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『現代生殖医療――社会科学からのアプローチ』

上杉 富之 編 20050510 世界思想社,274p. ISBN: 4790711315 2310


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『現代生殖医療――社会科学からのアプローチ』

■上杉 富之 編 200504 『現代生殖医療――社会科学からのアプローチ』,世界思想社,274p. ISBN: 4790711315 2310 [amazon] ※
 世界思想社のHPでの案内:http://www.sekaishisosha.co.jp/cgi-bin/search.cgi?mode=display&style=full&isbn=1131-5

上杉富之[ウエスギトミユキ]
1956年生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程修了。博士(社会人類学)。成城大学文芸学部・大学院文学研究科教授。社会人類学専攻

◆2005/07/24 最相葉月・書評
 http://book.asahi.com/review/TKY200507260289.html

 「生命科学の発達によって急変する人間観に、真正面から取り組もうとする学際研究が盛んだ。科学史家の松原洋子はこの状況を、編著書『生命の臨界』で「一九世紀後半の西洋人が経験した、生物進化論の受容をめぐる倫理的危機に勝る危機」である一方、「新しい生命論や身体論、人権概念の誕生前夜のスリリングな時代」と表現している。
 とくに、生殖医療は家族制度を揺るがす可能性があり、国内外の実態調査が不可欠となっている。本書はその意味で、現状を俯瞰(ふかん)できる恰好(かっこう)の論文集だ。
 伝統的な「男児選好思想」の影響で男児がいないのを不妊とみなす韓国の特殊性、第三者からの配偶子提供や受精卵凍結を禁じたイタリアの政治的背景、精子をミサイル、分娩(ぶんべん)室を戦場にたとえるイスラエルの産婦人科講義など、各国の相違を際立たせる報告も。
 総じて子の視点に立つ研究は圧倒的に少ない。我々は本当に大事なことはまだ何も知らない。」

序論

●第I部 生殖医療を考える視点
第1章 「生殖革命」の進展【石原 理】
第2章 生殖医療に対する法的対応【家永 登】
第3章 ジェンダーフレイムから見た新生殖技術【浅井美智子
第4章 生殖の家族からの分離【井上眞理子】
第5章 人類学からの対応【上杉富之】
第6章 そこに起こること【立岩真也

●第II部 生殖医療への取り組み
第7章 生殖補助医療に関する議論から見る「日本」【柘植あづみ
第8章 イタリアの生殖医療の法制化にみる「生 ― 権力」【宇田川妙子】
第9章 軍事技術としての生殖【イブリ・ツィピ(村上隆則訳)】
第10章 韓国における生殖技術への対応【洪 賢秀】
第11章 ジョディ・フォスター、代理母、卵子提供者【出口 顯】

用語解説/生殖医療関連年表


◇立岩 真也 「そこに起こること」 [了:20040112 発送:0317]
 1 単純な肯定論→うまくいかない否定論
 2 より有効な批判
 3 同じ根拠からの部分的な肯定
 4 親となることの条件?

  冒頭
  「この技術は、一つにたしかに生殖の「普通」のあり方から外れていくと同時に、多くの場合既にある「普通」の欲望に発している。そんなところがうっとおしさであり、また(おもしろいと思える人には)おもしろいと思えるところなのだろう。ここには既にどこまでがよいのだろうという問いがあってしまっている。それは哲学・倫理学の問いだから、分業し、社会科学の方は考察のための材料を提示する役に回ればよいという考え方もある。しかしそうしなければならないと決まってはいない。またこの分業を認めるとしても、広大な現実のどの部分を調べるのかという問題がある。また事実だとされていることが本当なのかが問題で、調べる必要があることがあるが、そのためには何が当然とされているかをわかっている必要がある。社会学から見たらどうかというのがこの章だが、以下に記すことはあまり普通に社会学的ではないかもしれない。この本の主題になっていることについて知ったり見ていくときにこんなことを考えざるをえないと思うことを述べる。   そして、考えることと考えられたことを知ることとは地続きでつながってもいる。たとえば社会学者はよく意識調査をする。生殖医療、生殖技術、不妊治療について人がどう思っているかを調べることは大切である。だがある考えの人が別の考えの人より多かったという事実は何を意味するのか。ものごとがなんでも多数決で決まればよいと思っていないとすれば、多数派に従うべきだという話にはならない。この主題はたしかにかなりややこしい。多様で複雑である。始終そのことを気にせざるをえない人もいれば、そうでない人もいる。それらをいっしょにして数を数えるより、何が言われてきたかを追い、その構成や配置を知るという仕事がある。私たちがある主題について考えつくことは、多様であるように見えてそれほどでなく、いくつかにまとめることができる。と同時にそれなりには複雑でもある。生命倫理学で言われてきたことも含め、これまで議論されてきたことを追い、収集し、そして分析することが重要な仕事になる。既にそうした基礎的な仕事は終わっているのではないかと思う人がいるかもしれないがそうでもない。その時々の話題が早い速度で移り変わっていることも関係しているだろうが、体外受精にしても過去に様々なことが言われたのだが、既に多くは忘れられてしまっている。   さて、そうして見ていったとき、すぐに目につく一つの簡単な主張は[以下略]」


UP:20050501 REV:0524,26
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