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『社会運動研究入門――社会運動研究の理論と方 法』

帯刀 治・北川 隆吉 編 20041210 文化書房博文社,297p.


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■帯刀 治・北川 隆吉 編 20041210 『社会運動研究入門――社会運動研究の理論と方法』,文化書房博文社,297p. ISBN-10: 4830108800 ISBN-13: 978-4830108808 2835 [amazon]

■内容(「MARC」データベースより)
社会学的研究をめざす初学者にも理解しやすい社会運動研究の理論と技法について紹介することを目的に、社会運動研究の基本的視点、理論と研究技法、現代的 位相と研究課題についてまとめる。

■著者紹介

帯刀治[タテワキイサオ]
茨城大学

北川隆吉[キタガワタカヨシ]
現代社会構想・分析研究所

■目次

刊行の趣旨と目的
第T部 社会運動研究の理論と方法
 第1章 社会運動研究の基本的視点と課題/北川隆吉
  1 20世紀から21世紀へ―人類史を担うのは人類そのものである―
  2 社会運動の意義と本質
  3 社会運動研究上の三つの注意点
 第2章 社会運動研究の理論と技法/帯刀治
  はじめに
  1 社会運動の理論
  2 社会運動研究の技法
  3 社会運動の類型
  4 社会運動の諸領域
  むすびにかえて
第U部 戦後日本の社会運動―歴史的・理論的分析―
 第1章 市民運動の変化と制度・政策要求/牛山久仁彦
  はじめに
  1 市民運動の形成と成長
  2 市民運動の変容と分権型社会
  3 市民運動からNPOへ
 第2章 市民運動の現在―NPO・市民活動による社会構築―/高田昭彦
  はじめに NPO段階の市民運動を捉えるにあたって
  1 市民運動における「市民」の概念
  2 戦後日本の市民運動
  3 現在の市民活動(NPO)における問題点
  4 NPOサポートセンターによるNPOの支援―インターミディアリー(中間支援組織)の重要性
 第3章 日本の労働組合運動の今日的位相と研究課題/浅見和彦
  1 労働組合運動研究の諸潮流
  2 労働組合運動の研究方法と課題
   ―布置状況、相互連関、主体形成を把握する枠組み―
  3 運動の布置状況と研究状況・課題
  4 これからの課題と研究のスタンス
 第4章 日米比較にみる労働組合運動と他の社会運動/坂幸夫
  はじめに
  1 労働組合運動と他の社会運動とのかかわり―日米の違い―
  2 日米における労働組合の組織形態の違い
  3 日本の労働組合運動と他の社会運動のかかわり
  4 アメリカの組合運動と他の社会運動
  むすびにかえて
 第5章 現代の社会運動の組織形態/星野潔
  はじめに
  1 社会運動組織への視角
  2 1960年までの社会運動の展開と運動組織
  3 1960年代以降の社会運動の変化と運動組織の形態
  4 運動組織の形態の多様化と「ネットワーク」
  むすびにかえて
 第6章 グローバル化と社会運動/稲葉奈々子
  1 「反逆する尊厳」―グローバル化と新しい行為者の誕生―
  2 国境を越える現象・国境を越える行為者
  3 グローバル化という構造の変化
  4 グローバル化と社会運動の担い手の変化
  5 排除された者たちの抵抗のかたち
 第7章 まちづくりに取り組むNPO/帯刀治
  はじめに
  1 NPO活動進展の社会的背景
  2 NPO制度とNPO法人の特徴
  3 まちづくりに取り組むNPOの可能性
  むすびにかえて
 文献リスト/小笠原尚宏・柳沢志津子・三上真理子
 あとがき
 索引

■引用

□第3章 日本の労働組合運動の今日的位相と研究課題/浅見和彦

「日本の労働組合運動における布陣、布置状況とその相互連関を俯瞰する理論的枠組みは、残念ながら現在でもほとんど存在しない、といわなければならない。 後にも見るように、民間大企業を中心とした個別分野の研究に終始している状況が続いてきていたのである。」(p.113)

「この労働者類型論は、「労働組合の特性は、ユニオン・リーダーの個性や政党との関係などよりも、日本的労使関係の強弱・有無にもとづく労働者の類型に いっそう強く規定されている」と強調したのだが、同時に、他方で、「政治潮流との関係」や「労働組合の運動主体としての伝統」「ユニオンリーダーのパーソ ナリティ」「運動論・組織論の違い」といった運動主体の諸要因自体が労働組合運動研究、とりわけ社会学的研究にとっては重要になる。」(p.117)

「さらに、90年代後半には、企業別労組が大企業男性正規従業員組織という一種の階層的「性別労組」としての性格を有していることに対応し、企業別労組か ら排除されるか、これになじまない、たとえば女性ユニオン東京(小谷幸,1999)などの女性労働者組合や東京管理職ユニオン(小谷幸,2001)などの 管理職組合も出現した。また、明確に労働組合を名乗らない「商社にはたらく女性の会」や「電機労働者懇談会」などの企業の枠をこえた恒常的な産業別活動家 組織なども労働組合的組織と捉えられる。  とはいえ、女性ユニオン東京や東京管理職ユニオン、あるいは後述するコミュニティ・ユニオンなどのみを新しい動向として注目するとすれば(河西宏祐, 1998)、それは視野を狭めることになるだろう。」(p.122)

「また、非典型労働者の組織化の例として、コミュニティ・ユニオンがある。1980年代前半期に各地で出現し、地域を基礎に、非正規労働者を組織対象とし て、主として個人加盟方式を採用し、女性の比率が高いという組織上の共通点をもっていて、全国でおよそ3万人を組織していると推定されている。活動の内容 としては、@労働法規の重視、A紛争の個別的話し合い、B相談活動、C共済活動、D労働者供給事業や協同組合事業などの特徴を指摘できる(高木郁朗, 1998)。」

「しかしながら、こうした大量観察調査を除くと、労働組合と労働者政党との組織の相互関係については政治学を含めて研究が少なくはないものの、労働組合運 動の内部における運動諸潮流、活動家集団、労働者政党の役割については研究が依然不十分である。この問題領域に関する社会学的調査・研究は、最近でも国鉄 労働組合における事例研究(鈴木玲,1999)などを除くとごく少数にとどまっている。」(p.133)

「一つは、戦後の研究史のなかで、労働組合運動の研究は運動の主体を研究することであるとの指摘にてらして研究の到達点を確かめることである。
 戦後の労働組合研究は、経済学の立場からのそれは、社会政策学のそれを労働者の主体性を無視ないし軽視するものとして批判し、また労働社会学の立場から は、経済学の立場からのそれを運動の基礎構造を解明するにすぎず、労働者の主体性を軽視するものとして批判するという問題意識をもった者も少なくなかっ た。しかしながら、いずれの学問領域でも、労働者の主体性を軽視し、使用者側の統合努力や運動条件、労働者状態を過度に強調する傾向を生まなかったわけで はない。」(P.136-137)

「(…)また、未組織労働者の組織化というプロセスは、組織化しうる、戦略的に重要な位置を占めるようになった労働者の発見と、それにふさわしい組織形態 の探求という、二つの側面を含むと考えられる。この分野での理論的な研究がほとんどなされていないのも克服する課題の一つであろう。
 最後に、これらの研究の蓄積の上にということになるが、再び、労働組合運動の全体的な布陣とその主軸や相互関連を解明することのできる理論、枠組みをつ くりあげるという、けっして容易とはいえない課題があることは指摘するまでもないだろう。」(p.138-139)

■参照
 浅見和彦(専修大学経済学部教授/労働組合の組織化活動)
 http://reach.acc.senshu-u.ac.jp/Nornir/html/1204290.html


UP:20070829
日本の労働(組合)運動 ◇
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