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『アスペルガー症候群と高機能自閉症――青年期の社会性のために』

杉山 登志郎 編 20050303 学習研究社,197p.


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■杉山 登志郎 編 20050303 『アスペルガー症候群と高機能自閉症――青年期の社会性のために』,学習研究社,197p. ISBN-10: 4054025056 ISBN-13: 978-4054025059 \1890 [amazon][kinokuniya]

■内容
「BOOK」データベースより

アスペルガー症候群、高機能自閉症と呼ばれる人々はかつてほとんど知られることがなかったが、社会に出てから通常の人々とのコミュニケーションの困難から様々な問題を起こしたり、社会性が身につかずに社会人として生きにくい現状がある。そこで少年期からの社会性獲得のための実践的な支援を集めた。

「MARC」データベースより

アスペルガー症候群、高機能自閉症の人々が、最も苦手なコミュニケーションの力と社会性を、青年期までにどう身につけたらよいか。少年期からの社会性獲得のための実践的な支援を集める。

■目次
    第1章 今、最も必要なことは

      総説 問題行動の克服と青年期の社会性の獲得のために

      解説1 高機能児の見分け方――ADHDとLDと、どこが違うか

      解説2 保護者へのサポート――保護者と学校のよりよい連携のために

    第2章 具体的な支援のために

      解説1 不適応と問題行動への支援――学習教材を利用した心理教育的援助の取り組み

      解説2 社会性スキルの獲得を支援する――マイペースの軽減、社会的状況の理解 

      解説3 著しい行動の問題について――暴れるという表現方法をとってしまう子どもをどう理解するか

      解説4 高機能広汎性発達障害児と虐待――なぜ、虐待を受けてしまうのか

      手記 アスペルガーで生きていく

    第3章 最新医学からの話題

      トピック1 広汎性発達障害の神経学的基盤――扁桃体‐辺縁系仮説を中心に

      トピック2 水銀問題を考える――自閉症水銀説とキレート療法について

    第4章 社会性獲得のための学校教育とは

      実践1 通常学級で高機能児に対応するコツ――彼らに取り組む教師たちの工夫

      実践2 障害児学級で高機能児を伸ばす――通常の学級から障害児学級に移籍して適応した二つの事例

      実践3 こだわりと不安を理解する――自己を表現することをやめたA君への対応

      実践4 高機能広汎性発達障害の入院治療――短期集中合宿で対人関係トレーニングの試み

      実践5 高機能自閉症児とイルカ介在療法――イルカと遊ぶ中で生まれるもの

    第5章 青年期を迎えて

      実践1 青年期のグループ活動がもつ意味――仲間がいて成長がある

      実践2 人間関係でつまずかないために――保健所で実施している青年期広汎性発達障害者デイケア

      青年就労者座談会 後輩たちよ僕らに続け!

    あとがき
■引用
問題行動の克服と青年期の社会性の獲得のために

杉山登志郎(あいち小児保健医療総合センター 心療科部長兼保健センター長)

長崎の悲しい事件をうけて

 平成一五年、わが国はまたしても少年によって生じた悲しい事件に震撼させられた。四歳という年齢で理不尽に命を奪われたご本人、またその家族のことを思えばことばもない。

 この異様な事件はその後、犯人が中学一年生であったことが報道され、大きな衝撃が走った。さらにその逮捕された少年のさまざまな行動が報道されるにつれ、子どもの発達障害に日々取り組んでいる専門医や臨床心理士、また教員の間では「この子もどうもアスペ(高機能広汎性発達障害)のようだ」ということばが交わされるようになった。そして鑑定の結果が報道されるにおよび、彼がアスペルガー症候群であることが明らかとなった。

 この事件は私自身にとっても大きな衝撃であった。当時私は日本自閉症協会に委託された厚生科学研究で、高機能広汎性発達障害の社会的な適応を不良にするさまざまな問題行動について継続的な臨床研究を行ってきた。平成一五年はテーマを非行および触法行為とし、臨床研究を始めたところであった。

 このテーマを選んだ理由は、この何年かの間にさまざまな専門家の友人からこのグループと考えられる青年の触法行為について、相談を受けることが著しく増えたこと、さらに私自身が診察を行った高機能広汎性発達障害の中に非行や触法行為に至るものが。まれではあるが以前よりも明らかに増えて来たことである。

 豊川に事件以後もこのグループの少年あるいは青年による犯罪の報道が何度かあり、正面から取り上げる必要性を以前から感じていた。それにもかかわらず、非行や犯罪という問題は重いテーマであるがために、取り組みが遅れたことは懺愧に耐えない。

 犯罪を犯した少年が、もっと以前に生来のハンディキャップの存在に気づかれていれば、この様な悲劇はきっと防げたのではないかと考えられる。被害者の少年のみならず、加害者の少年に対しても、彼が正しい対応受けることができなかったことに、いわゆる専門家である我々には等しく責任がある。このグループについての啓発が、よりいっそう必要である。

 我々は二〇〇一年度に二回にわたって高機能広汎性発達障害も特集を「実践障害児教育」で組み、その内容は合わせて一冊の本といしてまとめられた(杉山編「アスペルガー症候群と高機能児自閉症の理解とサポート」学研、二〇〇二)。この本には多くの反響が寄せられた。その最大のものは、入門編の次の情報が知りたい、というものであった。

 それに答える形で、「実践障害児教育」において、二〇〇四年に二回の特集が組まれた。この特集にさらに大幅に加筆を行い、まとめたものが本書である。

 この本にまとめられたものは、高機能広汎性発達障害に関する中級編であり、問題行動の予防と対応、そして青年期以後の社会性獲得に焦点が当てられている。前著と同様に、机上の空論は一つもない。すべて実際にアスペルガー症候群や高機能自閉症に取り組んできた実践家による実践報告から成り立っている。

(pp. 6-7)

あとがき

 二〇〇四年一二月三日は、わが国の福祉にとって画期的な意味を持つ日となりました。発達障害者支援法が国会で承認されたからです。

 この法律によって、これまでは障害障害と認定されなかった高機能広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害、学習障害などのいわゆる軽度発達障害が、発達障害と認定されることになり、地域での幼児期から就労までの一貫した障害者支援が実現することになりました。

 また大きな問題となっている発達障害の専門家不足に対して、発達支援を行う医療機関を選定すること、発達障害にかかわる人々の専門性の向上を図ることや、専門家の育成を行うことも定めています。わが国は大きな一歩をやっと踏み出したのです。

 自閉症スペクトラムは今や、知的障害ろ並ぶ大きなグループであることが明らかになってきました。ところがこれまでは、知的障害に屋根を借りる形で、その枠の中での社会的支援にとどまっていました。そこから食み出し、雨風にさされ続けてきた存在が高機能広汎性発達障害です。

 このグループが、教育、医療、福祉、司法などにおいて大きな問題となっていることについてそれぞれの分野において、遅ればせながらやっと気付かれるようになってきました。

 実に、日本の自閉症学は、先進国に比して二〇年間遅れてしまったとは、地域で自閉症に先進的に取り組んできた、ある自閉症・発達障害支援センターの所長の言葉です。我々はこの遅れを取り戻さなくてはなりません。

 自閉症スペクトラムとはある種の異文化です。われわれはもっともっと、自閉症スペクトラムの方の能力を活用することができるし、またそうすれば社会にも豊かな還元が可能となるのです。

 先の本「アスペルガー症候群と高機能自閉症の理解とサポート」は大きな反響を呼びました。文中にも記しましたが、入門編であった前書に対して、中級編が欲しいという声を数多く聞きました。入門編と同様、分かりやすく、実践にすぐに役立つ中級編が現場で求められていると実感し、この本が企画されました。

 この本には机上の空論はありません。そべて現場で苦闘している中で実践に基づき書かれたいわば最前線の報告が集められています。全書同様、教育、福祉の現場で広く読まれることを望むものです。

 最後に、この本の完成のために、奮闘されら実践障害児教育編集長、師岡秀治氏に深謝いたします。

二〇〇五年一月

(pp. 194-196)
■書評・紹介

■言及



*作成:三野 宏治 
UP:20100124 REV:
自閉症 autism  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK

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