『生きさせろ!』
雨宮 処凛 20070328 太田出版,p.284
■雨宮 処凛 20070328 『生きさせろ!――難民化する若者たち』,太田出版,284p. ISBN-10:
4778310470 ISBN-13: 978-4778310479 1300+税 [amazon]/[kinokuniya]
■出版社/著者からの内容紹介
フリーター、パート、派遣、請負・・・・安定化する若者たちの労働現場。そのナマの姿を、自身も長年フリーターとしてサヴァイブしてきた著者が取材した
渾身のルポルタージュ。この国の生きづらさの根源を「働くこと」から解き明かす宣戦布告の書!!
■著者について
1975年、北海道生まれ。99年、ドキュメンタリー映画『新しい神様』(監督・土屋豊)に主演。00年『生き地獄天国』(太田出版)を出版し、デ
ビュー。著書に『自殺のコスト』(太田出版)、『すごい生き方』(サンクチュアリ出版)、『バンギャル ア
ゴーゴー』(講談社)など。現在は生活も職も心も不安定さに晒される人々(プレカリアート)の問題に取り組み、取材、執筆、運動中。
■もくじ
はじめに
第一章 「行きづらさ」とフリーターをめぐって 破壊された「働くこと」「生きること」
私のフリーター経験|就職氷河期世代のひとつのケース
作られた不安定層
「頭のいいオランウータンでもできる仕事」|自給一〇五〇円、キヤノンで働く若者のケース
高齢化するフリーター|子連れで工場を転々とするカップルたち
自給にして七〇〇円以下の「管理職」|ある正社員のケース
第二章 フリーターの実態
フリーターのエキスパート|河野君(仮名)二七歳
「愛国心」とフリーター
妻子持ちフリーター 夢は映画|三浦君(仮名)二九歳
フリーターと「夢」
第三章 寄せ場化する都市
漫画喫茶で暮らす家なきフリーター
若年ホームレス、漫画喫茶で暮らすフリーターの実態|湯浅誠氏に聞く
家賃滞納、一年のホームレス生活、自己破産を経て生活保護へ|「もやい」にSOSを送った元フリーターに聞く
第四章 「働くこと」と「生きること」 心の病と格差社会
高校生の職業意識 格差に晒される子どもたち|瑠衣さん(仮名)一七歳
希望は「障害者枠での就職」|あゆみさん(仮名)二九歳
第五章 企業による殺人 過労自殺
派遣社員の過労自殺|上段勇士さん 享年二三歳
原告・上段のり子さんインタビュー
裁量労働制の下での正社員の過労自殺|諏訪達徳 享年三四歳
原告・諏訪達徳さんの姉インタビュー
第六章 抵抗する人々
プレカリアートの運動
フリーター全般労働組合
フリーター労組の団体交渉に潜入!
POSSE
貧乏人大反乱集団・高円寺ニート組合・素人の乱
第七章 なぜ、若者は不安定化したのか
ネオリベとフリーター|社会学者・入江公康氏に聞く
私たちは、もっと怒っていい|『フリーターにとって「自由」とは何か』著者・杉田俊介氏に聞く
あとがき
参考文献
■引用
「三浦君との会話では、一分に一度は「やりたいこと」という言葉が出たように思う。
やりたいこと。それは人によっては映画であったり音楽であったり演劇であったりさまざまだ。そして彼らは二〇代の日々をやりたいことに費やす。同世代の
人々が大学を出て就職し、仕事を覚えて、という時期に(いまは就職できる人がそもそも少ないが)。私自身も「夢追い系フリーター」だった。そして当時は、
学校を出てすぐに正社員、という決まりきった道を選んだ人たちへの軽蔑じみた気持ちもどこかにあった。フリーターをしながら「やりたいこと」をやってい
る、多忙なうえに貧乏な自分にどこか酔ってもいた。」(p.97-98)
「また、フリーターになったことによって、逆に「夢を見る」というパターンもある。私もそんな感じだった。どうやらフリーターしか職がないようだ。 →で
は、何か見つけないとこのままずっとバイト生活ということになる。 →何かやりたいことを探さなくては。という流れでフリーターになった途端にやりたいこ
とをがむしゃらに探し始めた。夢を見ないと自分自身が持たないという現実もあった。単調な誰にでもできる仕事は「こんなこといつまでも続けているわけじゃ
ない」という自分へのいいわけがないとかなりキツい。夢でも見なければやってられないほどつらい現実があるからこそ、人は夢を見てしまうのだ。そうしてい
まは「仮の姿」と思うことで精神的な安息を得る。
「夢」と「フリーター」。
この二つは、お互いにとって危ういバランスで、しかし共存している。」(p.99)