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『升田将棋の世界』

真部 一男 20050725 日本将棋連盟,239p.

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last update:20151231

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■真部 一男 20050725 『升田将棋の世界』,日本将棋連盟,239p.  ISBN-10: 4819702300 ISBN-13: 978-4819702300 1600+税  [amazon][kinokuniya]

■内容

棋界随一の論客である筆者が平成9年3月号から平成16年8月号に、雑誌『将棋世界』に連載した「将棋論考」の升田将棋の検討をもとに、 書き下ろしを加えた升田幸三論の決定版。

■著者略歴

昭和27年2月16日、東京都荒川区の生まれ。40年、6歳で(故)加藤治郎名誉九段門。48年四段、63年4月八段。第16回(57年度)早指し選手権戦で初優勝。 平成9年7月30日、通算500勝達成。「将棋大賞」は第2回新人賞、第4回敢闘賞を受賞。(刊行当時)

■目次

第1章 私の升田将棋論――現代将棋を創造した天才

第2章 将棋論考〈升田将棋好局集30〉
1 羽生、そして谷川
2 常識の彼岸
3 棋力は向上したのか
4 衝撃のデビュー
5 最適の癒し
6 先崎学の大盤解説
7 人間対コンピューターの未来
8 感想戦に流れる世代の差
9 村山聖との別れ
10 北浜健介の大物ぶり
11 天才芹沢博文
12 反則は即負けか
13 国際試合の可能性
14 羽生の知、佐藤の理
15 冒険家の宿命
16 升田幸三言行録
17 千勝達成の偉業
18 ちょっと怖かった話
19 棋士は変人?
20 将棋・囲碁の国際化
21 勝負の鬼・呉清源
22 より公平な千日手規定とは
23 名人木村義雄の真骨頂
24 めまい
25 実戦のアヤ
26 順位戦最終局寸評
27 ちょっといい話
28 ネット対局の功罪
29 神技!生涯最高の一局
30 神と呼ばれる使い手


■関連書籍

◆大崎 善生 20000200 『聖の青春』,講談社 = 20020515 『聖の青春』,講談社(講談社文庫),419p.  ISBN-10: 4062734249 ISBN-13: 978-4062734240 648+税  [amazon][kinokuniya]
◆羽生 善治・先崎 学 20001130 『村山聖名局譜』,日本将棋連盟,215p.  ISBN-10: 4819702114 ISBN-13: 978-4819702119 2000+税  [amazon][kinokuniya]

■引用

1 羽生、そして谷川[平成9年3月号――1]
 史上最年少、21歳で名人位についた谷川は、何度か曲折はあったものの、常に第一人者、あるいはそれに準ずる者としての地位と意識を持って歩いてきたと思う。 それが先の王将位失冠によって、棋界のみならず世間の耳目までもが、独り羽生のみに向けられてしまったのである。
 その間の谷川の心中、私のような並の棋士でも察せられる。
 それから10カ月、11月末の竜王位奪取、そして今回の王将位への挑戦である。その前には新鋭三浦が棋聖位をもぎ取り、タイトルレースに顔をのぞかせている。 この物語は現在進行形であり、今後の展開を予測できるはずもないが、谷川がさらに巻き返していくか、さらに踏みとどまるかは、興味の尽きぬところであろう。(p.26)

 私は強引に谷川、羽生を升田、大山になぞらえようとしているかもしれない。それほどの二人だからである。(p.32)
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4 衝撃のデビュー[平成9年6月号――4]
 先日、酔眼朦朧としながらテレビでゴルフのマスターズトーナメントを見た。
 数十年に一人という才能を持った新人が現れたと耳にしたからである。

 [……]その新人の名はタイガー・ウッズという。[……]解説者によれば[……]これまで難しく大変だとされていたオーガスタが、 何だそれほどのことはないではないかと見ている人に思われてしまうと、苦笑交じりに話すのを聞いて、私はふと谷川浩司のことが頭に浮かんだ。
 彼のデビューもまた衝撃的であった。
 相手がまだまだひと山もふた山もあると思っている局面から、谷川はいとも簡単(に見える)に一本の糸を引くようにスーッと寄せ切ってしまう。
 まるで答えの決まっている試験問題を解いているような感じである。
 囲碁と並んであらゆる盤上ゲームで最も難解とされる将棋も、彼の手にかかると将棋はそれほど難しくはないではないか、と思われかねなかった。
 その鮮烈な印象がその後の新人群の緻密な研究の発火剤になったかもしれない。 羽生の言う「双方が最善手を指し続ければ勝負のつくのは百手前後」の発言も、その延長線上にあろうかと思われる。
 私が初めて谷川、羽生と対戦したのは二人がそれぞれ16歳ぐらいであったと思う。
 両局とも序盤中盤は当方がリードしていたのだが、終盤に入ってからの追い込みの迫力といったらなかった。
 一手ごとに差を詰められる脅威を感じさせられたものである。
 こういう強さをわれわれは奥がしっかりしていると表現する。
 頭角を現す者たちのみが持つ特徴のひとつである。特に谷川との対戦時は、>048>こちらも26歳の指し盛りでもあり、いささかならず打撃を受けたものである。(pp.47-48)
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■書評・紹介

■言及



*作成:北村 健太郎
UP:20151231 REV:
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