『貧困の概念――理解と応答のために』
Spicker,Paul 2007
The Idea of Poverty,Policy Press,184.
=20081009 圷 洋一,生活書院,326
[Korean]
■Spicker,Paul 2007 The Idea of Poverty,Policy Press,184.
=20081009 圷 洋一 『貧困の概念――理解と応答のために』,生活書院,326 ISBN-10:4903690261 ISBN-13:9784903690261 \2205 [amazon]/[kinokuniya] ※p06
■内容
貧困とは何か。貧困に対して何がなされるべきか?
これまでのさまざまな定義・アプローチを整理し、主張の対立点や問題点をも指摘しつつ、人々がなぜ貧しいままなのか、そして私たちはどう応じるべきかを問う。福祉政策理論の第一人者による、<貧困問題を考える>ための本格的入門書。
■目次
第T部 貧困を理解する
第1章 貧困を定義する
第2章 様々な社会の貧困
第3章 数値を理解する
第U部 物質的必要としての貧困
第4章 必要の概念
第5章 地域的剥奪
第V部 経済的境遇としての貧困
第6章 経済的資源
第7章 階級
第W部 貧困と社会関係
第8章 社会的排除
第9章 依存
第10章 貧困と政治(ポリティクス)
第X部 道徳的概念としての貧困
第11章 貧困の道徳的次元
第12章 貧困者への道徳的非難
第Y部 貧困の説明
第13章 人々はなぜ貧しいのか
第14章 貧困国はなぜ貧しいままなのか
第Z部 貧困への応答
第15章 貧困に応答する
第16章 貧困のための政策
■引用
「人々が貧しくなる理由については、主として6組の説明がある。それぞれの説明は排他的ではない。人は同時にひとつ以上の見解をもてるのである。ともあれ各説明は、分けて論じてよいくらいには異なっている。
・病理学的説明は、貧しい人々自身の性格・環境・行動といった点から貧困を説明する。
・家族論的説明は、貧困を家族的背景・遺伝的な気質や体質・家族の影響などの結果と見なす。
・下位文化論的説明は、近隣住民や人種的ないし宗教的な集団などにおける、集団的な文化・態度・行動といった点から貧困を理解する。
・資源論的説明は、もし資源が十分に行き渡らなければ、どこかで誰かが貧しくなる、とする。
・構造論的説明は、貧困を、階級・経済組織・社会的分業といった、社会の構造や編成の結果と見なす。
・機関論的説明は、外的作用に着目する説明であり、貧困を、政府・民間企業・機関といった、貧困に対処すべきなのにそうしなかった何者かの過失とみなす。」(p208-209)
「最初の3つの見解は、概して貧困の道徳的非難と直結しやすい。病理学的見解は、貧困を貧困者の過失や行為の結果と見なしやすい。そこで主張されるように、貧困が本人の過失であるなら、かれらを貧困から抜け出させることは私たちの責任ではないことになる。遺伝学的見解は、貧困は貧しい人々にとって、ある意味、正当で妥当な結果であるとする傾向がある。下位文化論的な主張は、貧しい人々を、狂気と悪意に満ちていて、知りあうのが危険な存在であるかのように表象してきた。(中略)これらと反対に、構造論的な見解は、社会の道徳的責任と直結しやすい。貧困が社会の過失であるとすれば、貧困に対処するのは社会の責任だろう。同じく外的な作用の着目する見解は、政府に道徳的責任があることをほのめかす」(P223)
■書評・紹介
■言及
*作成:角崎 洋平