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『新平等社会――「希望格差」を超えて』

山田 昌弘 20060915 文藝春秋,p.285 ISBN: 4409040790 1680 


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山田 昌弘 20060915 『新平等社会――「希望格差」を超えて』,文藝春秋,p.285 ISBN-10: 4163684506 ISBN-13: 978-4163684505 1500 [amazon]

■商品の説明

新平等社会
「家族社会学」という学問の視点から格差問題に取り組むのは、東京学芸大学の山田昌弘教授だ。生産性の高い仕事に就く者と就けない者、その結果として豊かな生活を築く者と築けない者の違いを単純に比較するだけでは、格差問題の本質は見えないと言う。

深刻なのは、生産性の低い仕事に就くが故に生活に窮している状態から、「いくら努力しても、いつまで経っても脱することができない人」が増えていることだと指摘する。さらに、こうした者同士が家族を形成すれば、自分の子供の将来にすら、希望が持てなくなる。著者はこうした負の連鎖を「希望格差」と呼び、この国の活力を急速に奪い取っていると憂える。

では、現在の日本社会に必要な平等性とは何か。著者は自由経済がもたらす「結果の格差」を認めつつも、市場原理にすべてを委ねることをよしとしない。競争原理を前提とする一方で、参入機会の平等、及び能力開発機会の平等をあらゆる人に担保することが、「希望格差」を緩和すると説く。収入の格差については、税や社会保障以外に、家族形態別に生じる不平等を補うような分配のシステムが必要だと訴える。非婚化や少子化、高齢化は、「希望を喪失した家族」の増加を加速させると警鐘を鳴らす。

(日経ビジネス 2006/10/30 Copyright?2001 日経BP企画..All rights reserved.)

■内容

(「BOOK」データベースより)
経済格差の拡大はニューエコノミー以降の世界的な現象だ。労働の「市場価格」の二極化による収入格差も、家族形態の多様化による格差拡大も、不可避であり、「不当」とは言えない。なぜなら、現代社会の格差は、自由で民主的な社会にとって、むしろ「望ましい」とされることから生み出されているからだ。そんな中、「希望の格差」に陥る社会とそうでない社会とがある。その分かれ道とは何か?いま、私たちは新しいタイプの平等社会に移行しなければならない―。「生活の場」を再建する方策を具体的に示し、真の希望を与える刮目の書。

(「MARC」データベースより)
中流生活が崩壊し、社会の「底抜け」がはじまった-。仕事と家族のリスクが増大し二極化が進む今、経済・家族格差を希望の格差に結びつけない新しい社会のあり方を提案する刮目の書!

■著者略歴

(「BOOK著者紹介情報」より)
山田 昌弘
1957年東京都生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。東京学芸大学教育学部教授。専門は家族社会学・感情社会学。内閣府国民生活審議会委員、東京都児童福祉審議会委員などを務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次

はじめに
第T部 格差社会を超えて
1章 格差問題を考えるための三つの問い
2章 格差に関わる社会問題を考える際の五つの領域
3章 格差の現代的特徴と平等社会のイメージ
4章 新たなタイプの格差の出現とその理由
5章 新たな平等社会を目指して
第2部 格差社会の断面
6章 仕事格差―フリーター社会のゆくえ
7章 結婚格差―結婚難に至る男の事情、女の本音
8章 家族格差―家族の形が変わり、新しい格差を生む
9章 教育格差―希望格差社会とやる気の喪失
10章 「家族主義の失敗」とリスク構造の転換
おわりに 生活の構造改革を目指して――格差が問題化しない社会を
 あとがき
 文献目録
 初出一覧

■新聞書評

新平等社会―「希望格差」を超えて
新平等社会 山田昌弘

格差拡大避けられぬが…
 経済的な格差はいつの時代にもあった。大地主と小作農、資本家と労働者といった、持つ者と持たざる者の格差の問題は、大きな社会的緊張を生み出し、その解決には、最終的に革命など社会体制そのものの転換さえ必要なこともあった。だが実は、体制を変え、「搾取」を無くせば解決できるような種類の格差は、単純な問題だったともいえるかもしれない。

 むしろ「現在の格差問題の解決が容易でないのは、経済格差を作り出す原因が、(中略)自由で民主的な社会にとって『望ましい』とみなされることから生み出されている」ことを著者は強調する。より良い製品やサービスが効率的に提供されるようになるほど、そうしたより良い製品やサービスを創りだす能力、それらを効率的に提供する能力のある人の所得はますます高くなる。あるいは女性の社会進出が進み、能力の高い女性が能力の高い男性と結婚して共働きをする傾向が強まるほど、高能力カップルの所得はますます増えていく。結果として格差は拡大してしまうのである。

 もちろんだからといって、そうした格差をそのままにしておいて良いわけではない。とくに、格差の固定は、若い人から希望を奪い、社会の活力低下、不安定化を招くことになる。そこで、誰にでも能力開発の機会が与えられ、万一のときに最低限の尊厳のある生活が保証され、人の価値が多様な評価軸で測られるような、「生活の構造改革」が必要であると提言している。

 格差の弊害を難じ、とにかくその解消を目指すべきだと強く主張したり、逆にどうしたら勝ち組になれるかといったノウハウを教えたりする本は、それらを望む読者には熱烈に支持されるだろう。この本のように、格差拡大は避けられないがそれにともなう問題もなんとかしなければならないといった苦渋に満ちた議論は、あまり大受けしそうにない。しかし現在の格差問題の本質はまさにそこにあり、本書の愚直な論旨に著者の知的誠実さを感じるのである。

評・清家 篤 (慶応義塾大学教授)/ 読売新聞 2006.10.10


UP:20071010 REV:20081004
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