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『【解説】性同一性障害者性別取扱特例法』

南野 千恵子 20040916 『【解説】性同一性障害者性別取扱特例法』日本加除出版,338p.


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■南野 千恵子 監修 20040916『【解説】性同一性障害者性別取扱特例法』,日本加除出版,338p.  ISBN-10: 4817812907 ISBN-13: 9784817812902 3300 [amazon] ※ s00/t05

■目次

本書の刊行に寄せて(斉藤 十郎)
性同一性障害者性別特例立法の制定・施行に寄せて(陣内 孝雄)
出版にあたって思うこと(山内 俊雄)

第1章 性同一性障害者性別特例立法に関する取組と経緯 
性同一性障害者性別特例立法に関する取組と経緯(南野 千恵子) 2
第2章 性同一障害をめぐる課題
T 性同一性障害の医学的概念と現状(針間 克己) 16
U 性同一性障害に関する法的な諸問題(大島 俊之) 36
第3章
性同一性障害者性別特例立法逐条解説 72
第4章 性同一性障害者性別特例立法Q&A
性同一性障害者性別特例立法Q&A細目次 110
第1 性同一性障害等について 115
第2 法律の制定等について 121
第3 法律の対象となる性同一性障害者の定義について 123
第4 性別の取扱いの変更の審判を請求できる性同一性障害者の要件について 129
第5 性別の取扱いの変更の審判の手続きについて 138
第6 性別の取扱いの変更の審判の効果について 142
第7 審判を受けた人の戸籍について 144
第8 その他 148
第5章 法律の制定に寄せて 152
人間万事塞翁が馬――暗黒時代から特例法制定まで――(原科 孝雄) 152
「特例法」の制定に寄せて――産婦人科医の立場から――(石原 理) 156
法律が性同一性障害者にもたらす幸福な生涯(星野 一正) 160
今回の特例法の機会に思うこと(石原 理) 156
一当事者から見た暗い時代の話(虎井 まさ衛) 160
第6章 参考資料
T 法律関係資料
○性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律 180
○性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律案要綱 183
○「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律案」提案理由説明 185
○性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の英文約 187
○特別家事審判規則(抄) 191
○平成16年5月18日厚生労働省令第99号 193
○平成16年5月18日付け障精発第0518001号厚生労働省社会・援護局障害保険福祉部精神保健福祉課長通知 194
○戸籍法(抄) 202
○戸籍法施行規則(抄) 204
○平成16年6月23日付け法務省民一第1813号民事局長通達 208
○平成16年6月23日付け法務省民事局第一課補佐官事務連絡 212
U 法律の制定に対する要望・意見に関する各種資料 
○関係諸団体からの要望書 236
○性同一性障害者の法的性別に関する意見書(日本弁護士連合会) 243
○「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」に関する会長談話(日本弁護士連合会) 250
V 地方自治体における取組
東京都小金井市の取組事例 252
千葉県市川市の取組事例 254
東京都世田谷区の取組事例 256
W 性同一性障害者の問題にかかわる判例
――戸籍の性別記載の訂正関係――
最高裁判所平成15年5月28日第二小法廷決定 258
東京高等裁判所平成15年3月27日決定 259
東京高等裁判所平成12年2月9日決定 266
――ブルーボーイ事件――
東京高等裁判所昭和45年11月11日判決 275
東京高等裁判所昭和444年2月15日判決 279

X 性同一性障害に関する各種資料
性同一性障害者に関する診断と治療のガイドライン(第2版) 301
ICD-10によるGIDの分類・診断基準 322
DSM-IV-TRによるGIDの分類・診断基準 336

監修・編集・執筆者一覧


■引用
第2章
U 性同一性障害に関する法的な諸問題(大島 俊之)

「(1)ブルーボーイ事件判決
わが国の刑事判例において、トランスセクシュアルに睾丸摘除手術をした産婦人科医に対して、刑事責任が追求された例がある(第1審・東京地裁昭和44年2月15日判決〔有罪〕・判例タイムズ233号231頁、判例時報551号26頁、第2審・東京高裁昭和45年11月11日判決〔有罪〕・高等裁判所刑事判例集23巻4号759頁、判例タイムズ259号202頁、判例時報639号107頁)。この事件においては、優生保護法(現在の母体保護法)28条の「何人も、この法律「の規定による場合の外、故なく、生殖を不能にすることを目的として手術またはレントゲン照射を行ってはならない」という規定に違反したとして、有罪とされた。
 第1審判の判旨の核心的な部分を紹介する。「性転換手術が法的にも正当な医療行為として評価され得るためには少なくとも次のような条件が必要であると考える」。(イ)「手術前には精神医学ないし心理学的な検査と一定期間にわたる観察を行うべきである」。(ロ)「当該患者の家族関係、生活史や将来の生活環境に関する調査が行われるべきである」。(ハ)「手術の適応は、精神科医を混えた専門を異にする複数の医師により検討されたうえで決定され、能力のある医師によ<50<り実施されるべきである」。(ニ)「診療録はもちろん、調査、検査結果等の資料が作成され、保存されるべきである」。(ホ)「性転換手術の限界と危険性を十分に理解しうる能力のある患者に対してのみ手術を行うべきであり、その際手術に関し本人の同意は勿論、配偶者のある場合は、未成年者については一定の保護者の同意を得るべきである」。
「従って被告人が本件手術に際し、より慎重に医学の外の分野からの検討をも受ける等して厳格な手続を進めていたとすれば、これを正当な医療行為と見うる余地があったかもしれないが、格別差迫った緊急の必要もないのに、〔中略〕自己の判断のみに基づいて、依頼されるや十分な検査、調査もしないで手術を行ったことはなんとしても軽率の誹りを免れないのであって、現在の医学常識から見てこれを正当な医療行為として容認することはできないものというべきである」」。(pp.50-51)

「(3)私見
日本精神神経学会のガイドラインに従って性別適合手術を行った医師の刑事責任を問うべきではないと考える。母体保護法28条は「生殖を不能にすることを目的」とする手術を禁じている。しかし、トランスセクシュアルに対する性別適合手術は、性同一性障害に対する治療を目的としており。母体保護法には違反しないと考えられる。
また、刑法上の傷害罪(刑法204条)については、違法性が阻却されると考えられる。日本精神神経学会のガイドラインに従った性別適合手術は、違法性阻却事由に該当するための次の3つの要件を満たしていると考えられる。@性別適合手術について、患者の同意・承諾がある。A性別適合手術は性同一性傷害者に対する治療を目的としている。B性別適合手術は、医学的に承認された手段・方法に依拠している。したがって、性別適合手術は、「正当な業務による行為」として、違法性阻却事由に該当する(刑法35条参照)と考えられる。
日本精神神経学会のガイドラインに従っていない手術は、上記3要件のうちのB「医学的に承認された手段・方法」に依拠していない、と判断される可能性を、完全には払拭することができない。」(p.51)

「2医療保険
(1)性別適合手術に医療保険を適用すべきか
 欧米では、医療保険によって、性別適合手術の費用をカバーしている国もあれば、カバーしていない国もある。興味深い例として、スイス連邦保険裁判所の判決の変遷を紹介する。
@連邦保険裁判所1979年6月11日判決は、専門委員会の決定(1976年5月13日)に基づく連邦内務省の決定(1976年11月24日決定)を尊重して、性別適合手術は保険給付の対象外である、と判示した。
A連邦保険裁判所は1988年6月6日判決およびB連邦保険裁判所1988年9月16日判決は、元の性の性器(男性器)を切除する費用については保険給付の対象とし、新しい性の性器(女性器)を形成する費用については保険給付の対象外とした。
C連邦保険裁判所1994年6月6日判決は、新しい性の性器(女性器)を形成する費用についても保険給付の対象としたが、美容師によって実施された電気脱毛の費用は保険給付の対象外とした。
(2)保険給付の対象外とすべき理由として主張されること
 @性別適合手術は、健全な組織を傷つけるものであって、医療行為ではない。A性別適合手術は、当事者が自己の身体について抱いている理想のイメージに近づけるものに過ぎず、美容整形である。B性別適合手術の効果に関して、医学会の見解が一致していない。特に長期的な効果が確認されていない。
(3)私見
健全な組織を傷つけるのは、より重大な危険、つまり自殺あるいは自傷行為を阻止するためである。A性別適合手術は、苦悩の軽減または除去を目的とするものであって、治療行為である。B専門家の間では、性別適合手術は効果的な治療方法として受け入れられている。
憲法25条1項は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定している。性別適合手術は高額である。それにもかかわらず、現在のように保険の適用がないことは、実際上、多くの性同一性障害の当事者から、治療の機会を奪うことを意味する。このことは、憲法25条1項に違反すると考えられる。」(p.52)


第5章 法律の制定に寄せて
一当事者から見た暗い時代の話(虎井 まさ衛)

「「3年B組金八先生」という人気テレビドラマをご存知だろうか。あの第6シリーズに出てきた女から男への性同一性障害の生徒の設定は、私の自伝からいくつかのエピソードを取っている。私の友人のエピソードも取られており、その生徒が自分の女性の声が嫌で、喉にフォークを刺してしまうというシーンには、「やり過ぎだ」とのクレームがついたということだが、それは私の友人が実際にやったことである。友人はフォークで一刺しではなく、焼鳥の金串で声帯をガリガリこすり、血ヘドを吐きつつも、声を潰して男のようにしたのだった。私も自分の女声が嫌で、口がきけないふりをしていたものである。人の性別を推し量る際に声というものは、一般に考えられるよりもずっと大きな比重を占めているのだ。
 もちろん肉体そのものをも忌み嫌う。私は自分の身体に触れるのも見るのも嫌で、暗闇で着替え、排泄し、入浴していた。胸のふくらみを隠すためにサラシをきつく巻き、真夏の炎天下でよく熱射病で倒れた。その時に介抱してくれた見知らぬ人に対しては、感謝の思いが満ち溢れたが、声を<174<出すのが嫌で「ありがとう」と言えなかった……。」(pp.174-175)


■書評・紹介

■言及


*作成:高橋 慎一
UP: 20080525 REV:20081104
性(gender/sex)   ◇トランスジェンダー/TS・TG/性同一性障害   ◇身体×世界:関連書籍 2000-2004  ◇BOOK
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