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『少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ』

山田 昌弘,20070420,岩波新書 232p.


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山田昌弘,20070420,『少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ』岩波新書.232p. ISBN-10: 4004310709 ISBN978-4-00-431070-9 [amazon][kinokuniya]

■目次

 序章 少子社会日本の幕開け

第1章 日本の少子化は、いま
  1 少子化の深刻化・四点セット 2 家族格差と地域格差を伴った少子化 3 なぜ少子化が社会問題なのか

第2章 家族の理想と現実
  1 結婚・出産意欲が衰えたのか 2 家族の重要性の高まり

第3章 少子化の原因を探るにあたって
  1 少子化をめぐるタブー 2 戦後日本社会と少子化

第4章 生活期待と収入の見通し
  1 子どもを生み育てる経済的条件 2 高度成長期の安定出生率―1955〜75年

第5章 少子化はなぜ始まったのか―1975〜95年
  1 低成長期と経済見通しの変化 2 パラサイトシングルの誕生 3 欧米での対応

第6章 少子化はなぜ深刻化したのか―1995年〜
  1 ニューエコノミーの浸透 2 未婚化のさらなる進展 3 夫婦の産み控え

第7章 恋愛結婚の消長
  1 恋愛と結婚の根本的変化 2 恋愛結婚の普及期―1980年以前 3 恋愛と結婚の分離と魅力格差―1980年以降 4「できちゃった婚」の増大

第8章 少子化対策は可能か
  1 少子化対策の課題は何か 2 少子化を反転させることは可能か 3 希望格差対策としての少子化対策


◆引用  *〔 〕による補足は引用者。

 私は本書の中で、日本社会の少子化の主因を、@「若年男性の収入の不安定化」とA「パラサイト・シングル〔「学卒後も親に基本的生活を依存する独身者」〕現象」の合わせ技(専門用語だと交互作用ということになる)だと結論づける。……もちろん、いくつかの条件が付く。その中には、「男女共同参画がなかなか進まない(女性の社会進出が不十分)」というのも含まれる。また、副次的な要因として「男女交際が自由化された」ことがある。(山田 2007: 10)

 ……少子化対策という場合、二種類のものがある。一つは、少子化を防ぎ、緩和する対策である。少子化が、社会に対してデメリットを生じさせるのなら、その原因である少子化自体を反転させることが一つの対策となる。もう一つは、少子化によって生じる社会的デメリット自体を緩和する対策である。……第二の対策の必要性に関しては議論の余地はない。……しかし、第一の、少子化自体を緩和する対策を行うべきかに関しては、さまざまな立場がある。……近年、よく持ち出されるのは、「結婚し、子どもをもちたいのだけれどももてない人に対して、公的支援をするべきである」というロジックである。ただ、このロジックだけでは、正当性は調達できないのではないか。「国民が欲求をもっていてそれを実現できないのなら、それを支援すべきである」ことを一般化すれば、これは、正当性がなくなる。……/このロジックを成り立たせるには、結婚し、子どもをもつことは、もしそれを人が望むならば、優先的に与えなければならない、いわば基本的人権に近いものであるという合意が必要なのではないか。私の立場はここにある。……宗教やコミュニティを失った近代人にとっては、仕事と愛情ある関係が「社会とつながりをもつ」接点となる。愛情ある関係は、血縁や法律で結びついた家族とは限らないが、近代社会では、「家族的関係」の中で実現されやすい(社会的なつながりを作るという意味での仕事は、広い意味で、家事・育児やボランティア活動など、社会的に有用な活動を含む)。とすると、仕事と家族を通じて、近代人は「社会的存在」となることができると言い換えられるだろう。私は、社会的存在が人間の本質的なあり方だと考えている……。(山田 2007: 193-195)

 〔少子化が進んだ要因は四つある〕一つは、経済的要因であり、@結婚や子育てに期待する生活水準が上昇して高止まりしていること、その反面で、A若者が稼ぎ出せると予想する収入水準が低下していることである。/もう一つは、男女交際に関する社会的要因であり、B結婚しなくても男女関係が可能になったという意識変化、および、C魅力の格差が拡大していることである。それを反転させるためには、相当の困難が横たわっている。それは、日本の少子化は、@経済・社会、そして男女交際パターンのグローバルな構造変化の中で、A日本固有の文化的要因(パラサイト・シングル現象)が重なって生じたものだからである。グローバルな構造的変化を止めることは不可能に近いし、日本固有の文化的要因を変化させることも難しい。(山田 2007: 200-201)

 私は、日本の少子化を反転させるためには、次の四つの施策が必要かつ有効だと考えている。@全ての若者に、希望がもてる職につけ、将来にわたって安定した収入が得られる見通しを与えること。Aどんな経済状況の親の元に生まれても、子どもが一定水準の教育が受けられ、大人になることを保証すること。B格差社会に対応した男女共同参画を進めること。C若者にコミュニケーション力をつける機会を提供すること。(山田 2007: 208)


UP:20070717 REV:20081004
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