『精神保健福祉の問題点を考える』
小野寺 光源 20070425 新風舎,79p. ISBN-10: 4289018483 ISBN-13: 978-4289018482
■小野寺 光源 20070425 『精神保健福祉の問題点を考える』,新風舎,79p. ISBN-10: 4289018483 ISBN-13: 978-4289018482 900+ [amazon]/[kinokuniya] ※ m. m01h1969k.
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内容(「BOOK」データベースより)
社会復帰を志向する多くの障害者の声よとどけ。行政や地域社会の協力と理解なくして障害者支援の道はひらけない。精神障害者を抱える一人の親としての、20年に及ぶ苦悩と学習をもとに、現状と問題点を具体的に解説。多くの障害者そして親たちの声を代弁した。
■著者
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 小野寺 光源 1918年岩手県生まれ。東京都在住。府中市精神障害者を守る家族会の会員。障害者を抱える家族の切実な想い、願いの記録と、精神保健福祉施策に対する問題提起をこの著作に収める。2001年4月に21世紀府中懇話会を設立、人に優しい福祉と平和の街づくりのために同人誌「友への手紙」(随時刊)を発行し、現在に至る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
■目次
第1章 住むことを拒否された障害者
グループホームの火災事故
障害者とノーマライゼーション
第2章 心の居場所を追われた障害者
共同作業所に通所する障害者の苦情
私はどこへ行けばいいのですか
課題を残した結末への思い
第3章 社会復帰諸施設の活動概況
足立区地域生活支援センター
コットンハウス、フレンズ
スペース・クッション)
第4章 障害者を支援する家族会の活動
NPO法人世田谷さくら会(さくら会)
昭和大学附属烏山病院患者家族会(あかね会)
府中市精神障害者を守る家族会(府中梅の木会)
第5章 精神保健福祉の問題点を考える
懸念される精神保健福祉の後退
親亡き後の問題と成年後見制度
ひきこもり障害者への対応策は
障害者の真実の思い願いとは
望ましい社会復帰施設を考える
複合的社会復帰施設の整備
複合的生活支援施設の整備
■引用
◆第4章 2.42-47
「2.昭和大学附属烏山病院患者家族会(あかね会)
精神障害者とその家族、治療に当たる病院の三者が渾然一体となり、信頼と協調の関係を構築しつつ発展をみている注目の家族会とは、昭和大学附属烏山病院患者家族会(あか<0042<ね会)が当の家族会です。
あかね会は昭和38年(1963)11月に設立されました。翌39年の3月、ライシャワー米大使が精神障害者の青年に刺されるという障害事件が起こったことから、精神医療の問題が改めて注視され、患者を抱える家族の衝撃と心痛は大変なものでした。
こうした経緯もあって、家族会が全国的に相寄り、団結した結果が40年9月に全国精神障害者家族会連合会の結成となり、ついで43年4月には東京都精神障害者家族会連合会が結成されたのですが、こうした一連の家族会連合会の設立に当たり、あかね会(高山秋雄会長)は活動の先頭に立って大きな役割を果たしたという歴史的な経過があります。
精神障害者と精神科医、障害者を抱える家族の三者による相互の信頼関係の構築は、患者の治療、社会復帰に向けての支援に欠かせない条件ですが、あかね会は設点以来42年の間さまざまの困難をのり越え、克服して今日の発展を見るに至りましたが、平成17年11月発行の「家族会活動40年の歩み」(全105頁)から主な活動の足跡を年代順に見てみましょう。
あかね会創立40年の歩み概観
◇昭和38年(1963)
初会合。男子社会復帰病棟(あかね)入退院患者の家族13名参集。第2日曜日を定例会とする。会則検討。
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◇昭和39年(1964)
あかね誌創刊。あかね・千草・エルム各病棟の会、合同で烏山家族会となる。
◇昭和40年(1965)
家族会で初総会。会員家族助け合いのため病院の玄関脇に「友の箱」を置く。
◇昭和41年(1966)
烏山家族会の通称を「あかね会」と正式決定
◇昭和43年(1968)
病院運動会にあかね会はプラカード行進で参加。
◇昭和47年(1972)
あかね例会100回記念講演、竹村院長「社会復帰における家族の治療的役割」
◇昭和52年(1977)
あかね会相談窓口の充実。それまで金曜だけだったのを週6日制とする
◇昭和53年(1978)
ちぐさ会(烏山病院社会復帰後援会)発足
◇昭和56年(1981)
あかね会活動のあゆみ「例会200回記念誌」発行(4・18)
◇昭和60年(1985)
ちぐさ作業所開所、作業開始(7・8)
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◇平成元年(1989)
あかね会例会300回記念誌発行(4・22)
◇平成 6年(1994)
「千草工芸」(ちぐさ会第2作業所)開所(4・1)
「ちぐさ作業所」を「ちぐさ企画」と改称
◇平成 7年(1995)
「ちぐさホーム」(グループホーム第1号)開設(4・1)
◇平成 8年(1996)
「千草ハイム」(グループホーム第2号)開設(4・1)
◇平成13年(2001)
小規模作業所の小規模通所授産施設への移行始まる
◇平成14年(2002)
ちぐさ会本部とちぐさ企画の移転、南烏山のYSビルへ(3月)。「精神分裂病」の病名が「統合失調症」と変更(8月)。社会的入院患者72,000人への対応検討始まる。ひまわり開設(烏山病院内売店・喫茶)(7月)。
◇平成15年(2003)
あかね会コーナー開設(入院棟入り口に)(8月)。あかね会創立40周年の集い開催
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主たる事業活動のとりくみ
(1)ちぐさ会発足とそのとりくみ
ちぐさ会はあかね会々員の家族と病院の職員その他関係者が一丸となって運営に当たるもので、回復者のための共同住宅のことや、就労中の回復者の職場の確保などの具体化を進めてゆくことになります。設立後、2つの作業所、2つのグループホームと福祉住宅を運営するまで発展をみるに至りました。
(2)共同作業所づくり
ちぐさ会の活動が始まります。昭和60年5月にちぐさ作業所の開所(のちにちぐさ企画と改称)、平成6年4月には千草工芸を開所し、通所者の自立、社会復帰への道づくりに努めています。
(3)グループホームづくり
平成7年3月にちぐさホームを設立し、ついで平成8年2月にちぐさハイムを発足させました。財政面の困難をのり越えての実現でしたが、希望者が多く、すぐ満員となり、障害者にとっての住居はいかに切実な問題であるかをうかがわせました。
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(4)社会福祉法人「うるおいの里」の誕生
平成14年9月に社会福祉法人「うるおいの里」を設立し、これまで運営してきたちぐさ企画、千草工芸、ちぐさホーム、千草ハイムなどの事業はこの法人に移管することにしました。このように、主な事業を法人に移管したちぐさ会ですが、今後は法人の支援団体として財政面を支援する活動を主目的にし、なお、事業としては福祉住居と売店喫茶「ひまわり」を運営することになりました。
事業活動を総括して
創立以来のあかね会事業活動の流れを概観して来ましたが、この経過の中で、設立当初から現在に至る40年という永い期間会長職を務めてこられた高山秋雄さんの存在がとても大きく浮かび上って来ます。団体活動にあっては、強力なリーダーの有無がとても大きなポイントになりますが、高山さんを支援しつつ惜しみない活動を継続してこられた多くの会員と病院側に讃辞を贈りたいと思います。
あかね会、ちぐさ会、社会福祉法人「うるおいの里」、そして病院側との絶妙なネットワークによる活動の展開が、多くの精神障害者の人たちにより明るい希望の光を灯し続けることになるでしょう。<0047<」
■言及
◆立岩 真也 2013 『造反有理――身体の現代・1:精神医療改革/批判』(仮),青土社 ※