HOME > BOOK >

『多重化するリアル――心と社会の解離論』

香山 リカ 20061110 ちくま文庫,229p.


このHP経由で購入すると寄付されます

香山 リカ 20061110 『多重化するリアル――心と社会の解離論』,ちくま文庫,229p. ISBN-10: 4480422862 \620 [amazon][kinokuniya] 

■内容
・(「BOOK」データベースより)
解離性障害や離人症は何らかのトラウマが原因だとされるが、キレる子供の精神病理や多重人格的な振る舞いの背後に、明確な因果関係を見出すのは難しくなっている。そうした現象を正確に理解するには、IT技術の進化と普及によって急速に変貌しつつある社会自体の診断が欠かせない。不安定化する現代社会を背景に、希薄な現実感や当事者意識の困難さにとまどう現代人の心理現象を読みとく。

■目次
第1章 変容するリアリティ――離人感覚が蔓延する
第2章 リアリティを取り戻したい――自傷・ピュア願望・出会い系
第3章 心が解離していく――トラウマなき多重人格
第4章 ボーダーライン時代のカリスマ――「イメージ」と「個」
第5章 多重化するリアルの行方――テロ事件が扉を開く?
第6章 これは日本のリアルなのか?――二〇〇五年の風景より
第7章 「自分」が分割される――ポストモダン心性について

■引用

「実感がない」というのは、離人状態を中心とした解離性障害という病に陥った特殊な若者に限った問題なのであろうか。いや、そうではないだろう。日常生活に支障をきたすほどのレベルには達していないにせよ、今や多くの若者があの少年やその前にあげた離人症の人たちのような訴えを口にする。
「私には居場所がない」「これが現実だってピンとこない」「自分が自分だという実感がない」「生きているんだか死んでいるんだかわからない」「生きている意味も自分の価値もはっきりしない」……。
これらは、昔からよくある自己同一性、いわゆるアイデンティティが未確立な若者ならではの「私ってだれ?」という問いではないか、と見逃されがちだ。しかし、彼らの困憊して途方に暮れたような表情を見ていると、その訴えの中核にあるのは、離人症者たちのそれに近い、「現実感の喪失」や「感情の疎隔化」なのではないかと思える。p.40

トラウマや自己変革願望といった原因、誘因が増加した結果、多重人格に代表される解離性障害が増えている、今まではそう考えられてきたが、ここで私は、別の非常にシンプルな可能性を提示してみたい。解離性障害は、解離そのものが起きやすくなっているために増加している、というのがそれである。p.91

私たちは、自己の統合や連続性を失い、自分自身から解離し、あるいは解離した人格の一部が発達して多重人格化する解離性障害の増加という問題について考えてきた。
そして、複雑化・多様化する社会の中で、インターネットなどのバーチャル空間やメディア空間の肥大という事態にさらされ、「自分が自分でなくなること」「これが現実であること」に生き生きとした実感を感じられなくなるという事態を、“障害”“病理”と呼ぶことは今や間違いで、それは現代の日本人にとっての自己やリアリティに関する認識の新しいスタンダードになりつつあるのではないか、という仮説を提示した。p.102
■書評・紹介

■言及


*作成:山口 真紀
UP:20090625 REV:
身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
TOP HOME (http://www.arsvi.com)