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『働くということ』

Dore, Ronald P. 
=20050425 石塚 雅彦,中央公論新社,p.198

last update:200707015

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■Dore, Ronald P. =20050425 石塚 雅彦 『働くということ』,中央公論新社,p.198 ISBN-10: 4121017935 ISBN-13: 978-4121017932 \735 [amazon][kinokuniya]

■内容

(「BOOK」データベースより)
 二〇世紀の終わりまでに、私たちはみな週五時間程度だけ働くようになっているだろう―。ケインズの八〇年前の予言は見事に外れた。先進諸国でも、経済競争力強化を理由に労働時間 の短縮は進んでいない。グローバリゼーションが加速する中、所得の格差も急速に拡がりつつある。雇用機会や賃金において拡大する不平等に歯止めはかかるのか。半世紀にわたって「働 くということ」の意味を問いつづけてきた思索の到達点。

■著者について(奥付より)


ロナルド・ドーア(Ronald P. Dore)
1925年,イギリスに生まれる.ロンドン大学東洋アフリカ研究学院卒業.戦時中,日本語を学び,1950年,江戸教育の研究のため東京大学に留学.カ ナダ,イギリス,アメリカの大学の社会学部や政治学部教授を経て,現在,ロンドン大学LSEフェロー.
著書『学歴社会新しい文明病』(岩波書店,1978年)
   『イギリスの工場・日本の工場』(筑摩書房,1987年)
   『不思議な国日本』(筑摩書房,1994年)
   『日本型資本主義と市場主義の衝突』(東洋経済新報社,2001年)など

石塚雅彦(いしづか・まさひこ)
1940年,東京に生まれる.国際基督教大学,コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクール卒業.日本経済新聞社に入社し,英文日経編集長,香港支局 長,論説委員など.
訳書『自由と経済開発』(アマルティア・セン,日本経済新聞社,2000年)
   『アイザイア・バーリン』(マイケル・イグナティエフ,共訳,みすず書房,2004年)など

■目次

 はじめに
第1章 労働の苦しみと喜び
 あなたの不安が私の平和を脅かす グローバリゼーション さまざまなユートピア さまざまな不平等 二一世紀の課題 労働密度の強化 世界景気のからく り 日本の労働時間 「企業は人道と無関係」 余暇の後退 優先順位の推移――経営者側 なぜそんなに競争するのか 日本の追い付け追い越せ――今度は制 度の面で 「従業員主権企業」から「株主主権企業」へ 優先順位の推移――政府側 象徴的な歴史的転換点

第2章 職場における競争の激化
 効率は市場競争から 成果主義 年功制度 サッチャー革命 社会規範の変化 富士通の経験 仕事と生活のバランス 多様な満足感 社会的有用性 起業家 リスクと投機的リスク 報酬システムの公正の基準――ソフトウェアエンジニアとオフィス清掃人

第3章 柔軟性
 イギリスの一つの誇り 労働市場の柔軟性 生産効率 産業調整 二つの柔軟性/二つの効率性 国民性という要因 中核と周辺の使い分け 労働者保護の後 退 整理解雇の四要件 労働基準法の改正 裁判官の判断 正規/非正規 対照的な基本姿勢 失業――なぜこれほど市場の流動性を重視するのか 流動性謳歌 の思想 個人主義 聖プレカリア 終身雇用の終焉か そして不平等 労働組合の力の低下 技術の進歩と学習能力 トップの貪欲

第4章 社会的変化の方向性
 何が公正か 力の次元 倫理的次元 二〇世紀のコンセンサス 新しいコンセンサス 変化はどこから? 変化の根――思想、政治 もっと深い根――歴史、 家族、学校、豊かさ、移民、人口動態 不平等社会日本 逆戻り 多文化主義 ペイ・アズ・ユー・ゴー 改心の可能性 反社会的行動 基礎所得 失業の二つ の問題

第5章 市場のグローバル化と資本主義の多様性
 逆転の可能性 標準を押し付けること 恥ずかしくないのか コスモポリタン・エリート 恐り、同情、団結 文化的覇権 イデオロギーと市場 「市場の 力」の論法 未来の可能性 資本主義の多様性 最後の言葉――最後の問い



■引用

「次章の中心的なテーマとなりますが、仕事の内発的・外発的報酬の区別や、本質的に面白い仕事と骨折り仕事の区別とも関係する点を一つ。多くの伝統的賃金 においては、イギリスで「熱と危険手当」と呼ばれた3K仕事への割増賃金に相当するものがありました。かつてニューヨークでは、ごみ収集人が教師より高い 給料を取っていたといいます。このことは労働市場における需要と供給の問題として説明できるかもしれませんが、「仕事が不快なものであれば、それだけ多く 支払われるべきだ」というのが、ほとんどの人の正義感に添った原則であるとも見ることができます。しかし、所得分配パターン全体を考えれば、明らかにその 反対が現実です。本質的に、もっとも面白い仕事をしている人たちこそが高い給料を得ています。
 これには新しいことは何もありません。新しいことといえば、これらもっとも楽しい仕事をしている幸運な人々は高い給料を支払われているだけでなく、その 給料がさらに高くなっていく傾向にあり、そして、それは当然のことだと彼ら自身がますます自信を持って主張するようになっていることです。この報酬格差拡 大傾向自体の原因を求めることは一つの問題です。もう一つの問題は、報酬格差拡大における公正さです。なにが正義であるかに関して、互いに相容れない基本 原則に照らして評価する必要があります。」(p.69-70)

■書評・紹介

■言及



UP: 200707015 REV:
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