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BOOK
箕輪 優子 20050901 社団法人 家の光協会,238p. ■箕輪 優子 20050901 『チャレンジする心 知的発達に障害のある社員が活躍する現場から』,社団法人 家の光協会,205p. 1470 ISBN-10: 4259546805 ISBN-13: 978-4259546809 [amazon] ■内容(「BOOK」データベースより) 働く社員と企業の双方が満足の得られる、そんな障害者雇用を目指す横河電機株式会社。障害とは何か、人間の可能性とは何か、仕事とは、そして、自己実現す る喜びとは何かを、根本から問いかける貴重なドキュメント。 ■内容(「MARC」データベースより) 働く社員と企業の双方が満足の得られる、そんな障害者雇用を目指す横河電機株式会社。障害とは何か、人間の可能性とは何か、仕事とは、そして自己実現する 喜びとは何かを根本から問いかける貴重なドキュメント。 ■著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 箕輪 優子 横河電機株式会社・人財労政部に所属。障害者雇用促進を目的とした特例子会社「横河ファウンドリー」の設立を会社に提言し、1999年に設立。その取締役 となる。厚生労働省が主催する障害者雇用研究会のメンバーをつとめるなど、社外での活躍も多い(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの です) ■構成 プロローグ 第一章 視察の方々の驚き ・ 知的障害者がパソコンを ・ 他にご質問はございませんか ・ 関係者にも新鮮に見える 第二章 特例子会社を立ち上げるまで ・ 障害者雇用担当になった ・ 一年間でプロジェクトの完遂 ・ 障害を持つ友人に魅せられて ・ 特例子会社をつくってみたい ・ 第一歩を歩みだす 第三章 六名の社員とともにスタート ・ チャレンジ精神のある人を求む ・ うれしい誤算 ・ 障害程度なんかわからない 第四章 自尊心を傷つけられた過去 ・ 社員の心が羽ばたかない ・ 答えは社員たちがもっている ・ 自分の強みを発見する 第五章 コミュニケーションによる成長 ・ あなたはヘビを見たか? ・ よりよく伝えるために ・ 怒っている顔を知りたい 第六章 知的障害者の多様な能力 ・ 好循環が始まった ・ 見えない能力を発見する ・ 計算が得意な知的障害者 第七章 家族との連携 ・ 僕にやらせてという一言 ・ きずなを結び直す ・ 池袋の夜 第八章 企業の一員となるためには ・ 技能のスキルアップ ・ 合理化・効率化と障害者雇用 ・ 定型化がキーワード 第九章 全員がパソコンにチャレンジ ・ 会社の強みを持ちたかった ・ 自己流のやり方に任せる ・ 勇気を持った開拓者であれ 第十章 査定による動機づけ ・ 昇給が社員たちの活力 ・ 社長講和に燃える 第十一章 仕事のバリエーション ・ アルバイト募集が業務請負に ・ パンの販売でウィン・ウィン 第十二章 障害者雇用に望むこと ・ 専門知識よりも本人を重視 ・ ビジネスと福祉の視点の違いから ・ すべてが障害者問題ではない ・ ウィン・ウィンの関係をめざす 第十三章 創立五周年記念の式典 ・ 会社に来るのが楽しい ・ 切手のないおくりもの エピローグ ・要約のような問題提示 プロローグ 実は、横河ファウンドリーで働いているのは、知的障害をもつ社員達だ。IQ(知能指数)がおおむね70以下とされ、行政機関によって、知的障害者として の認定を受けている。障害の程度は人によってさまざまだが、その障害ゆえに社会的な活動を営む上で努力を要すると見なされている人々だ。(P1) 「どのような支援をしていますか?」とよく聞かれるが、私が社員に伝えてきたのは、ひと言で言えば、職場にはルールがあるので守ってください、こうすれ ばもっと速く、間違えずに仕事ができますよ、ということでしかない。つまり、支援してきたのではなく、会社の人事担当者が新入社員に施す教育と何ら変わり ないことをしてきただけだ。もちろん仕事をしていく上では、品質確保や効率アップのためにさまざまな改善を重ねてきたが、努めて知的障害に関する知識は深 めようなどとは考えはなかった。(P2〜3) 第一章 視察の方々の驚き ・ 知的障害者がパソコンを まず、誰もが驚愕するのは、知的障害者がパソコンに向かっている姿である(P10) 知的障害者とコンピューター。この組み合わせは、どうやら一般常識からは逸脱しているらしい。私達の研修の様子を見れば、決して特別なことはしていない で、「ああ、そういう教育ならできますね」とおそらく誰でも納得するはずだが、結果だけを見せられると多くの人はショックを受ける。(P11) ・ 他にご質問はございませんか 私たち人事の人間が何らかの意図をもって、このように社員に業務を説明させるように仕向けているのだと外部の方はおもわれるようだが、特別な意図がある わけではない。 当初は蚊の鳴くような声でしか話しができなかったり、緊張のあまり口ごもってしまう者もいたが、すぐに自分なりの説明の仕方を見つけるようになった。お 客様へのご説明は、会社員なら誰でも要求される営業行為のひとつだ。やってみていけるとなれば、躊躇する必要はない。私たち人事のものが代わりに説明しよ うとはまったく思わなかった。(P18) ・ 関係者にも新鮮に見える 私たちは意図して、画期的な職場をつくろうとしたわけではなかった。知的障害のある社員の労務管理のためのノウハウやマニュアルももっていなかった。だ から、結果としては一般的な人事のやり方を彼らに適用しただけだ。(P24) 第二章 特例子会社を立ち上げるまで ・ 障害者雇用担当になった 横河電機は一九八二年に北辰電機との合弁を行った。社員数は一気に膨れ上がり、さらに八二年以降二千人以上の社員を採用したことで、雇用率算定母数であ る常用労働者が急増し、実雇用率がガクンと落ち込んでしまったのだ。九一年のある月には、雇用率が一時的に0.8%を割り込むまでなってしまい。社会的な 責務を果たすことができなくなっていた。実は、私に課せられたのは、そのように落ち込んでしまった障害者の雇用率を回復させることだった。(P28) ・ 一年間でプロジェクトの完遂 一九九三年に四月にはプロジェクトは見事完遂されることとなった。そして、0.8%を割り込むほどになっていた障害者の雇用率を、一年間で一気に当時の 法定雇用率一.六%を上回るまでに引き上げることに成功した。(P36) ・ 障害を持つ友人に魅せられて 障害者雇用の担当となって、専門機関を回ったり、各種のセミナーに参加したり、他のメーカーの現場を視察に行ったり、さまざまな情報収集を行ったが、私 にもっとも大きな影響を与えたのは、我が社の障害をもつ社員たちとの出会いだった。(P39〜40) ・ 特例子会社をつくってみたい 一九九八年、横河電機では私の後任者が突然移動してしまって、私を障害者雇用の仕事に復帰させることを検討していた。折しもこの年は障害者雇用促進法が 改正され、知的障害者の雇用促進強化が事業主に求められていた。私は時間をつくって、日本経営者団体連盟の紹介で、知的障害のある人が働いている職場を訪 ねて回った。仕事はきちんとこなしていたし、話しも通じる。条件さえ整えば、当社での就労は十分可能だと思った。 ・ 第一歩を歩みだす 役員会には、「障害者特例子会社『横河ファウンドリー』設立の件」という企画書を提出した。事前に多くの方の協力を得られたおかげ、提案はすんなり承認 された。ただし、条件は二つ。ひとつは経営計画通り、三年間で黒字の会社にすること。もうひとつは、私が横河ファウンドリーの取締役となって、経営責任を 負うことである。(P48) 第三章 六名の社員とともにスタート ・ チャレンジ精神のある人を求む 最後まで残ってくれた六名の中には、養護学校の卒業生で福祉作業所に通っている人、職業訓練校や職業リハビリテーションセンターの在校生、すでに他の会 社で勤務経験のある失業中の人もいた。(P52) 予定よりも少なかったが、この六名の男性が、まずはトライアル実習をすることとなった。社員というよりも、これから一緒に会社を育てていく、私の仲間が できたと思った。(P53) ・ うれしい誤算 実は、人事のコンサルティングの仕事で知的障害者の中にもパソコンを使える人がいることは知っていた。しかし、実習生が手作業よりもパソコン操作が向い ているとは思いもよらなかった。でも、考えてみればマウスをクリックするのなんて、テレビのリモコンでチャンネルを切り替えるようなものかもしれない。は んだごてよりもマウスを使うほうが得意だという人がいても不思議はない。(P56〜57) ・ 障害程度なんかわからない 企業の人事担当者にとって必要な情報は、目の前の応募者がそのような可能性をもつ人なのか、どのような潜在能力を秘めているかといいうことである。でき ないことや劣る点ではなく、できることや優れている点については、自分で確かめるしかない。そのために行った採用試験で選ばれた六名なのだから、社員の多 くが、実は重度の障害者であったということは、私にとってほとんど意味をもたなかった。(P62〜63) 第四章 自尊心を傷つけられた過去 ・ 社員の心が羽ばたかない 私たちには何でもないできごとが、知的障害のある人たちにとっては高いハードルとなる。そのような制約はサポートされるべき障害ではなく、人格的な欠陥で あるかのようにみなされ、叱責の対象となることが多いようだ。社員の中に妙におどおどしたり、自信がなさそうだったり、うまく人前でしゃべれなかったりす る者がいるのは、障害のせいばかりではない。ゴキブリ、バカ人間、のろま―そういうネガティブメッセージが心の中にぎっしりと詰まっていて、彼らの心が羽 ばたこうとするのを、押さえつけてしまうのである。(P68) ・ 答えは社員たちがもっている また、社員が自己評価の低さから能力を活かしきれないでいることは、逆に言えば、まだまだ彼らの中に潜在能力が埋もれているということだ、努力に努力を 重ねて、ぎりぎりのところにいる人の実力をさらに上げるのは至難の業だが、気持ちを上向きにさせてあげられるだけで、実力が発揮できるというのなら、その ことを自信回復の糧にすればよいのではないだろうか。私は技能面のスキルアップの研修だけではなく、ヒューマンスキルアップの研修を定期的に実施すること で、社員の自信を回復させていくことにした。(P71〜72) ・ 自分の強みを発見する 事実でないことや自覚もしていないことを誘導するようにして無理やり言葉にしてもらっても、たんなるおうむ返しである。でも、本人が確かにそうだと思う ことを自分の口から言葉にすると、やがてはそれが自分のものになっていく。そうして、やがては、私たちが何も言わなくても、「私は○○ができるようになり ました」と言えるようになるのである。(P75) 第五章 コミュニケーションによる成長 ・ あなたはヘビを見たか? 日常生活の中で、私たちの会話は暗黙の了解で成り立っていることがとても多い。例えば、「昨日の件ですけど」と言えば、「ああ、あれね。今日は結論だし たほうがいいね」と、相手の考えを察知したやり取りが始まる。だから、「ヘビの話」のように話したい側の一方的な思いで何の前提もなく話が始まると、唐突 に思えるのかもしれない。しかし、わからないのにわかったようなふりをせず、きちんと質問していけば、独り言ではない会話が生まれるのではないだろうか。 ・ よりよく伝えるために 知的障害者には理解できないだろうと、あらかじめ表現をレベルダウンさせてしまうと、いつまでたっても一般社会とのギャップを埋めることはできないし、 最終的には評価も下がってしまう。(P89) 知的障害者が社会との接点を失わず、対等な関係を保っていくためには、私たちも必要以上に平易な表現にこだわる必要はないと思う。(P89) ・ 怒っている顔を知りたい 適材適所が実現している職場環境下においては、障害者ではなく、みんな一社員であり戦力になっているということだけだ。(P95) 第六章 知的障害者の多様な能力 ・ 好循環が始まった 自信を回復するだけでも能力の向上は望めるだろうと思っていたが、まさにその思惑通り、社員はめきめきと仕事の実力を伸ばしていった。(P97) ・ 見えない能力を発見する 横河電機に所属する二名の女性スタッフが、横河ファウンドリーの人事を新たに兼務することになった。(P101) ふたりが加わることで、社員達の仕事を評価する目が増えたことが、大変ありがたかった。たまたま三人の性格が異なっていたので、ものごとに対する着眼点 が違っていたし、社員が私たちに見せる表情も良い意味で異なるため、社員への評価への幅も大きく広がった。(P102) ・ 計算が得意な知的障害者 Rはパソコンが大の得意だ。地域の訓練センターで表計算ソフトのエクセルの使い方をたったの四時間でマスターした逸話をもっている。(P106) しかし、そのような恵まれた環境にあっても、Rは他人の言葉を理解するのに時間がかかったり、状況の大きな変化に対応するのが苦手なために、重度の知的 障害者の判定を受けていた。(P106) 第七章 家族との連携 ・ 僕にやらせてという一言 当社の社員の中には、成人になったいまでも、親に身の回りの面倒をほとんど見てもらっている者がいる。ふだんの仕事ぶりからするとやればできるようなこ とまでも親に依存し、親もまたそれを受け入れているそうだ。(P110) ・ きずなを結び直す 過保護であるか放任であるかというのは、主観的な評価になってしまい、そのことが問題ではなのではない。本人が自分の力で歩もうとしているのにそのチャ ンスを奪っていないか―そのことだけに気を配っていれば、満足の行く結果が生まれるに違いない(P120) ・ 池袋の夜 さっそく、どうして自分の給料を使い果たすほどお金が必要なのかをGに聞いてみたところ、「池袋で飲むのにはお金がかかる」と妙に恥ずかしそうに答え た。(P122) もちろん時には、おいしい話に誘われ、危険なことに遭遇する可能性もあるだろう。社員自らの選択により、危ない橋を渡ろうとする場面があるかもしれな い。そんな時に本人が不安を抱いて相談してくることがあれば、知る限りの情報を与えて、どうするかを一緒に考えていこうと思うし、私たちの手に負えないよ うなことなら専門機関の力も借りようと思う。(P124) 第八章 企業の一員となるためには ・ 技能のスキルアップ 社員を一人前の働き手にするのが、人事の役割だ。そのためには、業務の効率化が必要不可欠になるが、外からの精神的圧力をかけるようなやり方では、仕事 そのもの意欲をそいでしまうことにもなりかねない。社員には、自ら効率的な仕事を心がけるように習慣をつけてもらうことにした。(P127) ・ 合理化・効率化と障害者雇用 企業が合理化や効率化によって利益を上げていくのは当然なのであって、その方針は障害のある社員を活かすために貫かれていても良いのではないだろうか。 (P131) ・ 定型化がキーワード 当社の社員たちの場合、職場では「わかること」よりも「できること」を重視したほうが、結果的には「わかること」にもたどり着きやすいようなのである。 (P134) 第九章 全員がパソコンにチャレンジ ・ 会社の強みを持ちたかった 横河ファウンドリーの社長は、横河電機のマネージャーでもある。社長は社会福祉的な考え方で当社の未来を考えていく気はないという。(P139) 横河ファウンドリーでの体験を重ね合わせてみた時に、パソコンによるデータ入力業務が、当社の強みを発揮できる分野ではないだろうかと思えてきた。社会の 流れに合致していることもさることながら、まだ実績の少ない知的障害者の職域のフロンティアを開拓できることに大きな魅力を感じた。(P141) ・ 自己流のやり方に任せる それに比べると、当社の社員達は、覚えたことはどんどんこなし、わからないところにくると、ぴたりと立ち止まり、質問の嵐となる。私たちはその度に走り 回らなければならなかったが、勝手に先に進んでしまったり、余計な迷路に入り込むことも少ないので、一歩一歩着実に上達していった。(P145〜146) ・ 勇気を持った開拓者であれ パソコン業務を担当してもらうことになった時も、成り行きでそうなっただけなのだが、特別なことだとは感じていなかった。どんなに外部の方から「すごく 高度なことをやらせていますね」と言われても、現代人には必須のスキルであるし、実際に可能なのだから、便利なものは身につけるに限ると思っていた。 (P148) 第十章 査定による動機づけ ・ 昇給が社員たちの活力 この査定の話しを他の企業の方にすると、「査定をするのですか?全員一律ではないのですか?」と驚かれることがある。私たちにしてみれば、「どうして査 定しないのですか?一律にする理由は何なのですか?」と逆に問い直したくなる。(P154) ・ 社長講和に燃える 知的障害のある人に社員の心構えを説いて聞かせるなんて信じられないという人もいるが、私たちは一般の会社でやっていることはすべて同じようにやってい る。(P161) 第十一章 仕事のバリエーション ・ アルバイト募集が業務請負に 私はふだんから無料の求人情報誌はまめにチェックしていた。アルバイトの仕事をみつけるためではなく、アルバイトの募集をしている企業の業務をまとめて 請負うためだ(P165) 結果的には横河ファウンドリーが構内のパンの販売業務を請負うこととなった。そのパン屋さんは社員たちがお釣りの計算をしやすいように、ひとつ100円 の均一価格で売りたいという申し出も、快く受け入れてくれた。(P167) ・ パンの販売でウィン・ウィン 今回の業務販売で一番良かったのは、パンの値段を100円均一にしたことである。それまで一日130個しか売れなかったパンが、いまでは一日400個が継 続して売れるようになっていた。もともとは社員たちのお釣りの計算を楽にするために無理やりお願いしたコストダウンだが、思いもかけない売上増につながっ た。(P172) 第十二章 障害者雇用に望むこと ・ 専門知識よりも本人を重視 私は相談してくれる方に、「専門的な知識がないと障害者雇用は促進できないという考え方を、まずは捨ててほしい」とアドバイスすることにしている。人事 担当者は応募者の働く上での制約についてわかっていれば、とりあえずは十分なはずである。もし、障害について詳しく知りたくなったとしても、目の前に本人 がいるのだから、直接話を聞くほうが有効な情報が手に入る。何をしてほしいのか、逆に何をしてほしくないのかは、応募者本人とのやり取りの仲で自然とわ かってくるはずだ。(P175) ・ ビジネスと福祉の視点の違いから 福祉関係者の中には、仕事というと、社会的価値という視点からものごとを見る方が多いように思える。文化的活動も、コミュニティーづくりも、就労生活 も、すべて障害者の社会参加として、同じように位置づけてしまっていることも少なくない。企業人は社会的価値だけではなく、市場価値という視点からももの ごとをみていく必要がある。(P177) ・ すべてが障害者問題ではない また、ひと口に障害者が抱える問題といっても、障害のせいとは言えないケースもたくさんある。読者の中にはすでにお気づき方もいるかもしれないが、私た ちが会社で解決していった課題の多くは、決して障害者問題ではない。コミュニケーションの問題だったり、意欲や勤務態度の問題だったり、人間関係の問題 だったりする。(P184) ・ ウィン・ウィンの関係をめざす 障害をもつ人が社会参加すれば、かならず社会に新しい価値が生まれるはずだ。なぜなら、違った個性をもつ人たちが加わるかである。障害をもつ人が、障害 のない人の常識でつくられた社会で遠慮をしながら小さくなっているような参加の仕方ではもったいない。もっと双方ともに前向きな関係をめざすべきだろう。 (P188) 第十三章 創立五周年記念の式典 ・ 会社に来るのが楽しい 当社の社員の中には、居ても居なくてもいい、やってもやらなくてもいい、過去にそういう扱いを受けてきたことのある者がたくさんいる。なぜ、そんなひど いことを言われるのか、本人はわからないできた。しかし、ここでは自分は絶対いなくてはならない大切な人間だ。周りの人もそう思ってくれるし、自分でもそ う思える。だからこそ、会社に来るのが楽しいのだ。(P193) ・ 切手のないおくりもの 人の世話をすると人間は成長すると言うが、上司もあまり完璧でないほうがいいのかもしれない。五年間で、みんなを成長させるために、私のちょっとしたド ジのひとつひとつも一助になったかもしれない。(P197〜198) エピローグ 障害者の自立を進めるための教育や職業訓練を行っている機関はいくつもあるが、現代の就職事情からはほど遠い内容を実施し続けているところも時折見かけ る。時の流れの中で刻々と変化する社会に合わせて訓練内容を変えていこうという意欲がない、というより、ビジネス現場から乖離していることに、指摘される まではまったく気づかないところが多いように思える。この福祉の世界とビジネスの世界のとの意識の落差は、どうにも縮まらないものだろうか。 (P201〜202) 確かに、障害者のために長年にわたって身を尽くして働いてこられた方は世の中にたくさんいらっしゃる。そのような方々からすれば、私が本書に記したこと など、雇用に限定されたささやかな営為としか映らないかもしれない。しかし、私は自分たちの活動を世の中に紹介することの価値を改めて感じている。ビジネ ス現場の雇用する立場から障害をもつ方の姿が描かれることがまだまだ少ないからだ。 私たちの社会は、ノーマライゼーションをいっそう進めるために、知的障害をもつ方の多様な就労生活や未知の可能性についてもっともっと知る必要がある。 私が本書を世に出したいと思った一番の動機はそこにある。(P202) ■コメント この本は、学術書でもなければ、教科書になる本でもない。いわゆる当事者本というジャンルのものであろう。企業での実践を障害のある当事者やその家族か ら の立場で書かれたものではなく、特例子会社の人事担当者の視点から書かれた最初のものであろう。そして、その特例子会社は、横河ファウンドリー(親会社は 横河電機)という名称で、1999年の9月に設立されて以来、退職者はなく、安定的な黒字経営と多様な事業展開で更なる発展を遂げている。そこで、特例子 会社の解説であるが、「障害者の雇用の促進等に関する法律」では、法定雇用率(現在1.8%)が設定されており、事業主にとってはこの数値が障害者雇用の 目安となり、障害者の雇用義務は法人単位に課せられるものである。例えば、あるグループ企業の親会社が100%出資の子会社を設立して障害者のみの会社を 設立しても、親会社の雇用率のカウントに加えることは認められないのである。しかし、一定の要件[注1]を満たせば、子会社で雇用した障害者を親会社の雇 用カウントに含むことができるようになるのが特例子会社に関する制度である。 私は、現在、知的障害者就労移行支援事業所に勤務している。しかし、かつては、住友グループの受配電設備製造会社に約12年間勤務し、約8年間、障害者 雇 用の製造現場で聴覚障害者及び知的な任務の遂行が困難な同僚・後輩の支援を係長代理として手話通訳も務めながら担当していた。その後、障害者福祉の世界に 魅力を感じて退社し、再び学生に戻り、社会福祉学を学んだ。そして、授産施設等の福祉的就労機関の実態を研究し続けたが、実際は、一般就労へ向けての支援 機能の欠如だけでなく、一般就労へ向けての労働習慣等の学習の場としても機能していないことや、保護的な作業環境の整備にも苦戦している現状を目の当たり にした。そして、この事実を当然のように受け止め、改善する努力を怠っている障害者福祉の世界に深い失望を感じた。勤務する会社を辞して、障害者福祉の世 界に転進を果たしたのだが、やはり、福祉の枠組みでは、障害のある人達の職業能力を十分に見極めることが困難であることが理解できた。企業の障害者雇用の 現場と知的障害者福祉の現場の双方を経験し、授産施設等の福祉的就労機関が行う就労移支援を観察して一番に思うことは、やはり、職員が就労支援に対する畏 怖の念を拭い去れないことである。そして、最も苦手とすることは、施設の外に出ることである。やはり、施設の外に出ての営業活動や職場開拓に強い抵抗を示 すのであった。授産施設等の福祉的就労機関は、その誕生から、障害者自立支援法が施行された現在まで、福祉行政のもとで運営されている。そのため、利用者 は施設で働いているにもかかわらず労働者としての権利や最低賃金・所得保障という考え方はほとんど適用されることがなかった。職業的な不利を持ちながら、 手厚い職業的な支援が必要であるにもかかわらず、その機会を十分に提供することができてこなかったことは、就労支援という非常に開発的要素の高い業務に背 を向けて、思考を停止させてきたことは施設職員の社会性の欠如以外に、最初から諦念の思いを抱いていることは明白である。つまり、自らの経験主義を重視し た支援方法に頼ることで、従来から持たれている「一般雇用に結びつかない多くの知的障害者にとっては、福祉的就労機関における指導・教育・訓練を通した福 祉的就労を職業として捉える」といった概念を拭い去れなかったのではないだろうか。 私は、企業の障害者雇用の現場で働いた経験から、知的障害者の立場に立ち、一般企業の枠組みで考えてみるならば、企業活動は、一人ひとりの労働から人生 の 付加価値を生み出す仕組を持っていると考えている。やはり、福祉就労機関で働くよりも、就労移行支援事業所で終わりなき訓練を受けているよりも企業で働く ことは明らかに視野や経験が広くなるのである。自身の経験をふり返って見ても、福祉的就労機関や就労移行支援事業所に比べ設備や技術・専門家の揃った環境 が、知的障害者の労働価値を最大限に高めることが可能であると考える。働く場所は、設備や技術・専門家の揃った企業に、「餅は餅屋」に任せるべきで、職業 指導の専門生は企業の持つ最大の強みであるのである。やはり、その指導法は福祉的就労機関や就労移行支援事業所の職員の及ぶものではない。また、大手の企 業ともなれば、人事部の社員教育担当がヒューマンスキルの技法を用いて知的障害のある従業員の企業生活や人生設計においてQOLを高める援助を行っている のである。しかし、実際には知的障害者の企業就労は、まだまだ十分なものではない。私が勤務していた会社は、障害者に対して「特別な配慮を要する人」とい う認識を拭い去れないでいた。私は、その状況を約8年間観察してきたが、多くの社員は、障害者(特にコミュニケーションに課題がある障害者)と関わること に対して消極的であり、「できたら避けていたい」と考える傾向にあることを肌で感じてきた。企業全体、人事部の採用や教育に携わる障害者雇用担当者も極論 を言えば、「勉強不足で知らなさ過ぎ」の状態であり、業務なので仕方なく担当しているが、できれば担当したくないというのが本音でないかと推測するのだ。 そして、社会全体がこのような認識で捉えていると推測するのである。特に知的障害者に対しては、「街中で奇声を発する近寄りがたい人」という認識でしか捉 えられていないのが現状であろう。 以上のように、福祉施設からは十分に知的障害のある利用者を就職に結び付けることが難しく、一般企業にとっては知的障害者を受け入れ難い未知なる存在で あることは厳然とした事実である。しかし、そのような状況にあって、横河電機の特例子会社、横河ファウンドリーは着実に成長を遂げてきた。その手法は、普 通の社員教育を普通に行ってきただけのことである。とにかく、生真面目な集団なのである。そして、福祉的な発想を持つことなく、ビジネスを優先して知的障 害者の能力を引き上げてきたのである。その根底にあるのが、障害特性に左右されずに、先ずその人の人間性を見ることにあった。これは、障害者雇用現場の中 間管理職を経験した私にとっては、実によく理解できるものであった。やはり、実際の現場では障害特性なんかを考えている余裕はなく、その人の能力に対して 適材適所の仕事を準備することが求められていたからだ。このように考えると、なにも構える必要がないことが理解できるのである。そして、レポート課題をま とめるに当たっては、福祉現場や障害者雇用の現場で好事例になることや気づきになることを筆者に代わって、更に絞り込んでまとめたものである。やはり、重 度の知的障害があっても、文字が読めなくても、計算ができなくても、このようなハンデキャップが問題とならない環境を設定すれば、多くの知的障害者の雇用 が確実に創出できるのである。 以上 [参考資料] (注1) 概説は社会福祉法人電機神奈川福祉センターのHPを参照 http://www.denkikanagawa.or.jp/employment/1-4.html 働く障害者を支える団体のHPアドレス ・ NPO法人 大阪障害者雇用支援ネットワーク http://www.workwith.or.jp/ ・ 大阪市職業リハビリテーションセンター http://www.v-sien.org/ ・ ジョブコーチ・ネットワーク http://www.jc-net.jp/ ・ 社会福祉法人 電機神奈川福祉センター http://www.jc-net.jp/ *作成:堀田 正基(応用人間科学研究科) UP:20070824 ◇BOOK ◇障害学 |