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『アメーバ経営――ひとりひとりの社員が主役』

稲盛 和夫 20060915 日本経済新聞社,256p.

last update:20131212

稲盛 和夫 20060915 『アメーバ経営――ひとりひとりの社員が主役』,日本経済新聞社,256p. ISBN-10: 4532312957  ISBN-13: 978-4532312954 \1500+税 [amazon][kinokuniya]


■内容

内容紹介
小集団による部門別採算、自由度の高い組織、時間当り採算表、リーダーが育つ仕組み――どんな苦境に陥ろうともびくともしない最強の組織をつくる“究極の稲盛流・経営管理手法”を明らかにする。大ベストセラー『稲盛和夫の実学』の実践編!

内容(「BOOK」データベースより)
小集団による部門別採算、自由度の高い組織、時間当り採算表、リーダーが育つ仕組み―究極の稲盛流・経営管理手法。独創的「管理会計」の集大成。

■目次

アメーバ経営
第1章 ひとりひとりの社員が主役
第2章 経営には哲学が欠かせない
第3章 アメーバの組織づくり
第4章 現場が主役の採算管理
第5章 燃える集団をつくる
あとがきに代えて

■引用

◆アメーバ経営においても、人の心がベースとなっている。人体に何十兆という細胞があり、ひとつの意志のもと、すべてが調和しているように、会社にある何千というアメーバ(小集団組織)がすべて心を合わせてこそ、会社は一丸となれるのである。/ときには競争することがあっても、アメーバはお互いに尊重し、助け合わなければ、会社全体としての力を発揮することはできない。そのためには、会社のトップからアメーバの構成員に至るまで、信頼という絆で結ばれていることが前提となる。[2006:23]

◆アメーバ経営は、小集団独立採算により全員参加経営をおこない、全従業員の力を結集していく経営管理システムである。それには、全従業員が何の疑いもなく全力で仕事に打ち込める経営理念、経営哲学の存在が必要なのである。[2006:27]

◆アメーバ経営には、大きく分けると次の三つの目的がある。…
第一の目的 市場に直結した部門別採算制度の確立
第二の目的 経営者意識を持つ人材の育成
第三の目的 全員参加経営の実現
[2006:31]

◆めまぐるしく変化する市場においては、製品をつくっていく過程で、タイムリーに原価を管理する必要があった。経営者にとって必要なものは、会社はいま、どのような経営状態にあり、どのような手を打てばよいのかを判断できる「生きた数字」なのである。[2006:35]

◆悩み悩んだ末に私は、経営における判断は、世間でいう筋の通ったこと、つまり「人間として何が正しいのか」ということにもとづいておこなわなければならないことに気づいた。…/つまり、「人間として何が正しいか」という基準を会社経営の原理原則として、それをベースにすべてを判断することにしたのである。それは、公平、公正、正義、勇気、誠実、忍耐、努力、親切、思いやり、謙虚、博愛、というような言葉で表される、世界に通用する普遍的な価値観である。[2006:36]

◆このときに私は、「売上を最大に、経費を最小にする」ことが経営の原理原則であることに気づいた。…この原則こそ、世間の常識を超えた、経営の真髄といえるものである。一般の企業では、製造業でも、流通業でも、サービス業でも、「こういう業種では、利益率はこんなものだ」という暗黙の常識を基準に経営をしている。…/ところが、「売上を最大に、経費を最小にする」という原則からすれば、売上はいくらでも増やすことができるし、経費も最小にすることができるはずである。その結果、利益をどこまでも増やすことができる。/また、売上を伸ばすには…お客様が喜んで買ってくださる最高の値段を見つけ出すことが重要である。/経費を減らすときも、「これが限界」と感じてあきらめるのではなく、人間の無限の可能性を信じて、限りない努力を払うことが必要である。そうすることで、利益をどこまででも高めることが可能となる。この原理原則にもとづき、全従業員が綿々と努力を積み重ねることにより、企業は長期にわたり高収益を実現できるのである。[2006:37-38]

◆…会社を小さなユニットオペレーションの集合体にすれば、経営者はそれぞれのユニットからあがってくる採算状況を見ながら、どこが儲かっているのか、損をしているのか、という会社の実態をより正確に把握することができる。そうすれば、経営トップも正しい経営判断を下すことができ、会社全体をきめ細かく管理していくことができる。このようなことから、京セラではアメーバ経営システムの原形ともいえる、小集団による部門別採算制度が始まったのである。[2006:41]

◆時間割採算では、各アメーバの収入と経費だけでなく、その差額である付加価値を計算する。その付加価値を総労働時間で割り、一時間当りの付加価値を計算する。このように、自分の属するアメーバが、一時間当たりどれだけの付加価値を生み出したのかということが簡単にわかる仕組みになっている。また、時間当たり採算表の予定と実績を対比させることで、事前に立てた売上予定、生産予定、経費予定などの進捗状況をアメーバリーダーはタイムリーに把握でき、必要な手をすぐに打つことができる。…市場はつねに変化しており…そのような企業を取り巻く環境に敏感に反応し、柔軟に対応していくには、組織を固定化せず、事業展開に応じて自由に分割したり、統合したり、あるいは増殖させたりすることが必要である。[2006:42-43]

◆会社の規模が拡大し、経営者や各部門の責任者が会社全体を管理することが不可能となったときでも、組織を小さなユニットオペレーションに分けて、独立採算にしておけば、そのリーダーが自分のユニットの状況を正しく把握できる。また、小さなユニットのオペレーションを任されたリーダーも、少人数の組織であるがゆえに、日々の仕事の進捗状況や工程管理などの組織運営を容易におこなうことができ、特別高い管理能力や専門知識を持たなくても自部門の運営が的確におこなえる。/それだけではない。小さなユニットであっても、その経営を任されることで、リーダーは「自分も経営者のひとりだ」という意識を持つようになる。そうなると、リーダーに経営者としての責任感が生まれてくるので、業績を少しでもよくしようと努力する。つまり、従業員として「してもらう」立場から、リーダーとして「してあげる」立場になる。この立場の変化こそ、経営者意識の始まりなのである。[2006:47]

◆もし、会社が、ひとつの大家族であるかのような運命共同体となり、経営者と従業員が家族のごとくお互いに理解し、励まし合い、助け合うならば、労使一体となり会社経営ができるはずである。また、厳しい市場競争のなかであっても、ともに会社発展に努力するため、経営も自ずとうまくいくはずである。私はこの考え方を「大家族主義」と称して、会社経営のベースとなる考え方とした。[2006:53]

◆組織の分け方というのは、事業の実態をよく把握し、その実態に沿ったものでなければならない。そのために、私は三つの条件があると考えている。/第一の条件は、切り分けるアメーバが独立採算組織として成り立つために、「明確な収入が存在し、かつ、その収入を得るために要した費用を算出できること」である。…第二の条件は、「最小単位の組織であるアメーバが、ビジネスとして完結する単位となること」である。/言い換えれば、アメーバがひとつの独立した事業として成り立つ、最小限の機能を持った単位でなければならないということである。…第三の条件は、「会社全体の目的、方針を遂行できるように分割すること」である。[2006:61-64]

◆アメーバ経営の特長は、経済状況、市場、技術動向、競合他社などの急速な変化に対し、アメーバ組織を柔軟に組み替え、即座に対応できるところにある。企業を取り巻く環境は刻一刻と変化しており、市場の移り変わりや競合他社の動きに応じて、その時々の状況に合ったベストの組織にする必要がある。経営者やリーダーは、いまの事業を取り巻く環境や自社の方針と現在の組織が適合しているかを、つねにチェックしておく必要がある。[2006:66]

◆「他社もそうしているから、このような組織をつくろう」というような横並びの発想ではなく、会社を効率的に運営するために、まず、どのような機能が必要なのかを明らかにし、その機能を果たすためには、どのような組織が最低限必要なのかを考えるべきである。そのうえで、その組織を運営していくためには、最低限どれくらいの人員が必要なのかを考えるのである。…アメーバ経営における組織編成は、このように「まず機能があり、それに応じて組織がある」という原則にもとづいて、最低限必要な機能に応じたムダのない組織を構築することが基本になっている。[2006:98]

◆だが、単に組織を機能別に分けていくだけでは不十分である。全社一丸となり経営を推進していくには、各組織に帰属する従業員が、自分たちの組織の機能や役割を肝に銘じ、その責任を自ら果たそうとする使命感を持つことが重要である。…さらに、ビジネスには必ず仕事の流れが存在し、それは、多くのプロセスにより成り立っている。それぞれのプロセスが、必要とされている機能を忠実に果たしながら、お互いに連携して仕事を進めていかなければ、経営は決してうまくいかない。新たに組織をつくる場合も、ビジネスフローを描き、それぞれのプロセスで必要とされる機能を明確にし、ビジネスの 流れに沿って、それぞれの機能を果たしていく必要がある。/そのうえで、会社が組織力を発揮するには、会社を構成する各組織のひとりひとりが自らの役割や責任を深く認識し、何としてもそれを果たそうという使命感を持つことが不可欠である。このことは一見あたりまえのように思えるが、アメーバ経営における組織のあり方として最も重要なことである。[2006:99-102]

◆…組織を細分化する際には、経営者の視点から見て、どのような単位で採算をとらえれば、経営の実態がより明確に見えてくるのかが鍵となる。経営者が会社という船を舵取りするうえで、船全体の動きが一目でわかるように、経営者の視点に立った組織編成をおこない、各部門の実態が手にとるように実感できることが大切なのである。[2006:109]

◆…アメーバ経営の目的のひとつは、経営者意識を持つ人材育成にある。たとえ現段階で十分な経験や能力がなかったとしても、リーダーとなる可能性のある人材を発掘し、その人材にアメーバリーダーを任せていくことが大切である。その場合、リーダーに経営を任せきりにするのではなく、新しいリーダーを指導、監督する立場にある者が、足りないところを指導し、育成していかなければならない。つまり、アメーバの責任者になるべき人材が不足している場合には、組織をあるべき姿に分けて、将来性のあるリーダーを抜擢し、育成していくことが必要なのである。…アメーバ経営では、組織を細分化しているので、将来性のある新しいリーダーを登用して仮にうまくいかなかったとしても、会社の屋台骨を揺るがす危険性は少ない。だから、若干経験不足で不安が残る人材であっても、リーダーとして積極的に登用し、経営者としての自覚と経験を積ませることが大切である。[2006:110-111]

◆アメーバ経営の特長は、リーダーの意志に対して、現場が「打てば響く」ように即応することである。「これはいい」と思えばすぐに手を打つ。また考えてみて「これはダメだ。こうするべきだ」と思えば、部下に「すまん」と言って、すぐ直す。アメーバ経営には、すばらしいアイデアを思いつけば、すぐ実行して効果を出すことができるという利点がある。組織変更においては、「朝令暮改も必要である」という前提に立ち、ダイナミックな事業展開を心掛けるべきである。[2006:114-115]

◆各アメーバは、共通の経営理念のもと、ひとつの会社のなかで、ともに働く運命共同体の一員である。したがって、各アメーバリーダーは、自分の立場を明確に主張しながらも、エゴを捨て、会社全体の利益を考え、人間として正しい判断を下すことが求められる。そのうえで、各アメーバが全体との一体感を持ちながら、個々の採算を追求していかなければならない。/このように共有すべき普遍的なフィロソフィ、経営理念、価値観がその集団の根底に脈々と流れているからこそ、組織が細かく分かれていても、会社全体があたかもひとつの生命体であるかのように機能することができるのである。[2006:119]

◆社内ルールのあるべき姿については、次にあげる項目を参照してほしい。
会社としての基本的な考え方、価値観と合致する
…全社で共有すべき経営哲学や経営トップの方針を社内ルールに反映させることにより、事業を発展させていかなければならない。
経営の視点でとらえる
…「ビジネスの形態はどうなっているのか」「事業を発展させるために組織体制や組織の役割や責任はどうあるべきか」を理解し、これらの視点に適合した社内ルールを構築しなければならない。/そのためには、社内ルールをつくる際、ビジネスの形態や組織形態に従って、アメーバの実績(売上・総生産・経費・時間)をどうとらえるのかを具体的にシュミレーションしたうえで、ルールを構築することが大切である。
経営の実態をありのままに伝える
…物事の本質を見極めて、複雑な事象をシンプルにとらえ、誰が見ても経営の実態を正しくとらえられるように社内ルールをつくらなければならない。
一貫性がある
…ルールとは一貫した考え方によりつくられるべきものであり、個々のルールは一貫性が保たれているかどうかを検証したうえで構築されなければならない。
全社に公平である
…社内ルールは…会社全体として統一された考え方や基準をもとに設定されなければならない。また、アメーバ経営の前提のひとつである、全部門が平等な条件のもとで切磋琢磨し合うためにも、社内ルールは全部門に対して、つねに公平、公正であることが求められている。[2006:121-124]

◆売上が増えても、知恵を絞って努力をすれば、経費を増やさない、あるいは減らすことさえ可能である。あらゆる創意工夫によって売上を増やす一方で、つねに経費を徹底して切り詰めていくことが経営の原則である。[2006:130]

◆…アメーバ経営では、製品の市場価格がベースとなり、社内売買により市場価格が各アメーバに直接伝えられ、その社内売買価格をもとに生産活動がおこなわれている。さらに、製造のアメーバが独立したプロフィットセンターであるため、製品の売値で利益が出せるよう、アメーバが責任を持ってコストを引き下げようとする。つまり、与えられた標準価格で製品をつくることではなく、市場価格のもとに、自ら創意工夫をして、コストを引き下げ、自分の利益を少しでも多く生み出すことが製造部門のアメーバの使命なのである。/したがって、社員の大部分を占める製造部門が、自分のつくった製品の原価しか知らない一般の会社と、アメーバ経営を採用している会社では、従業員の採算意識に雲泥の差が生じる。/アメーバ経営の製造部門では、標準原価方式のように原価のみを追求するのではなく、…自らの創意工夫により製品の付加価値を生み出すことに主眼が置かれている。この点からも、アメーバ経営は、従来の管理会計の思想を根底から覆す、斬新な経営システムといえる。[2006:135-136]

◆現代の企業経営では、スピードが何よりも重視されており、時間効率をいかに高めていくかが競争に勝つための鍵となっている。アメーバ経営における時間当たり採算制度は、現場の指標に「時間」という概念を持ち込むことによって、従業員ひとりひとりに時間の大切さを自覚させ、仕事の生産性を向上させている。このことが、自部門の採算を向上させるだけにとどまらず、会社全体の生産性を高め、市場競争力を強化しているのである。[2006:152-153]

◆「一対一対応の原則」とは…モノやお金の動きを一対一対応で把握し、ガラス張りで管理することを意味する。モノが動けば必ず伝票が起票され、チェックされて伝票が同時に動く。…つまり、伝票だけが勝手に動いたり、モノだけが動いたりすることはありえない状態にすることである。…このように「一対一対応の原則」を厳守することは、経営数字を正しくとらえるための必須条件であるとともに、それは不正や間違いを未然に防いでくれる。[2006:157]

◆あらゆる業務において、「ダブルチェック」をおこなうことは、業務そのものの信頼性を高め、会社組織の健全性を維持するため、つねに厳守すべき原則である。[2006:158]

◆アメーバ経営では、ムダな経費をなくすことが強く求められている。そのためには、会社は筋肉質でなければならない…すなわち、利益を生まない在庫や設備といった余分な資産を一切持たないことである。…さらに、アメーバ経営では、原材料などの購入において「当座買いの原則」というルールを設けている。これは、「必要なものを、必要なときに、必要なだけ購入する」という考え方である。使う分だけを当座買いすると、いまあるものを大切に使うようになるため、ムダがないし、余分の「在庫」がないため、在庫を管理するための経費、場所や時間も必要なくなり、結果的には経済的である。/さらに、市場の変化が激しいため、在庫を持っていれば、商品仕様の変更によって、同じ部材を使えなくなるというリスクもある。だが、当座買いをおこなえば、このようなリスクを回避することができる。[2006:161]

◆企業は永続的に発展していかなければならない。従業員の物心両面の幸福を追求するためには、採算を向上させ、手元のキャッシュを増やし、財務体質を強化していくことが前提となる。採算向上は、会社の内部留保を増加し、自己資本比率を上げるとともに、将来に向けての新たな投資を可能とする。また、採算向上により業績を上げることで、株価を上昇させたり、高配当を実現したりすることで株主に報いることもできる。したがって採算向上は、会社を繁栄させていくための必要条件ということができる。/そのために実践すべき経営の原理原則は、実は非常にシンプルなものである。/「売上を最大に、経費を最小にする」ことに徹すればよい。[2006:162-163]

◆…経費を最小にしようとするなら、自部門のアメーバの経費がどのように発生しているのかをリーダーが的確につかまなければならない。そうしなければ、リーダーは採算向上のための具体的な対策を打つことはできない。…リーダーたるものは、さらに細かく経費項目を分析して…経費管理をおこなわなくてはならないのである。[2006:206]

◆従業員を率いて会社を経営していくためには、具体的な目標を設定する必要がある。売上、総生産、差引売上、時間当たりなどの経営目標が明らかになるよう、具体的な数字で目標を設定することが重要である。しかも、その目標は、会社全体の数字だけではなく、各アメーバ単位にまでブレークダウンされた詳細なものでなければならない。その理由は、共有化された明確な目標がなければ、従業員はそれぞれ勝手な方向に向かい、リーダーの指し示す方向にメンバーの力を結集することができず、組織としての目標を達成できないからである。[2006:213-214]

◆職場のなかで与えられた仕事を一生懸命おこなうことは大切なことである。しかし、自主性を重んじるアメーバ経営では、それだけで十分というわけにはいかない。毎日の仕事のなかで「いままでのやり方でいいのか」ということをつねに考え、よりよい方法を求めていくべきである。昨日よりは今日、今日よりは明日と、与えられた仕事に対し、改善、改良を続けることがアメーバ経営の基本である。…いつまでも現状にとらわれるのではなく、「つねに創造的な仕事をする」ことが、アメーバを成長させ、ひいては会社を発展させていく、最も基本的な行動指針である。[2006:236-238]

◆リーダーは、自らが正しい判断基準を身につけながら、その判断基準をメンバーとのあいだで共有できるようにすべきである。会議や現場など経営のあらゆる場面において、正しい判断の仕方や問題の解決方法をリーダーが指導、教育し、それを繰り返すことにより、メンバーとのあいだでフィロソフィーを共有化し、経営者としての意識を高めていくことが最も大切である。[2006:254]

■書評・紹介

■言及




*作成:片岡稔
UP:20131121 REV:20131209 1212
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