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『心を病む人と生きる家族』

古川 奈都子 編 20060520 ぶどう社 126p.


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■古川 奈都子 著 20060520 『心を病む人と生きる家族』,ぶどう社, 126p. ISBN-10: 4892401838 ISBN-13: 978-4892401831 1365 [amazon][kinokuniya]
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■内容(「MARC」データベースより)
妻が、兄弟が、わが子が精神障害者-。日ごろ、そうした病気を持つ身内の人と関わっている家族の思いを体験記としてまとめた一冊。家族の思いを知ることで、精神障害者の本人との溝の部分が何なのかに気づかせてくれる本。

■著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
古川 奈都子[フルカワナツコ]
高校2年生のときに統合失調症を発病。その後、結婚、出産。各地での講演や執筆活動を続けている。鳥取県で活動している精神病当事者の自助グループ、「柊の会」代表
(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次

1章 結婚して
 愛し合う喜び、伝え合う大切さ
 病気と付き合う妻、妻と付き合う私

2章 きょうだいとして
 長い時を経て、妹が手に入れたもの
 弟が、太平洋をとびこえてきた!
 きょうだいの私にできることは……

3章 わが子と共に
 思春期に発病した娘と共に
 息子は今、長いトンネルから抜け出た
 息子と歩んだ、二〇年の道のり
 対話と信頼を深めた、親子の貴重な体験

4章 親なきあとへの思い
 五〇歳になった息子の将来へのつながりを
 家を出てグループホームで暮らす息子
 親なきあとを思い、子を信じて子離れを
 家族会に出会って、私は変われた
 精神障害を隠さず、胸を張って生きられる社会に

5章 家族と私
 当事者と付き合う難しさに耐えて
 私は生まれたときから、母が好きだった
 私は家族のことを、狼のように憎んで泣いていた
 家族の粘り強い働きかけが、私の心に届いた
 私は誰のことも愛せなかった
 自分を満たすためでなく、人の支えになるために生きたい

■感想 K(立命館大学大学院社会学研究科)

 この本は精神障害者である古川奈都子氏が、精神障害者家族から寄せられたコメントをまとめたものである。
 精神障害者のことを語るとき、必ずと言ってよいほど家族のことも同時に語られる。精神病の病因はいまだはっきりとしない部分が多いが、古くから親からの遺伝と言われたり、母親の関わり方が原因ではないか、などと言われてきた。精神障害者本人と一緒に家族までもが、社会からレッテルを貼られ社会の中での生きづらさを感じ、ひっそりと暮らしてきたのであった。しかし現在では、そうした誤解は解かれつつあり、「精神障害者家族もサポートが必要な人たちである」との認識が広まりつつある。今まで家族は障害者をサポートする側としてしか見られず、そのために家族自身の生活や人権にまで目が向かなかった。今ようやく、家族自身の気持ちやQOLにスポットが当てられるようになった。それも家族自身が強く社会に向けて様々な活動をしてきたからである。このような本で家 族の暮らしぶりや思いをつづることもその活動の一つといえる。
 家族は精神障害者と共に生活する中で、精神的な疲れや苦労を感じて元気をなくしている場合が多い。家族自身がウツになることもある。そんな家族が"元気になる"場所として、家族会がある。家族会では、精神病についての適切な知識、情報を得られたり、同じような悩みを持っている人に相談することができる。この本にコメントを寄せている家族は皆それぞれに家族会に入会している。多くの家族は、家族会に入会するまで病気のことについての知識もなく、しかし誰にも相談することができない。その間にも患者の症状は悪化していく。そんな生活を続けて疲弊し、不安な毎日を送っていたと言う。これはこの本の中でも多くの家族が共通して抱えていた問題である。家族にはそれぞれに異なった悩みがある。症状や家族の状態に違いがあるからである。しかし、障害者とのコミュニケー ション方法がわからなかったり、服薬継続に関することや将来の親亡き後の障害者本人の生活がどうなっていくのかなどといった悩みは多くの家族に共通している。
 しかし今、こうして家族が過去から現在もまだ続いている、精神障害者と暮らす大変苦しい生活のことを淡々と語ることができるのは、家族自身が障害を受容できているからではないだろうか。一般的にも精神病と聞くとまだまだ偏見の強い病気である。その病気に自分の子どもや親やきょうだいがかかっているなんて、初めは信じられないという気持ちが強い。受診して診断名が明らかになった時の気持ちを、「晴天の霹靂」「呆然」「なぜ?」「頭が真っ白」などと表現していることから家族の複雑な心情が見てとれると思う。しかし、一人ずつの文章を読んでいくと、感謝の言葉がいくつも書かれているのである。「身内が病気になってくれて感謝」「身内の病気を支えてくれた人に感謝」と。何気ない普通のできごとを嬉しく思い、喜びを感じて、それまでの苦難を乗り越えていく。障害 受容までのプロセスには段階があるが、家族はゆっくりゆっくりそれを乗り越えていく。"元気になる"のである。
私は個人的に、ある家族会の様子を見学したりして家族の方とお話する機会が多いが、私が出会った精神障害者家族はみんなとても明るく、笑顔が絶えず、周りを楽しませてくれる。笑顔で過去の辛かったことや悲しかったことを話してくれる。家族の力とはなんて強いものなのだろう。この本では短い文章でまとめられているが、その一言一言に重みを感じずにはいられない。

■引用

■書評・紹介

■言及


UP:20070731 REV:20080624
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