HOME > BOOK >

『統合失調症あるいは精神分裂病――精神病学の虚実』

計見 一雄  20041210 講談社選書メチエ,290p.

last update: 20110404

このHP経由で購入すると寄付されます

計見 一雄 20041210 『統合失調症あるいは精神分裂病――精神病学の虚実』,講談社選書メチエ,290p. ISBN-10: 406258316X ISBN-13: 978-4062583169 [amazon][kinokuniya] ※ m.

■著者

一九三九年東京都生まれ。千葉大学医学部卒業。医学博士。一九八五年千葉県精神科医療センターの設立にあずかり、今日もセンター長をつとめる。精神医学の中に「精神科救急医療」の領域を拓いて実践し、臨床に携わっている。日本精神科救急学会理事長。訳書にG・レイコフ、M・ジョンソン『肉中の哲学』(哲学書房)ほか、著書に『脳と人間』(三五館)、『インスティテユーショナリズムを超えて』(二星和書店)、『精神救急ハンドブック』(新興医学出版社、改訂近刊)ほか多数。(裏カバー)

■広告

目の前の何でもない風景が急にまがまがしく見える時。そこからはじまる「病」はいかに進展するのか? いかに回復していくのか? 果たして何が「分裂」し、何が「失調」するのか? 精神科急性期治療の第一線に立ち続けてきた著者が、従来「精神分裂病」に付随して語られてきた誤謬を論破し、治癒へつながる「病の本質」を解明する講義! (講談社選書メチエ)

内容(「BOOK」データベースより)
目の前の何でもない風景が急にまがまがしく見える時。そこからはじまる「病」はいかに進展するのか?いかに回復していくのか?果たして何が「分裂」し、何が「失調」するのか?精神科急性期治療の第一線に立ち続けてきた著者が、従来「精神分裂病」に付随して語られてきた誤謬を論破し、治癒へつながる「病の本質」を解明する講義。

■目次

第1回講義 決まり文句を疑う
第2回講義 精神医学に潜む虚妄
第3回講義 急性期医療と「陰性症状」
第4回講義 現実と妄想
第5回講義 妄想の発生と由来
第6回講義 運動が阻害されるということ
第7回講義 取り憑かれるということ
第8回講義 「自我」「自分」「主体」「自己」
第9回講義 何が分裂し、何が統合されるのか

■引用

「SSTのあほらしさ
 ここでちよっとSSTの話をします。私にとってはひどくあほらしいような体験でした。私ははじめ"Super Sonic Transport"の略で超音速旅客機のことだと思っていたんですが、そうではなくて"Social Skills Training"つまり「社会生活に必要な技倆の訓練」です。このSSTという考え方は、「病院の開放化」をして地域に一緒に出て行き、その中で色々困ったわね、という体験力から出てきている。良くも悪くもウイングやクロウ(後出)や,その仲間や後継者たちの流れから出てきているんだと思います。
 ところが日本では、肝心なデインスティテューショナリゼーション、つまり自分のところの慢性の患者さんの処遇を変えて、自由にして、一緒に出て行くという実践をやったことのない人が、SSTを持ち回るんでず。あるところで精神保健指定医の講習会がありました。大きな病院の院長さんが「SSTはこういう風にやるんです」と言ってビデオを見せてくれました。<0014<
 一〇坪ぐらいの部屋があります。向こうにドアがあって、部屋の真ん中に診察机があります。そこにその院長先生が座っておられた。 先生の椅子は立派な椅子です。そして、診察机の向こうには婦(師)長さんらしき人が控えています。向こうにあるドアが開いて、比較的若いナースに引率された、私のよく知っている人々、昔から私のお友だちだったような、明らかにずいぶん長いこと収容されましたね、ということが一目で分かるような患者様たちが五、六人入ってきました。引率されて、ぞろぞろとドアのところに並ぶ、そこにいる婦(師)長さんが順番に院長さんの前に誘導する。これは比較的小さな椅子です。「あなたはまっすぐに目を見てお話をしましょうね」とか「この前より目が合うようになりましたね」なんことを言われている。で、これがSSTの訓練だというんです。その院長はよくやっている精神科医で、地域内にもいろいろな施設を持っていて、私は病院としてはまあAクラスの民間病院だと思っています。それでも、患者たちがぞろぞろと列を作って従順そのもきのお行儀でうなだれて入ってくる。先生の前に一人ずつ呼ばれて、残りは待っている。そういう境遇に置いていることを問わないで、「目を見て話せ」はないだろう、というのが私の感想でした。
 そうして、この先生もその講義で「分裂病の患者さんは陽性症状がなくなっても、陰性症状が残存しているから、こういう訓練は有効だ」と主張されていました。」(計見[2004:14-15])

 「昔、昔、神戸大学に黒丸正四郎さんという教授がいました。この人は京大から行った人で、児童精神医学の凄くできる人でした。天才的な学者でしたね。ある時期、俺たちは暴れたから、児童精神医学会を粉砕したりしたから、当時は怒っていたと思います。そのずっと後に神戸のバーで一緒に会って、その時に再確認した黒丸学説っていうものが俺の頭の中に残っていた。」(計見[2004:17])

■言及

◆立岩 真也 2013/12/10 『造反有理――精神医療現代史へ』,青土社,433p. ISBN-10: 4791767446 ISBN-13: 978-4791767441 2800+ [amazon][kinokuniya] ※ m.


*作成:山口 真紀
UP:20110404 REV:20130814
計見 一雄  ◇精神障害/精神医療   ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
TOP HOME (http://www.arsvi.com)