『「治らない」時代の医療者心得帳――カスガ先生の答えの
ない悩み相談室』
春日 武彦 20070810 医学書院,200p.
■春日 武彦 20070810 『「治らない」時代の医療者心得帳――カスガ先生の答えのない悩み相談室』,医学書院,200p. 1470 ISBN-10: 4260005197 ISBN-13: 978-4260005197[amazon] m.
●「中腰力」の時代!
医者がヒーローになれたブラックジャックの時代は終わった。それを身をもって知っているのは若手医師、医学生たちだ。では、新しいモデルはどこにある?
この「治らない」時代に、医療者はどう身を処せばいい!?――
そんな率直な質問の数々に答えるのは、ハードな公立精神病院でニヒルにもならず、もちろんいい人にもならず生き抜いてきたカスガ先生。アノ手コノ手で答
えて、つぶやきます。「タフな医療者は中腰だぜ!」と。
22のQ&Aで、「治る/治す」という大きな物語が失効した後の「医療者の新しい誠実の形」を探ります。
●医療界で話題を呼んだ、内田樹氏との対談「中腰の援助論」を収載。時間という要素を織り込みながら「すっきりしないこと」に意義を見出す援助論は、「内
田式憲法論」にも通じるスリリングな展開!
●困った患者・家族・同僚にキレずに答える「カスガ式。切り返しフレーズ集」も一挙掲載。「相手をクレーマーにしない」のが最良のクレーマー対策だとわか
る16の回答例。
●全編、吉野朔実氏のイラスト&4頁マンガ付き!
◆目次
◎見殺しをしないで生き抜くために■ちょっと長いまえがき
せめてロシアンルーレットにしておけ■「運のいい医者」になるには
まっとうな懐疑■思い入れの強すぎる医療者は危険
マンネリ医者の安定感■「毎度おなじみ……」で負けるが勝ち
臨床の不思議■気合いで治す、こともある
「泣く医者」ふたたび■アンタッチャブルな鬱陶しさ
フレンチレストランの夢■「治らない」患者を前にして
青磁に鯛焼き■もうひとつの意味が降りてくるとき
精神科医の自尊心■結果オーライをガイドする
こわいことは告げないでほしい■小心患者vs.厚顔医師
◎カスガ先生というひと by 吉野朔実
マゾヒスティックなダンディズム■あえて「仕事師」になってみる
百年たったら言ってやる■困った患者、不寛容なわたし
「患者の運」に差し戻す■不確定要素の扱い方
急患男の「禊ぎ」■苦しみを期待してしまう人たち
患者はなぜ嘘をつく■「七割関係」の健全さ
医者冥利はどこにある■イケメンなヒーローか、カルトな脇役か
趣味の効用■ミもフタもないことを言わないために
たまにはジョーカーを引いてみろ■断り上手はからだに悪い
救われるべきはあなた■ユニットとしてとらえることの意義
距離とフレーム■単調さを愛でる力をつけたい
やるときはやる!■トンデモ医療者に同情はいらない
優しいワタシの落とし穴■コントロール願望をどう制御するか
回り道はマイナスではない■世間知らずにならないために
◎対談「中腰で待つ援助論」 vs. 内田樹
◎エピソードにことよせたあとがき
◆コラム 「カスガ式。切り返しフレーズ集」(こんなことを言われたら……)
「あんた、まだ新米だね。大丈夫かな」
「もう生きているのが嫌になりました」
「何かあったら、どうするんですか!?」(スタッフの言葉)
「先生のケータイ番号、教えてください?」
「こんな病院、退院してやる!」
「いつまで待たせるんだ! 患者の身にもなってみろ」
「わたしって、なんて運が悪い人間なのかしら……(溜め息)」
「このまま、わたし、死んじゃうんですよね」
「安楽死について、先生はどうお考えですか」(家族の言葉)
「(嫌味たっぷりに)医者なんて、人の不幸で儲けているんですよねえ」
「悪いことなんか何もしていないのに、どうしてこんな病気に……」
「今すぐ、何とかしてください!」
「あの患者さん、わがままで困ります。どうにかしてくださいよ」(スタッフの言葉)
「わたしがこんなに苦しんでいても、先生は明日から休暇なんですか。いい御身分ですねえ」
「先生は本当の苦労なんて味わったことがないでしょ?」
「先生の出身大学はどこですか。東大ですか?」(患者ないし家族の言葉)