協調型の正社員「労働組合」への失望と怒りも強烈に示されている。B失業者も含めた、すべての働く人々は、自らがもつ人間としての当然の権利を、圧力に屈せず、臆せず主張してよいのだというエンパワーメントの精神が込められている、といった点に集約できるだろう。
 「有期雇用」も「間接雇用」と並んで独立したトピックとして解説されており、最終的には「非正規労働者との連帯」・「非正規労働者自身の団結」という「抵抗」の道筋にまで切り込まれていて、まさに本集会の副読本として活用すべき内容である。
 また、一見余談のように見える、脇田先生自身のイタリアでの生活体験のエピソードが、じわっと胸に沁みる。私たちは、上司や同僚の顔色を窺うことより先に、生きていくうえでの率直な生活実感を優先して考えるべきなのだ、ということが何よりもストレートに伝わってくる。

■書評・紹介


■言及



*作成:岡田 清鷹/増補:村上 潔
UP: 20090224 REV: 20100715, 20110520
労働  ◇日本の労働(組合)運動  ◇非正規雇用  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
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