『医療戦略の本質――価値を向上させる競争』
Porter, Micheal E.; Teisberg, Elizabeth Olmstead 2006 Redefining Health Care,Harvard Business Press
=20090615 山本 雄士 訳,日経BP社,640p.
last update:20111121
■Porter, Micheal E.; Teisberg, Elizabeth Olmstead 2006 Redefining Health Care,Harvard Business Press
=20090615 山本 雄士 訳 『医療戦略の本質――価値を向上させる競争』,日経BP社,640p. ISBN-10:4822261204 ISBN-13:978-4822261207 \2940 [amazon]/[kinokuniya] ※ ms c04
■内容
内容紹介
大金持ちは世界最高水準の治療を受けられても、国民の7人に1人は無保険者で、国全体では先進国中で最低と評価される米国の医療システム。日本では大野病院事件で医療崩壊や医師不足がクローズアップされたが、「地域に産婦人科医がいない!」事態は米国では20年前に起こっている。レーガン、ブッシュ親子、クリントンなどの歴代政権も医療改革を試みたが、ほとんど成功することなく終わっている。「株式会社の病院は、非営利病院に比べて、医療のレベルが低い上にコストは高い」という学者の分析リポートも報告されている。
著者は、アメリカの医療改革が失敗ばかりなのは、医療費をゼロサムゲームにしたまま市場の競争を持ち込んだのが主な原因だと指摘する。これが優れた医療を提供する医師や病院が評価されるシステムを作れず、コスト削減競争だけを促したため、必要な医療も受けられない患者が急増し混乱に拍車をかけた。
医療に競争はなじまないという印象を持っている人は多い。しかし著者は、多くの国民が必要な医療を受けられる社会としての公平性と、優れた医療を提供するために医療従事者が努力して切磋琢磨することは矛盾しないと考える。レベルの高い医療を患者に提供した医療従事者が正当に評価され、国民に適切な情報が伝わるポジティブサムゲームにやり方を改めれば、最もコストパフォーマンスの高い医療が実現できると考えている。本書では、現状分析にとどまらず、ポジティブな競争を実現するために医師、コメディカル、病院、政府、保険会社などがなすべきことも提案している。医療改革の新しい指針となることを意図した画期的な提言の書である。
レビュー
本書へのメッセージより
競争戦略の泰斗、ポーター氏による医療政策のバイブル。米国の医療が失敗した理由を分析し、再生への道筋を示した本書は、医療ビジネスの真の在り方をわれわれに教えてくれる。医療・介護にかかわるビジネスマン、行政官、研究者、すべての方に読んでいただきたい。――セコム最高顧問 飯田 亮氏
レビュー
本書「日本語版への推薦文」より
本書は医療システムの基本構造と、そのあり方、具体的な設計方法に関する実践的かつ包括的な教科書である。ポーター教授の提言は、わが国でこそ有効に活用されると考えられる。いずれにしても混迷を深めるわが国の医療界に、本書は重要な指針を与えるであろう」 ――東京大学大学院医学系研究科循環器内科教授 永井 良三氏
著者について
Michael E.Porter (マイケル・E・ポーター)
ハーバード大学ビショップ・ウィリアム・ローレンス教授。ハーバード・ビジネス・スクールに所属。企業戦略や国際競争など、競争戦略に関する研究の第一人者。代表的な著書に、『競争の戦略』(1980年)、『競争優位の戦略』(1985年)、『国の競争優位』(1990年)、『競争戦略論1・2』(1999年、いずれもダイヤモンド社刊)などがある。
Elizabeth O.Teisberg (エリザベス・オルムステッド・テイスバーグ)
ヴァージニア大学ダーデン・ビジネス・スクール准教授。戦略とイノベーションに関する研究のエキスパート。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ポーター,マイケル・E.
ハーバード大学ビショップ・ウィリアム・ローレンス教授。ハーバード・ビジネス・スクールに所属。企業戦略や国際競争など、競争戦略に関する研究の第一人者
テイスバーグ,エリザベス・オルムステッド
ヴァージニア大学ダーデン・ビジネス・スクール准教授。戦略とイノベーションに関する研究のエキスパート
山本 雄士
1974年札幌市生まれ。東京大学医学部を卒業後、同附属病院等で循環器内科に従事。2007年にハーバード・ビジネス・スクール修了(MBA)。現在、(独)科学技術振興機構研究開発戦略センターフェロー。慶應義塾大学クリニカルリサーチセンター客員准教授。(株)キャピタルメディカメディカルアドバイザー。ヘルスケア・コミッティー(株)最高医療責任者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
■目次
まえがき
日本語版への推薦
序章
競争の機能不全
医療の価値に基づく競争
診療の実績に基づく競争
本書の構成
医療をどう再生するか
第一章 医療の問題点を俯瞰する
第二章 根本的な原因は何か
医療の価値に基づく生産的競争
医療におけるゼロ・サム競争
根本的な原因:誤ったレベルでの競争
医療における競争のレベルが間違っているのはなぜか
第三章 改革はなぜ失敗したのか
団体医療保険の台頭
医師や病院への支払いの制限
マネイジド・ケア
医療版の軍拡競争
クリントン・プラン
患者の権利
消費者主導の医療
医療の質と治療成績に基づく支払い
単一支払者によるシステム
医療(健康)向け貯蓄口座
改革にならない改革
唯一の回答:競争の改革
第四章 医療の価値を向上させる原則
コストだけでなく価値にも着目する
診療実績に基づいて競争する
病態を軸とし、ケア・サイクル全体で競争する
質の高い医療は低コストである
医療提供者の診療経験、診療規模、学習が価値を高める
地方全域、国全体で競争する
診療実績に関する情報を広く提供する
医療の価値を高めるイノベーションに手厚く報いる
医療の価値を向上させる競争が持つ可能性
第五章 医療提供者の取るべき戦略
医療提供における戦略の不在
適切な目標設定:患者にとっての医療価値を高める
医療の価値を向上させる競争への移行:医療提供者が果たすべき責務
医療提供産業の構造はどう変化するのか?
転換を実現する
医療の価値を向上させる競争に向けて障壁を乗り越える
早期に行動を起こすことのメリット
第六章 保険者の取るべき戦略
保険者の役割:過去と未来
医療の価値を向上させる競争への移行:保険者が果たすべき責務
保険者の役割転換に向けて障壁を乗り越える
早期に行動を起こすことのメリット
第七章 医療関連メーカー、消費者、雇用主の取るべき戦略
医療関連メーカーの取るべき戦略
医療加入者や患者など、消費者の取るべき戦略
雇用主の取るべき戦略
第八章 医療政策と医療の価値を向上させる競争 政府の取るべき戦略
医療政策におけるさまざまな論点
価値を向上させる競争への移行:医療保険と保険へのアクセスの改善
価値を向上させる競争への移行:標準的な医療保険の適用範囲の設定
価値を向上させる競争への移行:医療の提供体制の改善
他国の医療政策への示唆
結論
付録A 診療実績の公表 クリーブランド・クリニックの例
付録B 医療提供のバリュー・チェーン
訳者あとがき
■引用
■書評・紹介
■言及
*作成:樋口 也寸志