『現代における政治と人間――政治学講義』
高畠 通敏 20050706 岩波書店,238p.
last update:20120901
■高畠 通敏 20050706 『現代における政治と人間――政治学講義』,岩波書店,238p.
ISBN-10: 4000227467 ISBN-13: 978-4000227469 \2300+税
[amazon]
/[kinokuniya]
■内容
市民政治の実現以外に残された道はないとする高畠政治学のエッセンスが、わかりやすい言葉で熱く語られる。
立教大学退職時に学生・卒業生を相手に行なわれた3つの特別講義と、病魔と闘いながらの古稀記念講演を収める。
■目次
現代における政治と人間
政治の〈原理〉について
政治学から見た現代人
市民政治再考
解説 栗原 彬
■引用
NPO(非営利団体)という概念は、わが国においてはいまだ新しいものですが、欧米では、近代社会以来の長い歴史があります。そこで現在、
NPOとして数えられているものを見ますと、その筆頭に私立大学、教会、労働組合などがあげられています。歴史が古いこういう団体は、
現在の日本ではNPOとは別の法人格をすでに獲得していますが、論理的にいえば、やはりNPOに数えられるべき種類のものでしょう。しかし、こういう種類の組織が、
現在、政治権力や資本主義の営利システムを批判し修正する機能をどれだけもっているかということになると、かなり疑問だといわざるをえません。大学についていえば、
創立の理念に立ち帰れという声がどこでもときどき上がります。すべての私立大学は、その意味での建学の精神をもつ一つの運動体、
社会に対するメッセージの発信基地だったのです。しかし今日、世間は大学間に偏差値の違いしか認めていません。
大学に勤務しそこからの収入で生活する人たちが多くなれば、いかに非営利の組織とはいえ、他の大学との競争のなかで、
自分の大学を継続し拡大してゆくということが第一の目標になってゆきます。それは言い換えれば、大学が団体としての利害をもつということに他なりません。
この意味で、あらゆる市民集団は、その運動が社会的に成功して、堅い組織となり長く持続するようになるにつれて、
営利組織としての企業と同じように利益集団としての側面を顕在化させてゆく傾向がありま>221>す。そのとき、それらの集団は当然、
政治権力や現在の経済システムに対して表立った批判をしなくなり、逆にそれと妥協し、時にはすり寄ってさえ組織としての利害を全うすることを図るようになるでしょう。
学校だけではありません。かつては政治権力と華々しく戦った宗教団体や労働組合の多くについても同じことがいえるのではないでしょうか。(pp.220-221)
■書評・紹介
■言及
*作成:北村 健太郎