HOME > BOOK >

『障害者自立支援法とケアの自律――パーソナルアシスタンスとダイレクトペイメント』

岡部 耕典 20060605 明石書店,161p. ASIN: 4750323551 2100


このHP経由で購入すると寄付されます

岡部 耕典 20060605 『障害者自立支援法とケアの自律――パーソナルアシスタンスとダイレクトペイメント』,明石書店,161p. ASIN: 4750323551 2100 [amazon][kinokuniya][kinokuniya] ※ d c04,

■内容(「MARC」データベースより)
自律/自立生活支援を、現在の障害福祉のオルタナティブとして、自律の力が弱いとされる障害者を含め利用可能にすることを、社会福祉基礎構造改革と福祉の利用制度化/給付制度化の延長化に展望することをめざす。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
岡部 耕典
1955年生まれ。1979年東京大学文学部社会学科卒業。2006年東京都立大学大学院社会科学研究科社会福祉学専攻博士課程修了。現在、リソースセンターいなっふ主宰。東京学芸大学教育学部・立教大学コミュニティ福祉学部非常勤講師。博士(社会福祉学)。障害をもつ子どもの父(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次

序章 障害福祉/運動 2003‐2005
第1部 障害者の自律/自立生活支援と福祉の保険化
 第1章 障害者の自律/自立生活支援
 第2章 障害福祉と社会福祉基礎構造改革
 第3章 障害福祉の保険化
第2部 障害福祉の利用制度化/給付制度化
 第4章 利用の原理と給付の基準をめぐる考察
 第5章 必要と割当の調整基準とメカニズム
 第6章 給付調整と受給支援)
第3部 パーソナルアシスタンスとダイレクトペイメント
 第7章 自律/自立生活支援とそのためのシステム
 第8章 自律/自立生活支援のシステムモデル
 第9章 障害福祉の給付制度の再編

■メモ

*序章と第一部を小林が、第二部を堀田が、担当。

序章 障害者福祉/運動 2003-2005

1 上限問題――補助金によるお政策誘導の行き詰まり

・ホームヘルプサービスの上限問題:厚労省が「ホームヘルプサービスの利用が予算を超過して伸びることを危惧」
→給付の間接的な抑制
〜「三位一体の改革」により、社会保険財源以外の制度は利用予測に応じて福祉予算をフレキシブルに組むことは困難→補助基準の設定(による国家負担抑制)
⇒「制度/政策によるコントロールvs.利用者ひとりひとりの必要の充足」あるいは「供給者主導vs.需要者主導」という政策側と利用者側の対立構造が顕在化=介護保険制度との統合問題や障害者自立支援法制定への反対運動として継続

2 支援費制度――障害福祉の利用制度化/給付制度化

・利用制度化:利用者の受給権と給付決定における行政裁量権との関係が実定法上で整理されていなかった=反射的な権利に留まり、「援護の実施者」である基礎自治体の裁量に委ねられる仕組み
・「義務的経費と裁量的経費」の問題〜居宅生活支援:補助金予算上限という実質的な「上限」⇔施設訓練支援費:上限なし
⇒利用者の個別の支給決定での逆転
・施設訓練支援費=施設数、定額×利用者数による上限〜予算化容易
・居宅生活支援=「サービス単価×必要とする利用時間」〜予算化困難
★「利用量の変動に対して制度的に利用実績に応じた財源調整と安定化のしくみ」がないという構造的欠陥

3 統合問題――障害福祉を保険化する政策動向
・介護保険制度との統合見送り:介護保険制度自体の財政問題浮上→経済界、利用者から疑問+市町村会の反対
「対等統合」→「介護保険の活用」→「被保険者の拡大」

4 障害者自立支援法の「グランドデザイン」
・利用量の増加→受給権の弱さは従来のまま、「給付管理(抑制)メカニズムの強化を前提として国庫負担の義務化をおこなうという方法論で解決がめざされる」

第I部 障害者の自律/自立生活支援と福祉の保険化

第1章 障害者の自律/自立生活支援

★「利用制度化/給付制度化をめぐる説明された理念と現実の制度のギャップが、支援費開始後のサービス利用の急拡大とそれが財源不足に直結する事態を招く。」

第2章 障害福祉と社会福祉基礎構造改革

・図と地の反転:福祉政策の文脈と財政政策の文脈
「分権化と利用者本位の実現のための福祉改革」という図
「財政改革と新たな政策誘導/財政コントロール手段の確保のための福祉改革」という地
★福祉サービスの利用制度化/給付制度化は、「供給者本位から利用者本位へ」と「補助金による政策誘導から補助金によらない政策誘導へ」の転換のためにも必要
★少子高齢化→高齢者医療費の増大問題の解決=「福祉の保険化」という戦略
・「まず、利用に応じた負担拡大のメカニズムを社会福祉の財政システムにもビルトインすることであるが、同時に、地方分権化により弱まっていく中央のコントロールと省益の確保を、税収不足と社会保障費の増大が同時進行に伴うことでの財務当局との軋轢を回避しつつ実現するための、福祉サービスの「自主財源の確保」があった。」

第3章 障害福祉の保険化

・「世代間調整・少子高齢化。医療との関係といった基礎的条件を必ずしも共有しない障害福祉の分野では、社会保険方式が内在する規範的制約は、障害福祉の積極的な再分配の逆機能となるのではないだろうか。」
・介護保険制度との統合=障害福祉の財源確保となるどころか、「消極的な再分配」の枠をはめるという結果
Cf 税財源=不負担と分配は基本的に切り離されている


■■ 第U部「障害福祉の利用制度化/給付制度化」
■ 第4章「利用の原理と給付の基準をめぐる考察」(62-74)
1 受給者本位

支援費制度と介護保険の特徴
@措置に基づくサービス決定の「利用制度化」(提供者側の措置 → 利用者の利用契約へ)
+A 現物支給のシステムの「給付制度化」(サービスの現物支給 → サービス購入費の個人給付へ)
※ @とAは、概念的にも理念的にも表裏の関係にある(契約を結び利用者が提供者にサービス対価を支払う+そのための費用の個人への給付)
にもかかわらず…… 実際には、「自業者本位から利用者本位へ」という標語の焦点は前者にしかなかった。
しかし…… 当然、「商品の選択権」だけが与えられても、その対価が支払えなくては購買契約は成立しない。
だから…… 利用者のイニシアティブを強化するためには、従来の「利用者本位」への視点に加えて「受給者本位」を強調する必要がある。

受給者本位を実現するためのポイント
@ サービスや給付は、「提供者の義務」というより「利用者側の権利」としたほうがよい。
A 利用者は援護の措置対象ではなく、サービス購入主体に転換されるべきであり、そのためには「給付をうける権利」が必要となる。

「要援護者にサービスを直接提供するという福祉サービスの公的責任(高澤2000: 153)が、サービスの利用者に給付を行う義務へと」転換されていることを確認するためにも、「給付をうける権利」が必要。
――「義務本位」から「権利本位」へ

2 必要と割当

割当論―― 「限られた資源を前提」とした、「社会サービスの配分」の適切な方法を指す → 「サービス割当に基づく需要抑制」、ニーズの放置に結びつく危険がある → 不当な側面と正当な側面を分析し、必要に応じて新たな資源の獲得を目指すべき。(03年1月の「上限問題」はこの需要抑制という「不当な側面」の顕在化。04年10月の「グランドデザイン案」は「正当な側面」を再構築しようとする試みと分析できる)

けれども……割当論に依拠する政策や制度は、ニーズ判断は、当事者が主張する「主観的な必要」を、専門家が「客観的に把握」し、官僚が社会構成員に代わって「承認」を与える、ということになる。(※ ちなみに66ページ三段落目下から5行目のBはAのミスプリ)
この割当の枠組みでは、既定の「予算の枠組み」に収まる基準が作られ、「必要」が承認されることになる。これは、割当の「不当な側面」だと言える。
したがって……措置制度では必要の判断主体とされなかった利用者をサービス利用の主体として制度の中心に据える「支援費制度」において、「予想を超える利用料の伸び」が起こったのは当然。→ しかし、「給付調整システム」がそのまま踏襲されたため「問題は拡大」し、「混迷は深まっていった」(67)。

3 選別の方法

※ 03から04年介護保険制度への支援費制度の統合のスローガン……「介護の制度の普遍化」
制度そのものと対象者の拡大(社会福祉制度の普遍化)
だが……「介護保険制度は普遍主義に基づく制度」か?「選別主義」ではないと言えるか?
普遍主義――受給者に資格や条件を付与しないサービス
選別主義――資格や条件による受給制限を設けるサービス
「ニードテストを伴うサービス/資力調査を伴うサービス」は選別の方法の違いにすぎず、「資力やニードに関わりなく特定のカテゴリーに該当するもの全員が受給できる場合」を普遍主義として分類するならば、
「介護保険制度」=要介護認定に基づくカテゴリー的な分類に基づく受給方式
「支援費」=個別的ニードを測定する方式
では……カテゴリー的分類と個別ニードを判定する方式のどちらが普遍的な選別方法か→ 結局、両者は受給資格の違いにすぎない。(※ ちなみに、69ページの平岡の「第二の定義」と「第三の定義」に関する三浦の指摘への言及は、その直後の議論と整合性がない)
むしろ……「受給資格を拡大しようとする」のが普遍主義で、「受給資格の範囲を限定しようとする」のが選別主義と言うべきである。とすればカテゴリー的分類であれ個別ニードであれ、そうした受給資格の用法に注意し、これを「拡大していくこと」が必要となる。
これを念頭に置けば……カテゴリー的分類の方が、支給量コントロールは容易であり、割当制度と親和性が高く選別基準の絶対化が起こりやすいと言うべきである。逆に支援費制度はニードを判定する選別者の恣意が入りやすい。
したがって……「普遍主義か選別主義かという問題」は状況依存的であり、理念実現手段の違いと考えた方がよい。介護保険制度が普遍主義的制度であるとは言えない。

4 必要に応じた/必要な者すべてに対する分配

結局……「必要にもとづく社会政策」は、必要の積極的選別を帰結する(した)。
それに対して……「必要に応じた分配のためには、必要な者すべてにサービスを届ける」ことを考えるべき(71) ※ だが、この「必要にもとづく」/「必要に応じた=必要な者すべてに」の区別の意味はよく分からない。
そして……「普遍主義」が「必要な者すべてに対する分配」に動機付けられたものならば、求められるのは「給付に対するアクセシビリティ」でなければならない。→ 「要介護認定」や「受給調整」といった選別の是非が問題になる。
ところで……普遍主義的分配の一つの方法として、「選別」そのものをなくした「出来高払い」(立岩)がありうる。
だが……実際の出来高払い制度は他律的システムのうえに成立している。
したがって……「可能な限り出来高払いに近づける」必要がある。つまり、「必要な者すべてに対する分配」を可能な限り行い、やむを得ない場合にのみ、最終手段として「給付調整」等を行う。上限をあらかじめ決めるのではなく、専門家が必要を判定するのでもなく、また、「給付に対する配慮を行わない「素朴な必要論」」の限界を越える視座が必要である(73)。
 ※ このあたり特に不明なことが多い。選別をやめるならBIでよいのではないか。それとも、障害者というカテゴリーは既定なのか。「素朴な必要論」に問題があるのは財源の上限か。でなければ、何が・なぜ問題なのか等々。

■第5章 必要と割当の調整基準とメカニズム(76-81)
1 サービス費用の供給における割当と必要

「必要な者すべてに対する分配」を可能なシステムの構想
従来は……措置制度(予算の執行と支給サービス量の決定は行政主体)
対して……サービス利用過程モデルでは、費用支出の承認主体は自治体/サービスの必要性の判断は利用者。
とはいえ……利用者の意思でサービス内容と量を決定することができるためには、支出の拡大が可能な財源が必要になる。
しかし……現状では、必要量に対して資源が不足している。
だからこそ……「財政→政策→必要」という方向性を持つ「割当」方式が採用されてきた。
だが……「必要→政策→財政」という図式を無視できないことは明らか。
したがって……「政策側」による割当方式か、「利用者」の必要に基づく方式かの二者択一を越えた「割当と必要の調整基準とメカニズム」による、ミクロな必要/マクロの財政を調整する制度が求められている。

2 ミクロのレベルでの基準とメカニズム

「必要の客観化及び受給の際の具体的な受給基準の明確化」が課題となる。主観的必要に配慮しつつ、それに対する給付・支出を正当化可能な普遍的な基準の問題
判定基準は、「受給者と支給者の間の「合理的な討論」のための論点整理として用いることができるもの」であるべき。そのためには、判定は「可能な限り、納得性のある主観的な希望や必要を説明する受給者側からのプランや資料によるプレゼンテーション」等による受給者も参画するプロセスが必要となる(79)。
→ 「判断能力が十分でない者」が存在するからのみならず、当事者個人と自治体とは非対称であるため、受給者の主体性を尊重するための支援(アドボカシー)機構も必要。

3 マクロなレベルでの基準とメカニズム

必要量の調査と計画に基づく予算化――利用総量の変動可能性に対応した調整メカニズム

■第6章 給付調整と受給支援
1 利用制度化/給付制度化された福祉における給付調整
エンタイトルメント制度と裁量(ディスクリージョン)制度

▲ 「必要と割当の調整基準とメカニズム」は、マクロ財源システム/ミクロ給付調整システムに組み込まれている → 介護保険制度と支援費制度の分析
三つの給付決定制度
@エンタイトルメント制度――資格基準に合致する場合には、実施機関の裁量を入れず給付する
A裁量制度――資格基準を明文化せず、個別ケースに対するサービス提供を実施機関が判断する
Bキャップ制度――供給の増加に上限を求める制度
介護保険制度は@であり、支援費制度は@に近いが実質はB(純粋にBをとる制度は日本にはない)。
支援費制度は、理念上は@だが制度設計および運用はBである。介護保険では、要介護認定という@が給付削減手段としても使われており、客観化しにくい必要を利用者自身が訴えることは困難。

介護保険制度における給付調整
ミクロレベル 数値化された要介護度を医師中心の第三者が合議で修正する制度(受給量上限の設定)
利用料の一割を応益負担させる(利用=給付抑制メカニズム)
総じて割当側のコントロールが効きやすい――支出抑制型
マクロレベル 利用増減に連動した義務的な負担調整

支援費制度における給付調整
ミクロレベル 利用者が受給したいサービス費用申請を行う(認定がないので上限もない)
8項目の勘案事項と資源の有無、生活状況の必要度の総合的検討による判定
利用者負担は所得に応じた「応能負担」(利用抑制はかかりにくい)
マクロレベル 予算は単年度の予算に拘束される一般財源に基づく

第三者判定モデルと交渉決定モデル
受給調整基準 @受給資格の客観的判定「第三者判定モデル」(介護保険)=対象が潜在的に膨大と予測され、財源確保が先立つ。ケアマネジメントによる補完。
A受給者が必要を訴える「交渉決定モデル」(支援費)=自己決定自己選択の尊重。だが、給付過程は従来どおり(財政規模は10分の1程度)で、利用過程だけが契約となった。ニーズが多様でありケアマネジメントは制度化不可能とされた。

2 利用制度化/給付制度化された福祉における受給支援
受給支援
必要を表出すること、自己決定への支援と、把握された必要を給付に結びつける受給支援の必要性。

ケアマネジメント
介護保険の「保険型ケアマネジメント」は上限が決まったまね締めとであり、限定されたサービス資源の効率的に配分するケアプラン作成となってしまう。→ 支援費制度までの障害福祉サービスでのマネジメントのあり方をめぐる三つの議論
@ 「保険型ケアマネジメント」
A 「本人中心のケアマネジメント」――本院の希望や目標に基づき、資源獲得を目指す交渉決定型
B 「セルフケアマネジメント」――サービスプラン作成・サービス調整を本人が行う。

割当方式とセットになっている@では、客観化されにくい必要が排除される。@の対極のBは客観化のメカニズムが乏しく、利用者個人の交渉力が内容を左右する。両者の限界を補うのがA。「本人が選んだケアマネージャーが、利用者自身の夢や希望に沿って立てる本人中心の計画」であり、施設等のプランで「利用者の希望とは異なる部分を訂正させる手段」(94)にもなりうる。

本人中心のプラン
発達障害者のための「本人自立生活支援計画」――「本人と家族」を中心とする取り組み。「人が達成しうる機能の組み合わせ」(ケイパビリティ)を、満たされるべき「必要」として福祉の対象にする。
「利用者におけるありのままの(選択された)生活のなかから必要を汲み取ろうとするアプローチ」(96)

アドボカシー
明確化も承認もされていない必要を、給付されるべき権利として実現・獲得するためのプロセス。

※「家族」は支援者として他の人と同等の「雇用対象」(ヘルパー)にならないのか。家族の介助や支援は無償か。本人のニーズが家族の介助であり、家族にそのつもりがない場合はどうか。ケアマネージャー(代理決定・決定支援者)から家族は外されるべきではないか。ダイレクトペイメントの対象はあくまで個人である。

■紹介・言及

岡部 耕典 2006/08/11 「書籍紹介:『障害者自立支援法とケアの自律――ダイレクトペイメントとパーソナルアシスタンス』」
 『われら自身の声』22-2:33
◆立岩 真也 2006/10/25 「「社会人(院生)」の本・1」(医療と社会ブックガイド・64)
 『看護教育』47-09(2006-10):900-901(医学書院)[了:20060830]
◆立岩 真也 2007/03/25 「ALSの本・6」(医療と社会ブックガイド・69)
 『看護教育』48-03(2007-03):-(医学書院)[了:20070205]


*作成:小林勇人*/堀田義太郎
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/g/kh01.htm
UP:2006 REV:20060905,20 20070214,0307,09 20090703
「障害者自立支援法」2006   ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
TOP HOME (http://www.arsvi.com)