『再分配とデモクラシーの政治経済学』
薮下 史郎 (監修)・須賀 晃一・若田部 昌澄 (著) 20060323 東洋経済新報社,280p.
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■薮下 史郎 (監修)・須賀 晃一・若田部 昌澄 (著) 20060323 『再分配とデモクラシーの政治経済学』,東洋経済新報社,280p. ISBN-10:4492313613 ISBN-13:978-4492313619 \3780 [amazon]/[kinokuniya] ※
■内容
商品の説明
再分配とデモクラシーの政治経済学
デモクラシーという政治体制は、国民が望ましいと思う再分配を実現しているのか。早稲田大学が2005年3月に実施したジョン・ローマー・米イェール大学政治学部教授の講義を基に、政治学、経済学から分析する。
ローマー教授は、市場経済において、所得不平等をもたらす原因として、職業などの選好、遺産、教育投資、生まれ持った能力などの資源、運を挙げる。幾つかの国で、親の教育水準が所得分配に及ぼす影響を比較したうえで、利益集団間で発生する政治的な競争が教育政策に及ぼす影響を理論的に分析。すべての子供に平等な教育投資を行うような政策は実現しないことから、デモクラシーは平等な所得分配をもたらすものではないと結論づける。
歴史的に、政府は最低所得を保障する法律を定めたり、累進課税を適用するなどして、貧困に対応し、再分配の不公平性を解消しようとしてきた。一方で、こうした制度は個人の労働意欲などをそぎ、効率性を損なっているとの批判もある。「どんな所得分配が望ましいか」「公平と効率はどのようなトレードオフ関係にあるべきか」といった問題は、価値・規範に関係する。本書は社会契約に基づく国家の形成・役割、政治・経済哲学思想などにも触れながら、この問題を考察している。
(日経ビジネス 2006/05/15 Copyrightc2001 日経BP企画..All rights reserved.)
内容(「BOOK」データベースより)
本書は、イェール大学ジョン・E・ローマー教授による連続講義および講演をもとに、「社会契約と国家」「再分配をめぐる政治経済哲学」についての議論を整理し、発展させようとするものである。第1部は、本書で考察する課題の展望と歴史である。第2部では、社会契約に基づく国家の形成とその役割について、政治学と経済学のそれぞれの観点から考察し分析している。第3部は、現代政治哲学で重要な位置を占めるロールズ、ドゥウォーキンらの再分配をめぐる規範理論、またそれに対するローマーによる経済学からの批判を中心に、再分配の基準に関する経済哲学と政治哲学の論文からなり、それぞれの考え方のどこが違うのかが明らかにされる。第4部では、不平等な所得分配をもたらす原因と、政治的競争が教育政策に与える影響について分析し、デモクラシーは必ずしも平等な所得分配をもたらさないと結論付けている。
内容(「MARC」データベースより)
政治学・経済学において「平等」はどう論じられてきたか。イェール大学ジョン・E.ローマー教授による連続講義及び講演をもとに、「社会契約と国家」「再分配をめぐる政治経済哲学」についての議論を整理し、発展させる試み。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
薮下 史郎
1943年生まれ。イェール大学大学院博士課程修了。Ph.D.(経済学)。東京都立大学・横浜国立大学の助教授・教授等を経て、早稲田大学政治経済学術院教授
須賀 晃一
1954年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修了。亜細亜大学経済学部専任講師・助教授、福岡大学経済学部助教授・教授等を経て、早稲田大学政治経済学術院教授。経済学博士
若田部 昌澄
1965年生まれ。トロント大学大学院経済学研究科修了。早稲田大学政治経済学部助手等を経て、早稲田大学政治経済学術院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
■目次
はしがき
第T部 展望と歴史
第1章 制度・経済発展・分配の政治経済学的アプローチ
1 はじめに
2 政治経済制度と経済政策
3 早稲田大学21COE-GLOPEと本書の構成
第2章 経済学は再分配とデモクラシーをどう論じてきたか:歴史的展望
1 序論
2 デモクラシーの到来と経済学:J.S.ミルの場合
3 福祉国家への道と経済学
4 結語
第U部 社会契約と国家
第3章 秩序形成の原理としての社会契約
1 近代主権国家と社会契約
2 2種類の秩序の形成と社会契約
3 古代政治哲学における人間の不平等論的前提
4 近代政治哲学における人間の平等論的前提
5 平等についての若干の考察
6 結論にかえて
第4章 自然状態と私的所有権システムの生成
1 はじめに
2 自然状態のモデル
3 自然状態の動学的性質
4 私的所有権システム
5 システム設立ゲームの非協力解
6 システムの比較
7 結論
第V部 再分配の理論
第5章 J・E・ローマーの政治経済哲学:不遍性・優先性・連帯性
1 はじめに
2 ローマーの基本的な立場:その1
3 ローマーの基本的な立場:その2
4 ハーサニィの無知のヴェール・モデルとその修正
5 無知のヴェールは反優先主義か
6 不偏性・優先性・連帯性を満たす配分ルール
7 ローマー理論の検討
8 結語
第6章 分配的正義の経済哲学:厚生主義から非厚生主義へ
1 イントロダクション
2 厚生主義アプローチの何が問題か
3 非厚生主義分配的正義論へのメカニズム・デザイン的アプローチ
4 非厚生主義分配的正義論への社会厚生関数アプローチ
5 結びにかえて
第7章 分配的正義の政治哲学
1 「分配的正義」の観念
2 ロールズの平等主義的・分配的正義
3 「何の平等か」論争とローマー
4 ローマーの理論をめぐる若干の考察
第8章 資源制約の下での世代間倫理
1 はじめに
2 資源制約の倫理的重要性
3 世代間効用流列に関する社会的選好
4 倫理的なジレンマに対する解決
5 結論的覚書
第W部 再分配とデモクラシー
第9章 平等は望めるか、デモクラシーは平等を実現できるか
1 所得の不平等の原因と機会の平等
2 デモクラシーにおける政治競争の概念化
3 教育財源政策におけるデモクラシー的競争
4 結語
事項索引
人名索引
執筆者・翻訳者紹介
■引用
■書評・紹介
■言及
*作成:樋口 也寸志