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『男性保育士物語――みんなで子育てを楽しめる社会をめざして』

小崎 恭弘 20050530 ミネルヴァ書房,213p.

last update:20110303

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■小崎 恭弘 20050530 『男性保育士物語――みんなで子育てを楽しめる社会をめざして』,ミネルヴァ書房,213p.  ISBN-10: 4623044149 ISBN-13: 978-4623044146 \1890 [amazon][kinokuniya]

■内容

■目次

第1章 男性保育士になるために
第2章 男性保育士がやってきた
第3章 子どもから見た男性保育士
第4章 男らしさを探して
第5章 男性保育士の遊び
第6章 チームワーク
第7章 保護者とのかかわり
第8章 仕事としての男性保育士
第9章 男性保育士の仲間
第10章 男性保育士は必要なのか?


■引用

◆「男性保育士の意義」(管理者作成)
 子育てや保育から、男性は遠ざけられています。もちろん自ら遠のいている人もいます。そのような環境の中においては、 子どもも男性から自然と離れていってしまいます。しかし社会には男性もそして女性も、当然のように存在しています。それ が自然の姿であり、また成長発達して男女ともにお互いを思いやり、尊重して生きていきます。その最初の段階でつまずいた り、苦手を作ってしまうのは実は大変危ういことなのです。
 男性保育士が乳児の保育にあたっていると、両性がいること自体が自然なことになっていきます。最 初何かしらの抵抗や不安がある子どもたちでも、日々の生活の中においてはそのようなものは払拭されてし まいます。そしてその上で、男女の違いを知ることになります。
 声の違い、体の違い、かかわり方の違い、体力や筋力の違い、などたくさん の自然な違いを自然なかかわりの中で感じます。たとえば抱っこされても、男性保育士 と女性保育士とでは抱き方が違うので、抱かれるほうの感じ方も違います。その違いを子どもたちは肌で感じ 自分の中の男性像・女性像を形成していくのです。しかしその時期に身近なところに男性がいないと、自然な交流や、 男性像の形成ができないということになります。そのことはやはり後の人格の形成に少なからず影響を、及ぼすことになります。 もちろん男性保育士にもいろんなタイプの人がいます。いわゆる社会でいうところの男性らしい先生やそうでない先生もいます。 しかしやはりどのような男性であれ、現代社会の中で男性として育てられているという経過があります。男性のもっている文化を 伝えられて、大きくなってきている人たちです。そんな男性の性別や感覚や文化を伝えていき、両性の存在に気づかせることは男 性保育士の大きな意義であると考えます。P84-5

◆男女共同参画社会と男性保育士
子育ては女性の仕事?
 男性と女性の先生がいて、それぞれの特性を生かして保育にあたることは、僕はとても大切であり子どもにとって もよいことだと思っています。特に現在は「男女共同参画基本法」も制定され、今後男女の尊重とそれぞれの生き方の大切さが問わ れています。「男性は男性らしく」「女性は女性らしく」この考え方に真っ向から反対するつもりはありません。しかし「男性だ からこうあらねばならない」あるいは「女性だからこのような生き方ことなく、当然のように社会に受け入れられています。この 考え方は「社会的な子育て」の保育においても当てはめられています。「保育=女性」というのが一般的です。そうなると男性保 育士はやはり特別な人であり、変わり者ということになってしまいます。
 そうではなく「子育て・保育」が重要なものであるという認識を、社会全体に浸透させる。その上で、その社会的な責 任を今まで一方的に女性に押し付けていた行動や態度、社会制度などを改める。そしてその点において積極的に男性も責任を果たしてい く。そのためには父親と同時に男性保育士も、その役割の中心となる。というような社会の実現を僕は望んでいます。少子高齢社会や子 どもの出生率の著しい低下が、社会問題として取り上げられて久しいです。そのような状況の変化には、やはり男性の意識や態度の大き な変化が求められます。その先駆的な役割を果たすのが、男性保育士であると考えています。P123-4

◆子育てと男性保育士
男性にもある母性本能
 男性保育士が少ない原因の一つは、やはり「育児、子育て、保育」は女性がするものという社会的イメージがあるからだと思います 。男性が弱者の総称として使うものに「おんなこども」という言い方がありますが、やはり「女性」と「子ども」は一つのまとまりとして とらえられることが多いように思います。「女性は母性本能があるので子育てに向いている」「子どもを産めるのは女性の特有の性質であ る。したがって子育ても女性特有のものである」などの意見はよく耳にしますし、ほとんどの方がその意見に対しては賛成のようです。 しかしそうでしょうか。いわゆる「母性本能」は女性すべてに無条件に備わっているものなのでしょうか。たぶん違うと思います。もし 無条件にすべての女性に母性本能というものが備わっているのなら、現代社会のように多くの子どもたちが虐待にあったり、亡くなった りすることはないように思います。母性本能は女性に無条件に備わっているのではなく、子どもとかかわったり、他者を慈しむ体験をして 、その人の中で育まれていくものだと考えます。
 したがって確かに出産と授乳は女性にしかできないことなのですが、それ以外の育児については 男性も同じようにできるものなのです。母性本能というものが「子どもに対する愛情」というものであれば、それは育児をする男性に も女性と同じように、またはそれ以上に生まれてきます。幼子に対する無条件的な思いや関心あるいは愛情などは、男性や女性という 性別には関係なく、人として子どもたちとかかわる中で生まれる自然な感情なのです。しかしそこには真剣なかかわりが求められます。 子どもに対する真剣な責任とかかわりがあって、初めて愛情が生まれるものです。現代社会では多くの場合、女性が育児を担っています。 育児に対する責任と多くの世話を女性の役割としています。そのような環境下では、女性が育児を通じて子どもに対して深い愛情や関心を もつことは、当然であるといえます。反対に子どもとのかかわりが希薄な男性は、子どもに対しての責任もなければ、また関心や深い愛情 をよせる機会もないといわざるを得ません。同じ親であり、保護者であるのに大きな違いが出てきてしまいます。P144-5

◆子育てはだれのもの?
 しかしそこに反旗を翻す者たちがいます。それが「男性保育士」です。「男性は子育てができない」あるいは「男性は子育てし なくてよい」などという社会的なイメージがあります。社会全体では多ぺ支持されている考え方です。男性はもちろん、あるいは 女性でさえそのように考えている人も多いと思います。しかしそんなことはありません。男性でも
彬子育てはできます。その実践者が男性保育士です。男性保育士の役割はたくさんありますが、実は最大の役割とは「男性の 育児の実践者」であると僕は考えています。
(…)
 男性はこれまで「仕事」という大きな隠れ蓑に隠れて、育児を放棄してきました。また育児がしたくとも、仕事という大きな足か せの前では、それは実践することができませんでした。ともかくどのような理由であれ、「自分たちに続く次の世代を育てる」とい う責任をあまり果たしてきませんでした。男性保育士は男性がこれまで果たさなかった責任を今現在担っているといえます。P147-8

■書評・紹介

■言及



*作成:八木 慎一
UP: 20100303 REV:
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