『ロールズ正義論とその周辺――コミュニタリアニズム、共和主義、ポストモダニズム』
渡辺 幹雄 20070525 春秋社、312p. ISBN-10: 4393621816
■渡辺 幹雄 20070525 『ロールズ正義論とその周辺――コミュニタリアニズム、共和主義、ポストモダニズム』,春秋社,312p. ISBN-10: 4393621816 4200 [amazon]
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■目次
まえがき
序章 正義の概念史――ロールズ正義論への道程――
一 古典古代
二 中世
三 近代以降
四 現代の論争
第一章 ロールズ正義論の現在――『公正としての正義――再論』(二〇〇一年)を中心に――
一 『正義の理論』の衝撃と挫折
二 第一の修正主義――「理性的」構想の拡充
三 マクシミン・ルールと「格差原理」
四 第二の修正主義――「格差原理」の正当化
五 ロールズの「善」論を読み解く
六 第三の修正主義――「包括的」から「政治的」へ
七 「政治的リベラリズム」の展開
八 残された問題
第二章 「バブル」としてのリベラル‐コミュニタリアン論争――M・サンデル『リベラリズムと正義の限界』(一九八二年)について――
一 論争への回帰
二 コミュニタリアンとは誰のことか?
三 『リベラリズム』を読む
四 ロールズの応答
五 【方法論】と【存在論】
六 結論として
第三章 コミュニタリアニズムとはなんだったのか――M・サンデル『リベラリズムと正義の限界』第二版(一九九八年)について――
一 第二版への序文「コミュニタリアニズムの限界」
ニ 付章「ロールズの政治的リベラリズムへの応答」
第四章 ロールズにおける共和主義的契機――「財産所有制民主主義」をめぐって
一 財産所有制民主主義vs.福祉国家資本主義
二 分配vs.再分配
三 コミュニティvs.「私的社会」
四 共和主義vs.アンチ共和主義
五 理性的多元主義vs.合理的多元主義
六 一般利益vs.全体利益
七 オーバーラップするコンセンサスvs.暫定協定
八 財産所有制民主主義の具体的な制度
第五章 リベラルフォビアと共和主義――M・サンデル『デモクラシーの不満』(一九九六年)を契機として――
一 問題の所在
ニ 共和主義、デモクラシー、リベラリズム
三 「熟議」とリベラリズム
四 結論
五 補遺――サンデルの今
第六章 リベラルな哲学に対するリベラルな生の優位
一 問題の所在
ニ プラトニストの精神構造
三 政治的リベラリズムへの道程
四 リベラルなエスノセントリズム
五 ヒューム的な生き方
終章 ヤヌスとしてのロールズ――理想主義者か、リアリストか――
あとがき
索引
■引用
学界では、コミュニタリアンと言えば「四天王」、すなわちマッキンタイア、ウォルツァー、テイラー、サンデルを指すのが定説のようだが、当の本人たちは
どう思っているのかといえば、マッキンタイアは自分はコミュニタリアンではないと言っているようだし、ウォルツァーもそれを批判する立場に回っているいる
ようだ。確かに、マッキンタイアを現代のちゃちな論争に封じ込めるのは非礼である。彼はもっとスケールの大きい反近代主義者だ。ウォルツァーも同様、もっ
と活動範囲の広い、リベラルな社民主義者である。しかも、二人ともみずからコミュニタリアンであることを否定しているそうだから、我々はとりあえずテイ
ラーとサンデルを現代のコミュニタリアンと定義しよう。
さらに、論争の嚆矢となりその枠組みを決定づけたという意味で、やはりサンデルは重要である。テイラーはしばしば曖昧な態度を採っているし、論争での役
回りを見るかぎり、彼はむしろ、節目節目でサンデルを哲学的に後方支援する友軍のようである。実際、『リベラリズム』の基礎哲学は、その多くが明らかにテ
イラーからの移植である。そこで私は、サンデルこそが典型的なコミュニタリアンであり、テイラーはその哲学的後見(パトロン)にすぎない(pace
Taylor)、という立場をとる。(pp.94-95)
*作成者:篠木 涼