『花街――異空間の都市史』
加藤 政洋 20051025 朝日新聞社,322p+4p.ISBN: 4022598859 1470
■加藤 政洋 20051025 『花街――異空間の都市史』, 朝日新聞社,322p+4p.ISBN: 4022598859 1470 [amazon]
■ 出版社/著者からの内容紹介
都市の繁栄の中心に、常に寄り添うように存在しながら、「語られざるもの」「隠されたもの」として歴史の隙間に埋もれていった〈花街〉。往時の繁栄もいまいずこ、もはや痕跡すらとどめていない場所も多いが、その「配置」や「来歴」には、時の権力者の意図がくっきりと刻印されていたりもする――全国100都市に及ぶ現地研究が、「遊廓」とも違う、その隠された歴史、都市形成に果たした役割をあぶり出す。
■ 目次
序章 花街のイメージ
都市の空間的共通項――全国六百カ所――
花街とは何か
近代の所産
本書の構成
第1章 花街――立地・制度・構成――
1 遊廓と花街
2 地図から読み取れること/読み取れないこと
長野市の花街
高田市の花街
呉市の花街
佐世保市の花街
3 立地と形態からみた「花街」の類型
播但地方の事例から
「花街」の3類型
4 花街の構成と制度
東京の二業地・三業地
大阪の花街
名古屋の「連」
5 本書に登場する花街
第2章 都市再開発から生まれる花街
1 丸の内の再開発――番廓(和歌山)――
2 変貌する殿様の庭園――衆楽園(鳥取)――
駅前の遊廓
城主の庭園から遊興空間へ
3 殿様御殿の末路――千歳御殿(富山)――
「千歳御殿」の変貌
遊廓から「花街」へ
4 墓地は賑わいを呼ぶーー南林寺町(鹿児島)――
近代都市と墓地
南林寺町と鹿児島の「花街」
5 跡地の花街
第3章 街のインキュベーター
1 新開町の変容――『にごりえ』(樋口一葉)と『縮図』(徳田秋声)のあいだ――
2 少年Hの好きな街――神戸市の近郊「西新開地」――
「西新開地」という呼称
新市街の発見と驚き
「西新開地」形成の背景
盛り場「西新開地」の特色
「花街」としての「西新開地」
新市街と花街
3 再び「新開の町」をめぐって
第4章 慣例地から開発地へ――東京の近代花街史――
1 ひとつの江戸―東京論――「花街」の成立と立地――
『おかめ笹』の一場面より
江戸―東京の「慣例地」
2 「慣例地」の形成――江戸〜幕末・維新期――
江戸期成立の花街
幕末・維新期成立の花街
花街の銀座
留守居茶屋と《赤坂》
《新島原》の廃止と《新富町》の成立
《九段》の成立
《四谷》と《神田》
「慣例地」と都市空間
3 開発のはじまり――《白山》の指定――
秋本鉄五郎の運動
地区指定の許可権
『縮図』に描かれた《白山》の歴史地理
4 大正期の地区指定――《白山》のノウハウの移転――
《麻布》の成立
白山三業株式会社の創立と大正芸妓
《大塚》の地区指定
《駒込》の地区指定
その他の地区指定
《白山》指定の意味
5 ウォーターフロントの「花街」
《芝浦》と「芝浦恊働会館」
《品川》の移転問題
《大森海岸》と《大井》《大森新地》
高橋誠一郎「大森海岸」の舞台は《森ケ崎》か?
もうひとつのウォーターフロント
6 警視総監の「置土産」――昭和初年――
警視総監の辞任と指定地の認可
《白山》の拡張と鳩山一郎
《蒲田新地》の地区指定
地区指定の実際
第5章 遊蕩のミナト――神戸の近代花街史――
1 新興都市・神戸
「大神戸新八景」
ミナト神戸の成り立ち
2 新設・分裂・移動――明治初期の花街――
開港元年の遊廓
廓政策の転換――「集娼」から「散娼」へ――
分裂する花街――《柳原》と《新川》――
移動する花街――元町と《花隈》――
3 寺社周辺の花街――明治後期以降の立地――
中心部の「花街」――三宮神社界隈――
東郊の花街――敏馬神社界隈――
西郊の花街――須磨神社界隈――
4 「新地」の形成――風俗取り締まりの帰結として――
東新開地
幻の花街――《花町新地》――
ミナト名物をめぐる警察活動
第6章 遊所から新地へ――大阪の近代花街史――
1 岸本水府の「大阪の花街」案内
「送り込み」と「居稼(ルビ:てらし)」
2 「遊所」の再編――江戸から明治へ――
「遊所」の立地と《松島遊廓》
「(泊)茶屋」の集合地帯
禁止された遊所のその後
「居稼店」の衰退
曾根崎遊廓の廃止――最初の芸娼分離――
3 《飛田遊廓》の誕生
「南の大火」
遊廓新設の言い分
土地建物会社の経営
経営上の特質
新遊廓の風景
4 大正期の新地開発
花街化する新世界
「大正芸妓」の登場
《南陽新地》の誕生
場所の系譜
新地開発の失敗――松島遊廓移転疑獄事件――
5 《今里新地》の開発と発展
芸妓居住指定地の許可
「松島遊廓移転疑獄事件」の後始末
《今里新地》の開発と発展
《今里新地》の風景
6 新地の開発史
第7章 謎の赤線を追って――鹿児島近郊の近代史――
1 消えた遊廓、そして謎の赤線
2 鹿児島の近郊
近郊の近代
遊蕩のトポス
3 近郊の名所
櫨木馬場(ルビ:はぜのきばば)温泉
「永吉の料亭」
4 櫨木馬場とメディア・イベント
「櫨木馬場」から「桜馬場」へ
観桜会の余興
鹿児島の小墨堤、その後
「赤線」はまぼろしか
終章 なぜ、花街か?
文献一覧
図表類出典一覧
花街関連用語集
*作成:竹中聖人