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『博士号のとり方――学生と指導教官のための実践ハンドブック』

Phillips, Estelle M. & Pugh, Derek S. 2005 How to Get a PhD (Fourth Edition),Open University Press
=20100125 角谷 快彦 訳,出版サポート大樹舎,310p

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last update:20130930

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■Phillips, Estelle M. & Pugh, Derek S. 2005 How to Get a PhD (Fourth Edition),Open University Press=20100125 角谷 快彦 訳 『博士号のとり方――学生と指導教官のための実践ハンドブック』,出版サポート大樹舎,310p ISBN-10: 4990455509 ISBN-13: 978-4990455507 2730 [amazon][kinokuniya]

■内容

内容紹介
そうだ、博士になろう!
誰も教えてくれなかった博士号取得法
すべての学生と指導教官必携の一冊
博士号の要件とは何か。そして審査はどうするか。
指導教官と学生の関係:指導教官は学生に何を期待し、学生は指導教官に何を期待するのか。
研究の孤独、キャンパスにおけるハラスメントの対処法
増え続ける留学生、社会人学生へのサポートの仕方・・・
答えはすべてここにあります。

内容(「BOOK」データベースより)
博士号の要件とは何か。そして審査はどうするか。指導教官と学生との関係:指導教官は学生に何を期待し、学生は指導教官に何を期待するのか。研究の孤独、キャンパスにおけるハラスメントへの対処法増え続ける留学生、社会人学生へのサポートの仕方…答えはすべてここに―。

■目次

まえがき
日本語版に寄せて
第四版への序文
第I章 博士課程の学生になる
第II章 博士課程に入る
第III章 博士学位の本質
第IV章 博士号をとらない方法
第V章 研究の仕方
第VI章 博士論文の型
第VII章 博士課程のプロセス
第VIII章 指導教官との付き合い方
第IX章 英国系、白人、男性、フルタイム、異性愛者が圧倒的多数を占めるアカデミック環境で生き残る方法
第X章 審査制度
第XI章 指導と審査の仕方
第XII章 研究機関の責務
付録 学生のための研究進捗自己診断
訳者あとがき
参考文献

■引用

◆博士課程では自己責任でスケジュールを管理し、学び、学位を取らなくてはならない。…何が必要で、何をするかは、あなたがしっかりと責任を負わなくてはならない。…/あなたは他人が敷いたレールの上を走るわけではない。あなたは、自ら議論を呼び起こし、必要な手助けを頼み、学ぶべき事柄を選定しなければならない。…「誰もわからない」のは、大学院においては「チャンス」なのだ。[2010:25]

◆アカデミックへの第一歩で大切なのは、学部課程と博士課程の文化の違いをしっかりと認識することだ。学部では課題を「指摘」するだけでよかったが、博士課程はそうではない。[2010:28]


1.その研究科や研究分野で以降三、四年、もしくはそれ以上の年月を過ごす自身の姿が描けるだろうか。多くの博士課程学生は、研究分野に対する興味や確固たる意志を失うことで挫けてしまうのだ。
2.進学を検討している大学の研究科は、評価が確立され、博士課程学生の教育に真剣に取り組んでいるか。この点は躊躇せず人に尋ねるべきだ。それらを確認することは研究科の面接を受ける際にも役に立つ。教員の正確な研究分野等、研究科に関するあらゆる書物を集めよう。例えば、大学ランキングで客観的な評価や研究科の将来を見るのもよい。所属教員の論文を集め、興味のある分野の将来性を見定めよう。実際にその研究科で学ぶ博士課程の学生に話しかけ、実態を把握しよう。[2010:30-31]

◆研究者のネットワークには、指導教官や他の研究者、図書館員、専門分野のデータ検索に精通した司書、セミナーを開催する研究者、同僚等、数多くの人がいる。効率よく研究を行なうには、そうしたネットワークを積極的に活用しなければならない。研究にはインタラクティブな要素があり、社交術も必要なのだ。[2010:42]

◆例え専攻のまったく異なる他研究科の人でも、連絡を取り合うことは有用である。彼らはあなたと同じ環境にいるので、あなたの経験することを理解してくれるであろう。いくつかのグループの同期の学生の名前とメールアドレスを聞き出すことを最初にやろう。そしてそのグループをお互いに助け合う仲間とし、連絡を取り合おう。そのグループがあることで、研究の進捗状況だけでなく、進捗をどのように感じているかについて他人と比較できる。[2010:43]

◆博士号保持者とは、適当な権威、つまり博士課程での研究が、学外の学者や科学者によって認められた人である。更に現代風にいえば博士号取得とは該当分野の「プロの研究者」になることである。「プロの研究者」とは左記である。
□ 同僚に意見を求められる
□ 専門分野で何が起きているかを把握し、その価値を評価できる
□ 研究に貢献する箇所を見つける嗅覚がある
□ 職業倫理を理解し、許される範囲内で研究をする
□ 現在使われている研究手法をマスターし、さらに手法の限界について知っている
□ 専門分野の検証、結果を効果的に説明できる
□ 国際的に通用する同僚が地球規模に存在し、世界中の研究者コミュニティーの間で何が発見され、議論され、書かれ、出版されているかを把握している[2010:48]

◆プロ研究者への一歩を踏み出す時に得ようとするスキルが、研究の水準を評価する能力である。これは常に心に留めておく必要がある。あなたは研究をするために研究をしているのではない。あなたは、あなたが完全にプロの水準…に達した研究手法を会得していることを証明するために研究するのである。…/大事なことは、あなたの研究が専攻分野でプロの水準にあることを示すことだ。…これは、あなたが指導教官や出版された研究から学ばなければならない、最も重要なことである。[2010:49-50]

◆…あなたはプロとしての技術を身に着け、求められる「水準」を理解しなければならない。当面、このことから推測されることは次の二点である。
□ できるだけ早い段階で専攻分野の他人の博士論文を読む。そうすることにより「水準」を知ることができる。他にどんな方法で目指すべき水準を知ることができるだろうか?
□ 研究が進むごとに指導教員のところに行き、これで十分かどうか聞かなければならないとしたら、あなたは間違いなく博士号の水準に達していない。博士とは、プロ研究者の仕事の水準を自分で評価できる者に与えられるのだ。[2010:50-51]

◆博士号取得とは、要は「決意」の賜物なのだということに気づくことは重要だ。このことを知るのは早ければ早いほどよい。研究を成功させることは、他の仕事でそうであるように、「しなければならないこと」である。同じように、目標を立ててそれを達成していくことはとても重要なのである。[2010:55]

◆「研究」とは、物事を単に叙述することよりも上位にあり、説明、関連、比較、予測、一般化、理論を導き出す分析を必要とする。代表的なものに「なぜ?」という問いがある。…/それらすべての疑問に答えるには…情報収集が必要である。情報は、比較、他の要因との関連、理論化、理論の実証によって理解を深めるために使われる。…研究結果を発展させるには、「他の状況でも結果を応用できるか」という問いが必要で、それは博士課程研究の焦点の一つでもある。[2010:83]

◆…「よい研究」には、それぞれが相互に関連する三つの特徴がある。
研究は思考のオープンシステムに基づいている
研究者は、原則として世界を思いのままにできる。何を考えてもいい。…研究者が互いに行なう継続的な「検証」および「批判」は、思考を発展させる上で重要である。…こうした継続的な検証は、まさに我々が「確かでないこと」を精査したり重要な応用を発見したりする手法だ。大事なのは、「正しい答えを知っている」というクラシックな研究者の立場ではなく、「正しい答えは何だろう?」という好奇心に満ちた謙虚な姿勢である。
研究者はデータを批判的に考察する
…/研究者はいつも「その事実は証明された?」、「もっといいデータはないの?」、「この結果は異なる解釈ができる?」と問い続けなければならい。…
研究は汎用性の限界を一般化し、かつ特定する
理論に一般性を持たせるのは研究の目的の一つだが、困難もある。…理論を一般化しても、それが当てはまる場合もあれば、当てはまらないところもある。そしてそれらは常に検証されなければならない。/理論が一般化すると、単なる情報収集が研究へと昇華する。[2010:83-85]

◆仮説は基本的に予測作業とインスピレーションから生まれるが、その妥当性は厳しく検証される必要がある。仮説から導き出された結果が正しくなければ、仮説は棄却されるか修正されなければならない。一方、予測が正しければ仮説は支持されたことになり、その後の研究でそれが否定されるまで妥当性を保持することになる。[2010:86]

◆博士号とは本質的には研究の初心者がプロになるためのトレーニングである。すべての研究に障壁があるが、博士号取得のための研究については経済面、身体的制約、事務的バックアップ等の条件に恵まれていない場合が多い。…/この状況下で最適なのは「検証型研究」である。この枠組みの中で派生するアイデアや議論、測定方法を用いて研究を計画することが最も効率がよい。…/検証型は「研究分野に対するオリジナルな貢献」という博士号の要件に対しても効果的だ。…すべての研究分野には常に多くの研究の余地がある。そもそも、検証とはアカデミックな研究において、プロが行なうべき「基本」であり、博士号のためにこのアプローチを用いることは、キャリアパスの観点からも有意義である。[2010:88-89]

◆研究は「職人」仕事。故に基礎は「やりながら」覚える。研究のアプローチと研究分野を決めたら、必要とされるスキルをどのように習得するか、体系的に考えなければならない。/…最初の段階で重要なのは、研究分野の「お手本」を見て、どんなスキルやテクニックを用いているか、できるだけ体系的にまとめることだ。…指導教官以外の他の人からも学びとろうとする姿勢は重要である。/次はそれらのスキルを、フィードバックをもらいながら、できるだけ使ってみることだ。…よい結果を得ようとするなら技術を磨く以外にないのだ。[2010:90-91]

◆博士号取得に際し、考えなければならない型は四つある。背景となる理論、焦点となる理論、データ理論、そして貢献である。…/「背景」とは研究分野のことだ。…(分野の)何が発展し、何が論点で、課題が何処にあるのかを理解していなければならない。/論文の中でこれを端的に指し示す箇所が、いわゆる「先行研究(Literature review)」である。先行研究は先行する研究を羅列するためにあるのではなく、研究分野の背景を研究者自身がプロとしてよく知っているという事実を示すためにある。…したがって、参考になる題材を整理し、他研究の分野への貢献を評価(場合によっては批判)し、研究の潮流を見極め、論理的・実証的に未発達な部分を定義することが、背景となる論理を提示する鍵となる。…/博士号の型の二番目の要素は「焦点となる理論」である。何を、どういう理由から研究するのかを明確に示す部分だ。課題を挙げ、可能なら仮説を導きだし、他の論拠を考察し、自分で集めたデータとその分析を使って主張をアカデミックな議論に昇華させることが、ここですべきことである。/…焦点となる理論の研究には、狭義の「主張(thesis)」が必要だ。これによって初めて、明確な「論の展開」で研究を焦点となる理論に関連づけることができる。また、「主張」にはそれを裏付けるデータと、分野において求められるレベルの論拠が必要だ。論拠は曖昧でも焦点からずれていてもいけない。常に焦点となる理論にフォーカスされていることが重要である。/博士号の型の三つ目は「データ理論」である。これは、一般的に主張をサポートするために使う材料の関連性、および妥当性を証明するものだ。…/データ理論のコンセプトは分野によって大きく異なるが、共通して重要なのはデータソースの妥当性である。…/データ理論の妥当性の証明は、博士論文完成の必須要件の内、最も高度で匠の技が求められるものだ。最新の研究論文や、高い評価を受けた他人の博士論文を精読し、指導教官としっかり議論してこの課題に取り組む必要がある。/論文の「知への貢献」を書き出すことは、博士号の型の最後の要素であり、論文の重要性を自己評価することだ。分析の重要性を強調し、論の限界を指摘し、今後の課題について述べる。簡単に言えば、研究によって、なぜ、どのように、「背景となる理論」と「焦点となる理論」が変わったかという議論である。そして、その議論は研究を引き継ぐ人…の立ち位置を決める際の助けとなる。…研究、特に博士号取得のための研究とは、分野の最新情報を得て、新たな研究が、それが自分のものであれ他人のものであれ、分野にどのような影響および貢献をもたらすのかを客観的に評価できる、プロ研究者としての能力を示すために行なうのだ。[2010:94-97]

◆オリジナリティのコンセプト
1.初めて書かれる新しい情報の核心部分
2.過去のオリジナルな研究の続き
3.指導教官がデザインしたオリジナルな研究の実施
4.既存の研究の核に提示するオリジナルな検証、技術、観察方法
5.所属大学院の指示の下、他研究が行なった調査にオリジナルな考え、調査法、解釈をもたらすこと
6.他人のアイデアをオリジナルな方法で検証すること

1.過去になされたことのない実証を行なう
2.これまでなされたことのない(論などの)統合を行なう
3.新たな解釈で既知の材料を使う
4.海外でしかなされていなかったことを自国で行なう
5.ある特定の技術を新しい分野で使う
6.新たな根拠で過去の研究を補足する
7.複数分野にまたがって、さまざまな調査方法を用いる
8.専攻分野の研究者がまだ研究をしていない事象を扱う
9.これまで試みられなかったやり方で新たな知識を追加する[2010:100-101]

◆もし、自分が書いたものをあたかも他人が書いたもののように読むことができれば、自身の不正確で雑な文章を簡単に批判できる。自身と自分の書いたものの間に「距離」を置く方法は、書いたものを二、三日机の脇に置いた後、初めて手に取るような気持ちで読んでみることだ。そうした時間がない場合は、…友達に電話したり会いに行ったりして、「間」を置いた後に読んでみる。こうした心理的な「スイッチ」の切り替えは「距離」を置くのに役に立つ。もう一つのやり方としては、書いたものを声に出して読んでみることだ。書いたものを耳で聞くと「言いたかったこと」と「(実際に)言ったこと」の違いに気づくだろう。同様に、「読み」を録音して、後で聞いてみるのも効果的だ。[2010:104]

◆ともかく、常に何かを書き続けること。論文の最も取り組みやすいところから書いたらよい。[2010:106]

◆大学院生として重要なのは研究分野の進展に常に目を配り、最新の情報を押さえていることを示すことだ。[2010:126]

◆博士号取得までの道のりには、孤立や孤独に苛まれる時期がある。しかし、あなたが他の人と定期的に会う約束をし、助け合うことができれば、それを乗り越えられる。/第一に、あなたは誰にも研究に興味を持ってもらえず、気にもされないような孤独の中に居るわけではない。…大学院生活のごく一般的な不安の兆候に過ぎないのだ。気分の落ち込みが、いつの世も、ほとんどの研究学生が共通して経験するものと気づけば、それは単に乗り越えなければならない過程の一つであることがわかる。/さらに、そうした気持ちを誰かに話すことができれば気持ちが一層楽になる。グループの中の一人が問題に直面すれば他の人が助けることができるし、それがグループの別の人に生じれば、今度は最初に悩んだ人がその人を助ける番だ。…/グループやペア…の実用的な利点は、締切りを守ることに役に立つことである。…/研究学生同士のグループやペアを組むことのもう一つの利点は、研究にフィードバックを得られることだ。彼らは不明瞭な箇所を質問することで互いに文章をより明確に、シンプルにわかりやすく改善するのに役立つ。複雑な構造の文章や論理の展開の難解な箇所は批判しあう。研究の解釈には論理の飛躍を質問し、互いの研究に興味を持つと共に論の展開の仕方について互いに学び合う。[2010:136-138]

◆指導に関する議論のまとめとして、指導教官と学生双方にとってよい指導の「成果」について触れたい。成果とは次のことである。
□期限内に博士号に見合う成果を得ること
□研究の結果がトピックに貢献できること
□学会発表、それに伴って学生が外部からの批判・評価に触れる機会得ること
□学生が共に議論し、論文審査官の候補にもなる学外の学者との接触ができること
□学術誌に論文を投稿、これにより学生は論文の掲載審査を通じて研究に対する批評を受けられること
□ポストドクター研究への挑戦をすること
□学生が研究者としての歩みを始めることによって、指導教官も刺激を受け、相乗効果を生み出すこと [2010:255-256]

■書評・紹介

■言及



*作成:片岡 稔
UP:20101124 REV:20130625 0627 0701 0716 0902 0926 0930
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