『持続可能な福祉社会――「もうひとつの日本」の構想』
広井 良典 20060710 『持続可能な福祉社会――「もうひとつの日本」の構想』,ちくま新書,269p.
■広井 良典 20060710 『持続可能な福祉社会――「もうひとつの日本」の構想』,ちくま新書,269p. 780+税 ISBN-10: 4480063110
ISBN-13: 978-4480063113 [amazon]
■内容(「BOOK」データベースより)
かつての日本社会には、終身雇用の会社と強固で安定した家族という「見えない社会保障」があり、それは限りない経済成長と不可分のものだった。経済成長という前提が崩れ、「定常型社会」となりつつある今、再分配のシステムである「福祉」を根底から考え直す必要がある。本書は、「人生前半の社会保障」という新たなコンセプトとともに社会保障・教育改革の具体的道筋を示し、環境制約との調和、コミュニティの再生を含みこんだ、「持続可能な福祉社会」像をトータルかつ大胆に提示する。
■著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
1961年岡山市生まれ。東京大学大学院修士課程修了後、厚生省勤務をへて、96年より千葉大学法経学部助教授、2003年より同教授。社会保障や環境、医療に関する政策研究から、時間、ケア等の主題をめぐる哲学的考察まで、幅広い活動を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
はじめに
プロローグ 「人生前半の社会保障」とは
これまでの日本の社会保障論議/「人生前半の社会保障」という新しい課題/若干の国際比較/「経済成長」との関わりとこれからの日本社会
第1章 ライフサイクル論
人間の三世代――人間は子どもの時期と高齢期が長い/老人の時間と子どもの時間/「後期高齢者」と「後期子ども」――「人間の三世代モデル」の現代的変容/高齢者と前期子ども・後期子どものコミュニケーション
第2章 社会保障論/雇用論
日本の社会保障の特徴――低い社会保障給付と「公共事業型社会保障」/公共事業型社会保障と「積極的雇用政策」/これからの方向――「医療・福祉重点型」の社会保障/社会保障をめぐる新しい課題――心理的ケアと社会保障/定常型社会と社会保障/政治哲学のあり方
第3章 教育論/「若者基礎年金」論
教育と社会保障/日本における教育論議の問題性/これからの方向――「後期子ども」への対応の社会化/政策対応のあり方――ライフサイクルの中での再配分/「若者基礎年金」の提案/相続税ないし相続という仕組みをどうとらえるか
第3章付論 年金論
年金改革を支える思想/「福祉国家/政治哲学」の三つのモデルと年金
第4章 福祉国家論/再分配論
ポスト福祉国家における「平等」の意味/分配と再分配――福祉国家・資本主義・社会主義と戦後日本/「土地所有」のあり方と資産の再分配/資産の再分配とこれからの社会システム
第5章 定常型社会論/資本主義論
「定常型社会」という発想/消費構造の変容と「市場経済を超える領域」の生成/人間のインセンティブとコミュニティ――「公―共―私」をめぐる構造変化/「働くこと」の意味の変容/ストックの分配/定常型社会における資本主義・社会主義・エコロジー
第6章 環境論/総合政策論
環境・福祉・経済/アジアにおける「持続可能な福祉社会」の可能性/社会保障財源としての環境税/政策統合ないし総合政策の必要性/まちづくり・都市政策との関連/「政策統合/総合政策」を通じて何を実現するのか
第6章付論 医療政策論
医療技術をどうとらえるか/複雑系としての病い/医療政策決定プロセスへの患者・市民参加/医療費の配分のあり方/ケアとしての医療の充実
第7章 コミュニティ論
日本社会における「関係性」の特質/「集団が内側に向かって閉じる」――"稲作の遺伝子"/「関係性の組みかえ」という課題/"スロー&オープン"と新しいコミュニティ/関係性の「ソフト」と「ハード」/「つながり」の二つのかたち/日本社会にとっての課題/コミュニティの中心にあるもの/「ケア」との関係/様々な試み/関係性の進化
エピローグ グローバル定常型社会へ
「定常性」をめぐる諸相/時間という座標軸
参考文献
あとがき
*作成:北村健太郎