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『遺伝子「不平等」社会――人間の本性とはなにか』

池田 清彦 編 20060526 岩波書店,240p. ISBN:4-00-005052-4 C0045 2205


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池田 清彦 編 20060526 『遺伝子「不平等」社会――人間の本性とはなにか』,岩波書店,240p. ISBN:4-00-005052-4 C0045 2205 [kinokuniya][amazon] ※,

*以下、岩波書店のホームページより
 http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/00/4/0050520.html

■ 著者からのメッセージ

 少し前までは,ヒトの能力や性格は小さい時の教育や訓練や習慣のたまものだ,との話が結構,流行っていたように思う.子どもはみんなキラキラした才能を持っているはずなのに,それを引き出せずにダメな人間に育ったのは,親や教師のしつけや教育が悪かったせいだ,というわけだ.自分の子どもに最高の教育環境を与えてやれば,もしかしたら天才に育つのかもしれないと,淡い期待を抱いている親もいるに違いない.
 その同じ親が,心のどこかで,やっぱり才能は遺伝じゃなかろうか,と秘かに思っていることも,たぶん本当だろう.何と言っても周りを見れば,一流大学出の親の子は一流大学に入っている確率が高いように見えるし,プロのスポーツ選手の子は,同じスポーツが得意な子が多いように見えるものね.
 遺伝的な要因と発育途上の環境的要因が,ヒトの能力や行動や性格にどの程度あるいはどのように影響するかは,どこまでわかっているのだろうか.巷ではIQ(知能指数)は50%遺伝子によって決まっているといわれているけれども,それってどういう意味なのか.個々人によって少しずつ異なるIQ遺伝子といったものがあるのだろうか.それとも全然違う話なのか.
 男と女は基本的には遺伝的に決まっているのはだれでも知っているけれども,体は男なのに頭の中は女,あるいは体は女なのに頭の中は男というヒトもまれにいて,性同一性障害なんて名称がついているけれども,いったいどういう理由でこういうことが起こるのか.遺伝が重要なのか環境が重要なのか.
 あるいは,殺人を繰り返したり,幼児レイプを繰り返したりするサイコパス(精神異常者,現在では「反社会性人格障害(APD)」と呼ばれている)が時々出現して,矯正するのが困難なことが知られているが,サイコパスはどういう原因で生じるのか.それがわかれば,社会はサイコパスの出現を抑止する方途を探れるのだろうか.それともそれは不可能なのか.そうかと思えば,レイプは男の本性だなんて主張する人もいるが,この場合の本性というのはいったいどういう意味だろう.あれやこれや,氏と育ちに関しては,何となくわかっているようで,よくわかっていないことが沢山ある.
 科学はいずれこれらのすべてを明解に説明することができるようになるのだろうか.私見では近未来にすべて明らかになることはないだろうが,それでも徐々に解明される部分は増えてくるはずだ.遺伝子を調べれば,遺伝病の因子を有しているかどうかわかるだろうし(今でもかなりわかる),さらには社会的に不適応を起こしやすい素質を持っているかどうかですら,わかるようになるかもしれない.わかったからといって,はたしてその後どうすればいいのか.
 本書では,これらもろもろの,人間の本性に関する氏と育ちについての少々ややこしい問題と,そこから派生するさらにややこしい社会問題について,はじめに私の意見を述べ,それをたたき台にして,小川眞里子,正高信男,計見一雄,立岩真也,の四氏と意見を交換したいと思う.
(「はじめに」より)

■ 編集者からのメッセージ

 ヒトは,進化心理学者のいうように遺伝子で「こころ」すら決められ,もともと不平等に生まれついているのでしょうか.学校教育には限界があるのでしょうか.子どものためにその遺伝子を改造することは許されるのでしょうか.いったい遺伝子情報の権利は誰のものでしょうか,本人のものでしょうか,研究者のものでしょうか,人類全体のものでしょうか……反遺伝子決定論の立場から,生物学的なシステム論を提示して,ネオダーウィニズムに論戦を仕掛けてきた池田氏が,先端科学の成果を受けて,それぞれの根幹的なテーマにおいて最前線で研究・発言している第一人者たちと徹底的な論議を行い,いまなにが問題としてあり,どう考えればいいのか浮き彫りにしてゆきます.

■ 著者紹介

池田 清彦(いけだ きよひこ)
早稲田大学国際教養学部教授.東京都立大学大学院博士課程修了.山梨大学教授を経て現職.
著書に『環境問題のウソ』(ちくまプリマー新書),『生命』(岩波書店),『遺伝子改造社会 あなたはどうする』(洋泉社),『さよならダーウィニズム』(講談社),『生命の形式』(哲学書房)等多数.訳書にディヴィッド・S・ムーア『遺伝子神話の崩壊』(徳間書店)等多数.

小川 眞里子(おがわ まりこ)
三重大学人文学部文化学科教授.主として19世紀の生物学史,科学とジェンダー,イギリスの衛生政策を研究テーマにしている.著書に『フェミニズムと科学/技術』『甦るダーウィン』(以上岩波書店)等.

正高 信男(まさたか のぶお)
京都大学霊長類研究所教授.ヒトを含めた霊長類のコミュニケーション,子どもの発達などを研究のテーマとしている.著書に『ケータイを持ったサル』『〇歳児がことばを獲得するとき』(以上中公新書)『天才はなぜ生まれるか』(ちくま新書)『いじめを許す心理』(岩波書店)等多数.

計見 一雄(けんみ かずお)
元千葉県精神科医療センター長.精神医学に「精神科救急医療」の領域を開いて実践し,一貫して精神医療の現場に携わっている.著書に『脳と人間』(三五館)『統合失調症あるいは精神分裂病』(講談社)訳書に『肉中の哲学』(G・レイコフ/M・ジョンソン,哲学書房)等.

立岩 真也(たていわ しんや)
立命館大学大学院先端総合学術研究科教授.社会学を専攻.著書に『私的所有論』(勁草書房)『弱くある自由へ―自己決定・介護・生死の技術』(青土社)『自由の平等―簡単で別な姿の世界』(岩波書店)『ALS―不動の身体と息する機械』(医学書院)等多数.

■ 目次

1 男と女の狭間
男と女の狭間◆池田清彦
  性アイデンティティをめぐって◆小川眞里子
  対談 男と女の狭間◆小川眞里子vs池田清彦

2 教育のパラドックス
教育のパラドックス◆池田清彦
  「ハズれ」を敬う教育◆正高信男
  対談 教育のパラドックス◆正高信男vs池田清彦

3 心の在り処
心の在り処◆池田清彦
  二分法の呪縛◆計見一雄
  対談 心の在り処◆計見一雄vs池田清彦

4 「いのち」を誰が決めるのか
 「いのち」を誰が決めるのか◆池田清彦
  自由は優生を支持しないと思う◆立岩真也
  対談 「いのち」を誰が決めるのか◆立岩真也vs池田清彦


■自由は優生を支持しないと思う 立岩真也

□どこを見るか・変えるか
 以下、「優生学」――「学」を付けるのがよいか迷う――について、とくに「積極的(ポジティブ)優生学」に関することを、より詳しくは別のところに書いたことが多いが、いくつか記す★01。  まず、それがどんな構造のもとに置かれているのかを確認しよう。以下のような具合になっている。…
□自分で決めていない
□「親」の優先とその限界
□専制・全体主義の可能性について □多様性と画一性について


■対談 「いのち」を誰が決めるのか 立岩真也vs池田清彦

□自己決定とはなにか
□誰が決められるのか
□「いのち」に所有権はあるか
□なにが基準になっているか
□「いのち」の不平等はなくせるか

■言及

◆立岩 真也 2013/05/20 『私的所有論 第2版』,生活書院・文庫版,973p. ISBN-10: 4865000062 ISBN-13: 978-4865000061 1800+ [amazon][kinokuniya] ※

◆立岩 真也 2008 『唯の生』,筑摩書房 文献表

◆立岩 真也 2006/08/25 「分担執筆及び単著の本」(医療と社会ブックガイド・63),『看護教育』47-08(2006-08):-(医学書院)[了:200606]


UP:20060530 REV:0614, 0702, 20151227
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