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『赤を見る 感覚の進化と意識の存在理由』

Humphrey, Nicholas, 2006 Seeing Red: A Study in Consciousness, Belknap Pr .

=20061105 柴田 裕之訳『赤を見る 感覚の進化と意識の存在理由』,紀伊国屋書店,172p.


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■Humphrey, Nicholas, 2006 Seeing Red: A Study in Consciousness, Belknap Pr .
=20061105 柴田 裕之訳『赤を見る 感覚の進化と意識の存在理由』,紀伊国屋書店,172p. 2100 ISBN-10: 4314010177 ISBN-13: 978-4314010177 [amazon]

■紀伊国屋書店のHP
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?KEYWORD=%90%D4%82%F0%8C%A9%82%E9

■ニコラス・ハンフリー氏のHP(英語)
http://www.humphrey.org.uk/
pdfで読める文献多々あり。

■目次

1 興味深いがいわく言いがたい現象
  ■サザーランドの「意識の定義」
  ■意識とは何か、意識の役割は何か、意識はなぜ発達したのか

2 赤を見る
  ■赤を見ている脳に起きていること
  ■視覚的クオリア
  ■「赤い感覚を経験している」――その事実と感覚
  ■赤の感覚
  ■赤の知覚
  ■経験者なくして経験はありえない
  ■隣の人もたしかに赤を見ているか

3 感覚とは何か
  ■ファクターX
  ■三つの異なる要素の関係
  ■バラの匂いを嗅ぐ
  ■「何でも見える盲目のサル」
  ■変視症――感覚を経ない知覚がある?!
  ■郵便配達人とベルとイヌ
  ■ラマチャンドランの実験
  ■感覚の存在意義
  ■盲視の人ができないこと
  ■27歳の女性H.D.の場合
  ■感覚を持つことで意識を持つ

4 意識の方程式と感覚の進化の物語
  ■感覚経験をニューロンの活動に置き換えること
  ■感覚は行為である
  ■反応をモニターすること
  ■「進化の物語」から浮上した特徴

5 感覚ミラーニューロン
  ■共感とミラーニューロン
  ■分離性の無意識的放棄

6 Xファクターの正体
  ■Xファクターと時間
  ■意識と<現在>――モネとフッサール
  ■フィードバック・ループ形成と創発
  ■心と体の二元性の錯覚と実り多い人生

7 不可解な性質のゆえ

原注
謝辞
索引
訳者あとがき

■引用
太字見出しは作成者による
盲視
 大脳皮質に視覚野に損傷を受けると起きる稀な異常に、「盲視ブラインド・サイト」と呼ばれるものがある(これについては次章でくわしく述べる)。この異常を来した人は、色を含め、外界の特徴の一部を、依然として知覚できる(あるいは、少なくとも正確に推測できる)にもかかわらず、視覚的な感覚をすっかり欠いている。(p.40)

盲視の存在は、視覚的知覚は感覚を必ずしも伴う必要がないことを裏づける、これ以上望みようもないほど強力な証拠だ。(p.56)

「見ること」「聞くこと」
しかし、もし本書の新しいモデルが正しければ、この被験者の言うように、音が「私の心に二つの違ったタイプのインプットを生み出す」のは、それほど奇妙には思えない。実際、光も心に対して、視覚的な感覚と知覚という、二つの異なるタイプのインプットを生み出す。ただ、その両方を私たちは「見ること」と呼んでいるのだ。また、この被験者は気づかなかったかもしれないが、通常の状況では音も、聴覚的な感覚と知覚という、二つの異なるタイプのインプットを生み出す。ただ、その両方を私たちは「聞くこと」と呼んでいるのだ。(p.67)

デネットはハンフリーの考えに部分的に賛成、マッギンは反対。→p.69

意識の神経的相関物NCC
 まず、通常、研究者が「NCC」と言うときは、実際には、意識が発生するとき脳の中で起きる、そして起きる必要のある「意識の神経的基盤(NBC)」のことを指している点をはっきりさせておきたい。(p.86)

 主体が自分自身の反応を自己モニターするという、この形こそが、私たち人間にとってお馴染みの「感覚を持つこと」の原型なのだ。(p.102)

身体行為の模倣と共感Empathy
 身体行為の模倣によって共感が生まれるという考えを1880年代に示していたのだから、その《ニーチェの(作成者注)》先見性には舌を巻く。近年ようやく、多くの心理学者たちが、理論的見地からも経験的見地からも、それに同意するようになってきた。たとえばステファニー・プレストンとフランス・ドゥ・ヴァールは、2002年に、共感の一般的な説明として「知覚行為モデル」なるものを提唱した。
 とはいえ、その認知・神経生理学的メカニズムはまだ解明されていない。(p.116)

ミラーニューロン
だが、本書で示した感覚の働きについての新しい理解に沿って、痛みや匂いや色の感覚といった、最も基本的なレベルの感覚が、じつは一種の隠された行動であると考えたら、どうだろう。すると行動の模倣が、ずっと幅広い役割を担い、ありとあらゆる共感をもたらすという可能性が開かれうる。気分や感情に対する共感だけでなく、より純粋な感覚経験に対する共感をも、生み出しうるのだ。「赤すること」という他人の行為を模倣すれば、赤の感覚の経験を共有することになる。
 さらにこれは、「ミラーニューロン」という近年発見されたニューロンには完全に新しい役割があることを示唆する。このニューロンは脳の運動前野にあり、驚くべき二重の役割を持っている。人がたとえば指でナッツをつかむなどといった特定の行為をするときだけでなく、他の人がまったく同じ行動をするのを見るときにも、活性化するのだ。そうしたニューロンは、他者の行為の観察と自分の行為の遂行とを、実質的に結びつける。このニューロンは、最初はサルの脳で発見され、今では人間の脳にも存在することが明らかになっている。(p.117)

感覚反応は、生物学的に余剰になると潜在化されるというのが私の主張だった。(p.134)



*作成者:篠木 涼
UP:20080311
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