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『街角の精神医療 最終章』

浜田 晋 20061201 医学書院,323p.

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last update: 20190715

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浜田 晋 20061201 『街角の精神医療 最終章』,医学書院,323p.ISBN-10: 4260002376 ISBN-13: 978-4260002370 3600+ [amazon][kinokuniya] ※ w/hs12, m, m01b

■内容

「MARC」データベースより
昭和49年から上野の地で精神科診療所を営んできた著者が、これまでに出会った分裂病者について調査・分析のまとめを行い、そこから浮かび上がってきた象徴的な症例を通して「精神分裂病とは何か」を具体的に語る。

■著者略歴

「BOOK著者紹介情報」より
浜田 晋
大正15年(昭和元年)高知市に生れる。旧制高知高校(1年3か月間は新居浜住友金属工業に学徒勤務動員)卒業。昭和20年4月、東北大学金属工学科入学。昭和21年4月、東北大学金属工学科入学。昭和21年4月、東北大学医学部に入学。昭和25年3月卒業。昭和31年東北大学医学部大学院(細菌学)修了。昭和34年から43年まで都立松沢病院に勤務。中でも「分裂病者と遊び、とくに球遊びについて(昭和42年)」は分裂病者の行動学的研究として学会の注目を浴びる。その業績が認められ、昭和42年4月から東京大学精神神経科講師に招かれる。荒川区峡田診療所・都立精神衛生センター・数か所の保健所勤めを経て、昭和49年地域精神神経科診療所を上野の地に開業、以来32年を経過する。街中にある精神科診療所の必要性を論じ(「町の精神科医」)、今日都市部を中心とした精神科診療所の発展の祖となる。平成4年、地域医療への貢献を評価され、第1回若月賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次

1 東京下町のある精神科診療所の出発――生と死の狭間で
2 身体をみることの大切さ――分裂病者は長生きできるか
3 私の基本戦略を象徴する患者との出会い――地域の力を借りる
4 改善に向かういくつかのパターン
5 患者によって癒されたとき
6 自営業の人々――下町に住む分裂病者と町の衰退史
7 結婚と育児からみた分裂病
8 職業からみた分裂病
9 分裂病者の老い
10 単身生活の分裂病者
11 患者からみた浜田先生
12 資料とまとめ

■引用

 「はじめに
 この書は「私の精神分裂病論」(医学書院、2001)、「街かどの精神医療」(医学書院、1983)の続編である。
 私は松沢病院(巨大公立単科精神病院)で育った。「私の精神分裂病論」は、そこで私が精神分裂病という一枚岩に「遊び療法」の技法で立ち向かい敗れた過程を述べた。そして昭和45年からたった1人で巨大都市東京の「地域活動」に挑み、ぼろぼろになった日々を綴った。
 そして昭和49年。東大闘争を経て、私は戦時中焼け跡での青春時代を送った東京下町「上野」に呆然と立ち尽くしていた。どう生きるか。未だ昏迷の中にあった。
 荒野からの呼び声の中で、私は精神診療所を建てるしかないのかと思った。」(浜田[2006:iii])

 「そして私80歳。今、幕引きの時を迎えた。
 「精神科診療所」なるものも大都市を中心に地域活動の拠点として定着しつつある。なぜか増加したのである。私の「町の精神科医――精神科診療所開業のすすめ」(星和書店)がその手引きとなった診療所も全国で少なくない。しかしその実体[ママ]は未だあいまいである。そこでどんなかかわりが行われているのか私にはまだ見えない。」(浜田[2006:iv])

 「おわりに
 […]本書では、診療所に通院を継続している分裂病者という限定された条件の中でしかいえないものの、「資料の」の表16(314ページ)でほぼ「症状の固定している」のは48人(3.8%)にしかすぎず、不変群といえども半数以上が絶えず動揺している。その実例は本書で述べた症例で明らかにした。それに対応することこそが、地域性をもった精神科診療所の重要な役割といえよう。
 中井久夫は「慢性分裂病状態は絶えず揺らいでいる。その中に離脱のチャンスが明滅する灯のように見え隠れしている」と言っている。
 また湯浅修一は「病者は相談相手としての治療者を1つの支えに、痛み多い人生行路を難渋しながらも自分の足で歩み続け、七転び八起きの生活を綻びたら繕い、治療者との反復する共同生活作業を通して何とか乗りこかる。この体験の中から病者は、自らを洞察し、生活の知恵を学習し、浮き世(憂き世)を渡るに必要な矜恃と拠りどころを得て、ゆとりも生じてくることを期待する。あとは運しだいである。そこには分裂病の治療というよりは、分裂病者の生き様を重視する発想、姿勢がこめられている」と言う。
 この2人の畏友の言葉で、この書の結びにかえたい。この分裂病者の生と死のありようは、「私たち正常な人間と思って生きている人間」の本質を裏面から眺めた1つの真実であろう。
 この書を、人知れず亡くなった湯浅修一先生の霊に捧げる。」(浜田[2006:316])
◇中井 久夫 1998 『最終講義――分裂症私見』,みすず書房.150+9p \2000 ISBN10:4622039613
◇湯浅 修一 1978 『精神分裂病の臨床――通院治療を中心に』,医学書院

■書評・紹介



■言及

◆立岩 真也 2011/02/01 「社会派の行き先・4――連載 63」,『現代思想』39-2(2011-2):- 資料

◆立岩 真也 2013/12/10 『造反有理――精神医療現代史へ』,青土社,433p. ISBN-10: 4791767446 ISBN-13: 978-4791767441 2800+ [amazon][kinokuniya] ※ m.


*作成:岩ア 弘泰
UP: 20110108 REV: 20110112 20190715
浜田 晋  ◇精神障害/精神医療/…  ◇精神障害/精神医療/…・文献  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
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