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『医療化のポリティクス――近代医療の地平を問う』

森田 洋司・進藤 雄三 編 20060930 学文社,261+xiip.

last update: 20110708

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■森田 洋司・進藤 雄三 編 20060930 『医療化のポリティクス――近代医療の地平を問う』,学文社,261+xiip. ISBN-10: 4762016020 ISBN-13: 978-4762016028 \2730 [amazon][kinokuniya] ※ addict adhd alc c20 ds f04 sm

■内容

・同書「はしがき」より
本書は,現代社会において見い出される「医療化」の諸相を日本社会の実態に即して明らかにするとともに,それが抱える問題点を,特に逸脱の「医療化」に伴う「責任」配分のポリティクスに焦点をあわせつつ解明しようとする試みである.

■目次

はしがき(森田 洋司・進藤 雄三) i-v

 第I部 医療化のポリティクス 1-112
序章 医療化の推進力の変容(ピーター・コンラッド〔Conrad, Peter〕) 3-27*
*Conrad, P, 2005, "Shifting Engine of Medicalization," Journal of Health & Social Behavior, 46(March): 3-14. ISSN: 00221465 の邦訳
第1章 医療化のポリティクス――「責任」と「主体化」をめぐって(進藤 雄三) 29-46
第2章 医療化の再検討――歴史的視点から(市野川 容孝) 47-63
第3章 障害児・者にとっての医療化(石川 憲彦) 65-79
第4章 薬物政策における医療的処遇――「逸脱の経済化」の一局面としての「医療化」(佐藤 哲彦) 81-95
第5章 制裁としての医療――「心神喪失者等医療観察法」と保安処分(井上 眞理子) 97-112

 第II部 医療化の諸相 113-258
第6章 アルコール依存症と医療化(心光 世津子) 115-127
第7章 ひきこもりと「医療化」(斎藤 環) 129-147
第8章 児童虐待と医療化(上野 加代子) 149-163
第9章 不登校と医療化(工藤 宏司) 165-179
第10章 AD/HDと医療化(佐々木 洋子) 181-193
第11章 月経前症候群(PMS)と日本における医療化(小村 富美子) 195-208
第12章 外貌の医療化(的場 智子) 209-221
第13章 論説のなかの「健康ブーム」――健康至上主義と社会の医療化の「神話」(中川 輝彦・黒田 浩一郎) 223-242
第14章 生活文化の医療化――テレビテクストにおける病気の物語(田原 範子) 243-258

索引 259-261

■引用

「心神喪失者等医療観察法」≠「逸脱の医療化」;=「社会防衛」
(制裁としての医療――「心神喪失者等医療観察法」と保安処分〔井上 眞理子〕より)

「心神喪失者等医療観察法」〔中略〕について語る時,それは本当に医療化であるのかと疑いの眼差しを向けることが重要である.「かつて悪しきもの(すなわち罪あるいは犯罪)であったものの多くは,今は病なのである.……逸脱に対する現代の社会の反応は,懲罰的というよりはむしろ『治療的』である.多くの人はこれを『人道的で科学的な』進歩であるとみている」(コンラッド,2003: 65).このように語られる時,たとえ論者の意図が「逸脱と医療化」がもつ医学的・生物工学的決定論という性格に注意を喚起しようとするものであったとしても,まだ楽観的であるといわざるをえない.精神障害者に対するものを含め,保安処分はたとえ医療の言葉で自らを語ろうとも,目指すところは逸脱者の隔離とそれによる社会防衛だからであり,「医療」はむしろタテマエとして用いられてきた(98).

この法律では入院が決定した場合,厚生労働省が所管する専門施設に入院する.従来の保安処分案では,施設の所管は法務省が行うことになっていて,批判を受けたことへの対応が厚生労働省所管となったと思われる.しかしいずれにせよ〔中略〕特別な治療は存在せず,専門施設設置の医療上の意味は存在しない.入院期間の上限はなく無期限の隔離も可能である.
通院治療の場合,これを統括するのは保護観察所であり,その職員である「社会復帰調整官」が,不断に対象者の「再犯のおそれ」を判断し報告することになっている.このようにみていくと,「治療」というタテマエの背後に,社会防衛と保安の要請が伺える(107-108; 下線コンテンツ作成者加筆).

不起訴処分になった場合,事実の審理が行われず,やっていない行為をやったと前提とされ,予測不可能なはずの「再犯のおそれ」を理由に長期にわたって拘禁されるということもありえる.付添い人=弁護士をつけることはできるが,記録を謄写する権利,証人を申請したり反対尋問する権利もなく,事実関係を争うことは困難である(108; 下線コンテンツ作成者加筆).

*上記で言及されている文献
◇Conrad, P & J W Schneider, [1980]1992, Deviance & Medicalization: From Badness to Sickness, expanded ed, Philadelphia: Temple University Press, 327+Xp. ISBN-10: 0877229996 ISBN-13: 978-0877229995 [amazon][kinokuniya] c0104 sm
(=20031110,進藤 雄三 監訳/杉田 聡・近藤 正英 訳 『逸脱と医療化――悪から病へ』,ミネルヴァ書房,587p.ISBN-10: 4623038106 ISBN-13: 978-4623038107 \7350 [amazon][kinokuniya] ※ c0104 sm)

■書評・紹介

◆加藤 源太 20070910 「書評 森田洋司・進藤雄三編『医療化のポリティクス――近代医療の地平を問う』」,『現代の社会病理』22: 189-191

■言及

藤原 信行 20110325 「『医療化』された自殺対策の推進と〈家族員の義務と責任〉のせり出し――その理念的形態について」,『生存学』3: 117-132 [amazon][kinokuniya] ※


*再作成:藤原 信行
UP: 20080208 REV: 20110708
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