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『医療的ケア研修テキスト――重症児者の教育・福祉、社会生活の援助のために』

日本小児神経学会社会活動委員会・松石 豊次郎・北住 映二・杉本 健郎 編 20061130 クリエイツかもがわ,143p.


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■日本小児神経学会社会活動委員会・松石 豊次郎・北住 映二・杉本 健郎 編  20061130 『医療的ケア研修テキスト――重症児者の教育・福祉、社会生活の援助のために』,クリエイツかもがわ,143p. ISBN-10:4902244675 ISBN-13:978-4902244670 \3150 [amazon] [kinokuniya] ※

■内容

「MARC」データベースより
障害児の延命率が高まり、教育や地域療育・生活の場における医療的対応のニーズが著しく増加している。学校現場、入所施設、家庭での、統一したレベルの高い「医療的ケア」の充実をめざす一冊。

■目次

まえがき

第1章 医療的ケアとは
 1 医療的ケアとその意義
 2 医療的ケアをめぐる対応の経緯
 3 違法性の阻却
 4 教員が行えるとされている行為
 5 教育的かかわりとしての医療的ケア
 6 2005(平成17)年度における通知

第2章 呼吸管理 呼吸障害
 1 重症心身障害児者の主な随伴症状とその相互関係
 2 呼吸器系の構造
 3 呼吸と胸の動き
 4 呼吸障害の症状
 5 重症心身障害児者の呼吸不全
 6 重症心身障害児者の呼吸障害の諸要因
 7 誤嚥・分泌物の貯留
 8 呼吸障害の対策
 (1)のどを広げる―上気道狭窄への対応
 (2)胸を広げる・動かす―胸郭呼吸運動障害への対応
 (3)痰への対応―分泌物貯留への対応
 9 重症心身障害児者の呼吸障害の治療
 10 在宅用人工呼吸器
 11 排痰用の機器

第3章 気管切開の管理
 1 気管の構造と機能
 2 気管切開
 3 事故と合併症
 4 対応と注意点
 5 呼吸障害

第4章 摂食嚥下障害、経管栄養、栄養管理
 1 はじめに
 2 経口摂取と誤嚥
 (1)正常な摂食・嚥下
 (2)誤嚥の症状とその防御機構
 (3)摂食・嚥下障害の要因と誤嚥の特徴
 (4)誤嚥の防止のための配慮
 (5)誤嚥の評価と対応
 3 経管栄養
 (1)経管栄養法の実際
 (2)胃瘻(いろう)
 (3)空腸チューブおよび腸瘻チューブ
 4 水分・栄養管理
 (1)必要水分量
 (2)栄養所要量

第5章 外科的視点からの経腸栄養管理
 1 重度の障碍に伴う二次障碍に対する包括的治療戦略
 2 胃食道逆流症
 (1)胃食道逆流が起こるメカニズム
 (2)胃食道逆流症の臨床症状
 (3)胃食道逆流症の診断
 (4)胃食道逆流症の治療
 3 経腸栄養
 (1)経口栄養
 (2)経管栄養
 (3)胃瘻
 (4)障碍をもつ子どもに対する経腸栄養のポイント

第6章 間欠導尿法
 1 導尿、間欠導尿と尿道留置カテーテル
 2 間欠導尿法の適応
 3 間欠導尿の種類と歴史
 4 清潔間欠導尿法
 5 臨床症例から
 (1)症例1
 (2)症例2
 6 二分脊椎症の尿路管理ガイドライン
 7 清潔間欠導尿に使用している物品
 8 清潔間欠自己導尿法の指導方法について
 9 大手前整肢学園における清潔間欠自己導尿について
 (1)大手前整肢学園の25項目の清潔間欠自己導尿の手順
 (2)遵守度について
 (3)膿尿の出現頻度と遵守度
 (4)膿尿と導尿間隔
 10 清潔間欠自己導尿法のまとめ
 11 医行為としての位置づけ
 (1)日本二分脊椎協会の「二分脊椎症者からの声」
 (2)日本二分脊椎協会のアンケート調査
 (3)日本二分脊椎協会の今後の方針
 12 盲・聾・養護学校における痰の吸引などの医学的・法律学的整理に関するとりまとめ
 13 教育現場での清潔間欠導尿についての検討
 14 まとめおわりに―医療的ケア講師研修セミナー今後の課題

索引

■引用

 「2 医療的ケアをめぐる対応の経緯

 学校等での医療的ケアについての経緯を、スライドHにまとめた。以下、このスライドの各項について説明する。
 教員による医療的ケアの実施が、横浜では市レベルでの取り組みとして20年以上前から先駆的に開始され、大阪では現場の教員や用語教諭の取り組みとして実践され、東京では都としての対応が開始されていたが、全国的ニーズが増加してきているにもかかわらず、全国的レベルでの行政の取り組みは皆無であった。

 このような状況に対して、私たち医師有志は、スライドのような要望書を作成し、正式提出は2000(平成10)年3月であったが、内容はその前から行政に伝えられ、東京都の医療的ケア関連の事業が一時後退しかかった際にそれを押し戻すのに力となるとともに、次の文部省(当時)による研究事業の発足に当たって、多数の医師の意見を表すものとして、大きな力となった。(スライドI)

 また、その後の時点で、専門医師からの公式な意見表明として、日本小児神経学会と、主に成人の神経疾患を対象とする日本神経学会から、意見表明がなされている。

[……]

 文部省(当時)は厚生省(当時)との連携のもとに、2000(平成10)年度に、医療的ケアへの国としての初めての取り組みとして「特殊教育における福祉・医療との連携に関する実践研究」というテーマでの研究事業を、ここに示すような条件と内容で、10県に委嘱して開始した。
 さらに2003(平成15)年より、対象県を拡大し、モデル事業としての検討を拡大した。(スライドK)
 この研究事業の結果は、このスライドのように肯定的にまとめられている(スライドL)。
 この研究事業もモデル事業もあくまで「研究」として行われたものであり、「研究」の段階から、国としてどのように一般化させるかが、課題となっていた。

3 違法性の阻却

 在宅のALS患者に対して、医師・看護師、家族以外の人(ヘルパーなど)が痰の吸引を行うことは、2003(平成15)年7月に認められていた。しかし、ALS以外の患者さんの吸引については、課題として残されていた。
 学校でも教員による医療的ケアについても、「研究」の段階から。どのように一般化するかが、課題であった。
 この2つの課題を検討するため、2004(平成16)年5月に厚労省は研究会を設置した。この研究会は、日本医師会の代表、看護協会の代表、法学者、看護関係者、ヘルパー養成機関関係者、教育関係者、医師などから構成された。(スライドM)」
(p13-15)

 「おわりにー医療的ケア講師研究セミナー今後の課題

社会活動委員会副委員長・事務局長
杉本健郎

 1)日本小児神経学会と医療的ケア

 日本小児神経学会(以下小児神経学会)は子どもたちがどんな重度な脳障害をもっていても学齢期には学校へ通学し教育を受けることを支援してきた。特に医療的ケアが必要な子どもたちの主治医として積極的に協力してきた。2001年までの取り組みは「医療的ケアネットワーク」(クリエイツかもがわ、2001)に詳述した。その後、小児神経学会は養護学校での医療的ケアの校内実施施策にむけて、文部科学省に協力し、日本医師会、日本看護協会などを訪問し医療的ケアへの理解を求め厚生労働省をはじめ関係省庁、関係団体の連携を作り、専門家の立場から学校内での医療的ケア実施施策に協力してきた。その経過は『重症児教育』(クリエイツかもがわ、2004)に詳述した。
 2005年4月父母の願い、関係者の願い、そして当事者の想いが通じて養護学校での「軽微3項目の医療的ケアの校内実施」が施策としてはじまった。大阪や神奈川、東京などの進んだ取り組みをしていた地域にとっては物足りない、一部は後退と思われる施策であったが、全国的に統一した取り組みとしては一歩も二歩も前進であった。
 小児神経学会会員は医療的ケアといわれるチューブ栄養による栄養管理や気管切開などの呼吸管理を勧め実施してきた。その日常管理は歴史的に主治医なりの「我流」的傾向があった。方法についての質的保証が専門家として問われることになった。さらに小児神経科専門医が果たす社会的役割は、医療的ケアの意義とその実施にあたっての研修指導にある。しかも一定レベル以上のガイドラインに沿ったレクチャーが必要になり、そのレベルを保証するための研修が求められた。研修を受けた後、全国津々浦々で同じスライドを用いて研修講義をするための講師研修セミナーを小児神経学会社会活動委員会主催で開始した。なお、社会活動委員会の発足については上記した『医療的ケアネットワーク』に記述した。
 表はこれまでの3回のセミナーの内容である。第4回は2007年6月2日に北海道(北大小児科斎藤伸治会長)で開催する予定である。

 2)これからの医療と専門的立場からの社会活動の意義

 これまでの医学・医療モデルはバイオメディカルモデルといわれる通り、疾病を身体的、生物学的なレベルで理解し、原因物質の解明とその除去で疾病を治療しようとしてきた(広井良典、2006)。最近の解明は遺伝子レベルにまで到達し、生命操作を含めて生命科学、とりわけ生命倫理面から、「治療」そのものの価値が問われる時代が来ている。さらに医療費抑制策が顕著になり、各種規制、競争原理の導入、医療の標準化が求められ、市場原理のもと、費用対効果のない「治療」を削減しようとする動きがある。
 このような動きに対して、今後、専門家集団としての学術学会もそれを助長するような業績主義的研究に終始するのではなく、疾病と上手に、快適に付き合う医療、広い視野での医療的ケアをとらえ直し、医療サービスの向上をめざさねばならないと考える。具体的には心理的・社会的支援の充実、予防的ケアへの資源配分、真に患者の立場に立ったソシアルワーカーの保険診療への認知など、患者の権利擁護や患者の治療過程への参加が促進されなければならない。この観点に立つ時、専門家集団は社会医学の視点をもたねばならない。そして「いのち」の多様性を認め、医療的ケアでより快適に「いのち」を守りそだてていくことこそ21世紀の医療のめざすものに他ならない。

 3)医療的ケア研修の今後の課題

 (1)医師を対象として
 これまでの3回は小児神経学会会員を対象としてきた。第4回からは新生児医療や小児医療全般に関係する医師に広く呼びかける。未熟児新生児学会や小児科学会、小児科医会への参加要請をする。その先には日常的に地域医療に関わる開業医、日本医師会にも広く参加を呼びかけていかねばならない。
(2)看護師を対象として
 筆者の所属する社会福祉法人びわこ学園では2年前から滋賀県下の訪問看護ステーションの看護師や養護学校に関係する看護師を対象に研修を実施してきた。病棟での実習も含めた研修である。看護師免許を持っていてもすべての看護師が重症児者の栄養管理や呼吸管理の経緯があるわけではない。地域医療に関係するより多くの看護師こそが医療的ケアへの力量をもつべきである。そのためには小児看護学会、重症心身医学会などの関連団体とも連携し、全国レベルで研修システムをつくることが求められている。
(3)非医療職を対象として
 筆者が代表を務める医ケアネットワーク近畿では非医療職を対象に2日間の研修を行っている。主旨は医師や看護師と同様に非医療職の医療的ケアへの理解やケアのレベルアップである。家族はこれまで「違法性の阻却」という法的解釈や生活行為の一部と考え実施してきた。教師やヘルパーの一部も同様である。
 現段階では緊急避難行為としての実施であったり、軽微3項目に限定した実施であったりを前提とした研修である。
 しかし、筆者は今後は医師や看護師の指導のもと、研修をつんでケア受ける側の了解のもと、個別的契約関係でヘルパーなどの非医療職がケア支援にあたるべきと考える。
 北欧では「オーフス方式」と呼ばれる方法で、ヘルパーがすべてのケアにあたる。障害者自身(代諾者を含む)が選定し、認知した個別ヘルパーが24時間態勢で支援にあたる。研修は公的に保障し、支援の費用も支払われる。その費用はデンマークでは障害者年金(日本の2倍以上)から支払い、スウェーデンでは市が支払う。わが国では障害者自立支援法が10月から本格的実施に入ったにもかかわらず、医療的ケアが必要な障害者への支援内容が全く示されていない現状である。オーフス方式にはほど遠いが、地域での医師、看護師のネットワークができてくれば、いずれは日本版『オーフス方式』が普及するようになってほしい。(第二びわこ学園)」(pp136-8)


■書評・紹介

■言及



*作成:三野 宏治 
UP:20100114 REV:20100128
医療行為/医療的ケア  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
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