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『科学技術実践のフィールドワーク――ハイブリッドのデザイン』

上野直樹・土橋臣吾 編 20061220 せりか書房,239p.

last update:20110222

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■上野直樹・土橋臣吾 編 20061220 『科学技術実践のフィールドワーク――ハイブリッドのデザイン』  せりか書房,239p. ISBN-10:4796702768\2500 [amazon][kinokuniya]

■内容

■目次

序文 土橋臣吾・上野直樹

T.ハイブリッドの理論
 01 ハイブリッドの社会学 大塚善樹
 02 参加型デザインにおけるハイブリッドな共同体と社会・技術的アレンジメントの役割 ミシェル・カロン / 川床 靖子 訳

U 社会-技術的な布置関連のデザイン
 03 学習環境のデザインのためのネットワーク指向アプローチ 上野直樹・ソーヤーりえこ・永田周一
 04 人工物を介した「参加する市民」の達成と失敗  中村雅子
 05 オーディエンスの構築にみる映像コンテンツのデザイン 岡部大介・福田恵
 06 企業家による翻訳戦略――アクターネットワーク理論における翻訳概念の拡張 松島 登
 07 アクターネットワーク論に基づいたイノベーションの記述 入江 信一郎

V 生成/変化するエージェンシー
 08 技術の位置決め 川床 靖子
 09 科学実践におけるブローカリングによるアイデンティティ形成 ソーヤーりえこ
 10 ビックプロジェクトにおける加速器研究者の学習――KEKBフィールドワーク 吉岡有文
 11 インターネットを使い倒す――集合体としてのユーザーとヘビーユースというふるまい 土橋臣吾

■引用

◇序文 土橋臣吾・上野直樹  つまり、人間とモノの不可分性を前提とするハイブリッドという認識においては、人間のエージェンシーが個々の人間の内部に保持される何かとしてとらえられることはない。だがそれは、人間が一定の能力を持つ行為の主体であることを否定するわけではなく、そこでは人間の能力や主体性といったものが、人間とモノの関係のあり方によってその都度生成/変化する何かとしてとらえ返されるのである。 11
 
 こうした視点(ハイブリット)から周囲を見回すとき、私たちは、私たちのふるまいのほとんどが何かしらのモノや技術に接続されていること、そして、多くの場合何気なくなされているそうした接続のあり方こそが、実は決定的に重要な局面であることに気付くことになる。こうした視界は、人間という存在をそれ自体で独立した、単独の存在として尾tらえる視点からは決して開けてこない。ハイブッドという視点hあ、人間のエージェンシーを実体的な概念としてではなく、モノや技術との関係的な効果として捉えるがゆえにあらゆるところに行為者としての私たちのあり方を規定する力があり、祖王である以上、そこにいかに介入するかが重要な課題となることを具体的に可視化するのである。……だがそれでも、ハイブリッドという認識は、「技術的な生活形式」における私たちの在りようを考えていくうえで、ひとつの道筋を示している。12

◇ハイブリッドの社会学 大塚善樹
 さらに歌論らは、アクターネットワークの考え方を市場分析に適用している。中心になるのは、経済的行為の基礎となる「計算的エイジェンシー」の概念である。この計算という実践を支えているのが、集合的装置としての市場である。第一に、計算される<もの>は、それが置かれている文脈から切り離され、「計算空間」――領収書、工場、為替や市場取引のディスプレイ、表計算のシート、コンピュータのメモリ、そしてスーパーのカートもこれに相当するという――へ移動される。第二に、この「計算空間」のなかで、<もの>は、特定のルールや指標や計算機によって相互に関連付けられ、上下、左右、縦横に並べ替えられる。そして最後に、新たな実態――合計、注文表、見積もりなど――が生成し、計算が終了する。これらの一連の操作が、様々な装置という<もの>の集合によって行われ、それらが計算するという行為を支えているのである 26

 個人的行為者ではない「計算的エージェンシー」は、市場の多様な<もの>に分散されて存在するのである。あるいは、市場とは。「計算的エイジェンシー」を成り立たせる<もの>の布置である。…このような市場の分析は合理的な計算を主体的に行う「経済人(ホモ・エコノミクス)」を仮象として退けるだけではなく、互酬的な贈与関係に埋め込まれた伝統的人間――あるいはそのネガとしての脱文脈された近代的人間――をも否定する。 27

◇参加型デザインにおけるハイブリッドな共同体と社会・技術的アレンジメントの役割 ミシェル・カロン / 川床 靖子 訳

 わたしたちはVololona Rabeharisoaと共に、重い遺伝病を患う患者によって形成された組織について研究してきた。彼らは、研究者、臨床医、企業が協力し、重要な治療の上の突破口となる集合体を形成している(Callon and Rabeharisoa 2003)。40
 →"Reserch in the Wild and Shaping of New Social Identities" Thechnology in Society 25. pp.193-204

 まず、テクノロジーは、単に、人間によって使われるもの、或いは、人間の目的に従うものとして考えられるべきではないということを示す。テクノロジーは人間の中の道具としてではなく、パートナーとして行為と認識に十分に参加している。
 このことは、第二のポイントでもあるが、私たちは、人間自身について、人間の能力について、人間の欲求の表現型についての概念を修正しなければならないことを意味する。人が何を望み、考え、感じるかということは社会・技術的環境の配置・編成のあり方に依存する。即ち、その配置・編成のあり方次第で、それこそ多種多様な人間が存在しうるということなのである。このことは情報エコロジー的アプローチの価値を強めるものであり、デザインと仕様にかかわるハイブリッド・コミュニティの形成のための実践的な結論へと導くものである。41
 これらの事例は、新しいテクノロジーが新しい個々のアイデンティティを創案し、作り上げるというこれまで無かった新しいグループの出現に大きく貢献することを示している。これはMarylin Strathernが社会的なるもの(the social)の増殖と呼ぶものである。多くの研究者によって明らかにされているように、情報・コミュニケーション技術はこの増殖を強力に手助けしている。 43

私は、カー・ドライバーの事例を、それが日常生活や経験と符合するという理由で取り上げた。だが、この事例に限らず、人間エージェンシーの多様なフォームの存在はいわば法則である。最近出版した本で、私は、カー・ドライバーに適合することが経済上の主体にも等しく適合することを示した(Callon 1998)。Myriam Wianceはこの考え方に基づいた分析をハンディキャップのある人々にも広げている(Winance 2001)。私たちはみな何らかのかたちでハンディキャップを負っている。なぜならば、私たちはみな違っているのだから。問題は、障害云々ではなく社会・技術的配置・編成のあり方、或いは、こう言った方がよければ、能力のデザインということなのである。50
 

■書評・紹介

■言及



*作成:植村 要
UP: 20090629 REV:20110222
科学技術と社会  ◇サイボーグ関連文献表:発行年順   身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
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