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『タックスヘイブン――グローバル経済を動かす闇のシステム』

Chavagneux, Christian & Palan, Ronen 2006 Les paradis fiscaux, Editions La Decouverte
=20070520 杉村 昌昭 訳,作品社,169p.


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■Chavagneux, Christian & Palan, Ronen 2006 Les paradis fiscaux, Editions La Decouverte=20070520 杉村 昌昭 訳,『タックスヘイブン――グローバル経済を動かす闇のシステム』,作品社,169p. ISBN-10: 4861821282 ISBN-13: 978-4861821288 1680 [amazon] ※ t07.
 *(クリスチアン・シャヴァニュー;ロナン パラン)

■広告(「BOOK」データベースより)

グローバル経済の本当の中心は、名前も聞いたことがない、小国や島にある。多国籍企業・銀行・テロリストによる、脱税や資金洗浄。世界金融の半分、海外投資の三分の一が流れ込む、グローバル闇経済。その実体とメカニズムを明らかにする、衝撃の一冊。

■著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

シャヴァニュー,クリスチアン
経済ジャーナリスト。フランスのグローバル経済を分析対象にした月刊誌「Alternatives ´Economiques」、経済誌「L’´Economie politique」などの中心的な編集者であり、イギリス・サセックス大学の国際関係論の研究員も務めている

パラン,ロナン
イギリス・サセックス大学教授。専攻、国際関係論。現在、同大学国際関係学部の学部長を務める。高い引用率を誇る『国際政治経済レヴュー』誌の創刊者であり、中心的な編集者でもある。また、イギリス国際学会(BISA)に属する「国際政治経済学会」(IPEG)の運営委員を務めている

杉村 昌昭
1945年、静岡県生まれ。名古屋大学文学部大学院(仏文科)修士課程修了。フランス文学・思想専攻。龍谷大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次

第1章 グローバル経済におけるタックスヘイブン
 タックスヘイブンの「公式の定義」
 タックスヘイブンとして識別するための10の指標
 グローバル経済に占めるタックスヘイブンの割合
 新たなる活動分野―ネット・ビジネス
第2章 タックスヘイブンの歴史
 国家の主権/資本の国際化の狭間で
 「オフショア」の誕生―最低課税・架空の所在地・銀行の秘密厳守
 タックスヘイブンの急速な発展―経済のグローバル化の中で
第3章 タックスヘイブンでは、誰が何をやっているか?
 「非合法」を「合法」に変えるマジックの道具たち
 個人資産家―資産保護の三つの方法
 多国籍企業―グローバルな税金攻略
 金融機関―金融グローバル化の合法的側面と非合法的側面
 国際会計事務所―タックスヘイブンの法律をもつくる世界経済のアクター
 犯罪者―マフィアやテロリストの資金回路
 先進工業国―情報機関・政府・中央銀行の知られざる活動
 タックスヘイブン―タックスヘイブン自身の利害と戦略
第4章 タックスヘイブンへの対抗策
 1 公的規制の歴史――大国の三度の失敗
 2 ヨーロッパで上がった烽火
 3 国際銀行による自己規制―マフィア・独裁者とのスキャンダル
 4 市民社会からの圧力

■引用

第4章 タックスヘイブンへの対抗策
 公的規制の歴史――大国の三度の失敗
 「タックスヘイブンを法律的に世界地図から抹消するのは、形式的には簡単なことである。つまり、大きな金融市場をもつ国家(アメリカ、イギリス、日本など)が、その国内法のなかに、タックス・[ママ]ヘイブンの地域に関わるいっさいの商取引は違法である、と書き込めば「充分」なのだ。そうすれば、ある程度の不法行為は周辺部分で生き延びるかもしれないが、タックスヘイブンで堂々と行われる活動は縮小されるだろう。そして、当然のことながら、投資や金融の回路、つまりあらゆるグローバルな経済活動は、縮小を余儀なくされるだろう。しかし、これこそが、関係諸国がこの道にけっして踏み込もうとしない理由なのである。
 しかしながら、公的な政策によってオフショア市場の役割を統制し弱めることはできる。それは二十世紀に三回ほど試みられた。しかし、確信と忍耐に欠けるものであった。今、EU(ヨーロッパ連合)のなかで、<0123<三つの異なった政策を通して、新たな試みがはじまっている。それらの政策はタックスヘイブンにメスを入れる重要な原理原則を提起しているが、その効果はまだ証明されていない。ともかく、タックスヘイブンの規制は、私的アクター(行為主体)に任せることができない問題である。自己規制では話に成らないのだ。
 タックスヘイブンは、オルター・グローバリゼーションの国際的な社会運動からも批判の対象になっている。しかしこの社会運動の動員力からすると、タックスヘイブンの分析を共有し、共同行動を開始すれば、なんらかの成果を獲得できることを最近の動きは示している。」(Chavagneux & Palan[2006=2007:123-124])

 1 公的規制の歴史――大国の三度の失敗
 国際連盟とルーズベルトの挫折――一九二〇〜一九四五年 125
 アメリカの敗北と転向――一九四五〜一九九八年 127
 ブラックリスト政策――一九九八年〜二〇〇〇年 128

 「OECDの目標は、結局、いかに逸脱的な行為をも正常なものとし、課税率を全体的に引き下げて、諸大国が税による圧力を弱めることによって、タックスヘイブンを健全な競争に仕向けるか、それだけであった」(Chavagneux & Palan[2006=2007:134])
 「国際的な公的政策は、こうして、犯罪行為への攻撃から、タックスヘイブンが世界経済のなかで果たしうる「肯定的役割」を確保するための新たな共通規範の探求の方へと移行したこ。それで、タックスヘイブンの行なっている行為に対して一定の規制を導入するかわりに、その存在権を正当なものとして認めようという<0136<取引がはじまった。」(Chavagneux & Palan[2006=2007:136-137])

 2 ヨーロッパで上がった烽火 138
 「ここ数年、ヨーロッパ委員会は、三つの異なった方向で歩みを進めようと試みている。第一の方向は、二〇〇一年からはじまった、法人税のハーモナイゼーションである。[…]<0139<
 第二の道は、非居住者の貯蓄への課税である。[…]<0140<
 第三の介入分野は、一九九二年一二月に動きはじめたが、きっかけは、OECDがはじめた有害な税務実践への対策にどう対応するかという議論であった。[…]<0141<
 この行動規範は、また、ある重要な革新的な要素を含んでいた。すなわち、とくに租税問題で主権を侵害するような政策をいかなる国も国家連合も押しつけることはできないという、従来からオフショア地域が主張していた異議を、この規範で回避することが出来るのである。この点に関連して言うと、この規範は「公平な課税」の原則を押しつけようとはしていない。逆に、OECDの路線にしたがって、国家間の租税競争の原則を受け入れながら、各国は税金に関して選択の自由をもつことを認めている。ただし、租税の規則が地域内に存在するすべての人々にとって同一であるかぎりにおいて、という重要な一点が明記されているのである。これはオフショア地域にとっては強力な拘束になる。なぜなら、これらの地域が世界経済に参入するための基本方針の一つは、まさに居住者と非居住者のあいだに租税規則の差異を設定するということだからである。」(Chavagneux & Palan[2006=2007:139-142])


UP:20090430 REV:20090505
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