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『精神科医の本音トークがきける本――うつ病の拡散から司法精神医学の課題まで』

香山 リカ 岡崎 伸郎 20070425 批評社,198p.


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香山 リカ・岡崎 伸郎 20070425 『精神科医の本音トークがきける本――うつ病の拡散から司法精神医学の課題まで』 批評社,198p. ISBN-10: 4826504616 ISBN-13:9784826504614 1500[amazon] ※ m.

■内容

精神科医としてスタートしてから20年の二人が、悲喜こもごもさまざまな臨床経験を積みながら、人類が未だに克服できない心の病いについて、精神医学論、治療論、疾病論、薬物論、カウンセリング論、患者論、メディア論を踏まえて、障害者自立支援法、医療観察法案、精神保健指定医資格問題などを本音で語り合ったトーク集。

■目次

まえがき
よりによって何で精神科医なんぞに
社会の変化/精神科医療の変化
“有名ドクター”の悩み
こころの病は変わったのか?
うつ病/解離/離人症……
「うつ病」の拡散………
「うつ」を励ましてはいけない?
他者操作性/他者過敏性/自己愛
心的外傷理論のトップランナー安克昌先生の思い出
「自分探し」ブームはどこへ行くのか
多重人格/隠された本当の自分
人はそれをトラウマと呼ぶ?
男社会崩壊のなかの女/男
「ジジョ」/スピリチュアル系/自己啓発セミナー
臨床心理士の業界
「人権派」バッシング
心神喪失/心神耗弱/刑法39条
心神喪失者等医療観察法のこと
アンバランスな社会
あとがき


■引用

岡崎「うつ病の診断基準なんて、DSM−W(アメリカ精神医学会が策定した診断基準)とかICD−10(WHOが策定した国際疾病分類)とか使ったって、かなり広い範囲の人をうつ病って診断しても間違いではないようになっていますから。しかも、そういう広義のうつ病に入るような人って、あちこちのクリニックで、あなたはパニック障害かもしれないと言われたり強迫性障害かもしれないと言われたり、いろいろ“遍歴”していることが多いでしょう。ホントのところ私どうなんですかと言われたときに、ちょっとづつそれらしい症状のエピソードがあったりすると、どれも誤診でしたねとは言えませんからね。困った挙句、典型的なうつ病ではない「抑うつ症候群」ですね、とか説明したりしている。しかもそこで、岐阜大学精神科の高岡健先生の製薬資本謀略説ではないけれども、今並べたいろんな病名だと、大体坑うつ薬が効きますってことになるじゃないですか」p.128-129

岡崎「[ひきこもりやニートなどの中に:引用者]治療の対象になる人も一部にはいるでしょう。一方で、社会恐怖にはSSRIが効きますと。そうなると、ひきこもりで社会恐怖とか社会不安障害とか病名付けられる人には、SSRIを一度はのませてみる価値があるということになる。理屈上は大手を振って処方できますね。保険診療の適用疾病になるというのは、錦の御旗ですから。どうも何かその辺で、見えざる力に引っ張られているような気がしてならないですよね。」p.129-130

香山「私は、すごく暴力的だとは思うのですが、自分も未熟な部分もあるから、直感的に同情できる人と同情できない人がいます。同情できる人は内因性の疾患の人ですね。」p.61
香山「これは大変だな、本当に可哀想に、という自然で自明な共感というか同情みたいなものが芽生えます。それができるかできないか、というところをうつ病診断のときに自分の中のひとつのスタンダードにしたいようなところもあったのです。それが最近、もうその手が使えないのです。」p.62


*作成:山口真紀
UP:20080704 REV:20081102
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