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『「現場からの治療論」という物語――古稀記念』

神田橋 條治 20060327 岩崎学術出版社,116p.

last update:20110301

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神田橋 條治 20060327 『「現場からの治療論」という物語――古稀記念』,岩崎学術出版社,116p. ISBN-10:4753306011 ISBN-13: 978-4753306015 \1575 [amazon][kinokuniya] ※ d/m.

■内容

治療一筋の人生を生きたおじいさんの頭に浮かんだり消えたりした空想群で編んだ、若い治療者へ向けた物語。「いのちの物語」「病」「ファントム界」「病む側の視点からの治療」「ファントムの登場」など9章で構成。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
神田橋 條治
1937年鹿児島県加治木町に生まれる。1961年九州大学医学部卒業。1971~72年モーズレー病院ならびにタビストックに留学。1962~84年九州大学医学部精神神経科、精神分析療法専攻。現在、鹿児島市伊敷病院(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次

第1章 いのちの物語
第2章 病
第3章 ファントム界
第4章 病む側の視点からの治療
第5章 ファントムの登場
第6章 治療する側の視点からの治療
第7章 治療的介入という異物
第8章 からだPへの治療的介入
第9章 研究


■引用

まえがき
真偽は定かでありませんが、血清総コレステロールの正常値上限が、220mg/dlから240mg/dlに改定されたとたん、抗コレステロール製剤を主力商品としている製薬会社の株値が下がったという噂をききました。この噂を信じたくなるほど、今曰の医療は酷い状況になっています。
 昔、「病を治すのではなく、病人を治す」と教えられた時代がありました。いまは病どころか、症状を消す医療、さらには検査値を治療したり、水銀柱の高さを正常化したりする医療が、はびこるようになりました。
 確かさを希求するあまり、主観を排除し、客観性と数値と統計を重視した結果、「医学栄えて、医療亡ぶ」流れが加速しています。それは「知識栄えて、知恵亡ぶ」、「権威栄えて、職人亡ぶ」という社会全体の流れの一部であるのかもしれません。
 無機質化された医療からの客離れが起こっています。処方された薬を、きちんと服用する患者は少なくなりました。代替医療の興隆も正規医療からの客離れ現象の一端です。
 典型的には、医療者自身が客(患者)になったときの動きにあらわれます。彼(彼女)の中で、現代医療への不信と不安が噴出し、うろたえます。客観化された「正しい」医療に、身をゆだねる<1<ことができません。内幕を知る者として、当然の反応なのです。患者となった者が身をゆだねることができるのは、すぐれた職人芸と人情とをもつ、個人としての医療者の主観的判断、つまり勘と、心身状況への患者自らの主観的な感覚なのです。   
 いまいちど治療者の内側に、人情と主観を大切にする職人を育成したいものです。客の主観を無視せず、客も参加できる医療を復活したいものです。(pp1-2)
                     

■書評・紹介

■言及



*作成:三野 宏治
UP: 20110301 REV:
精神障害/精神医療  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
 
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