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『分権化と地方財政』

池上 岳彦 20040625 岩波書店,249p.


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池上 岳彦 20040625 『分権化と地方財政』,岩波書店,シリーズ・現代経済の課題,249p. ISBN-10: 4000270451 ISBN-13: 978-4000270458 2730 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

■著者紹介

池上岳彦[イケガミタケヒコ]
1959年宮城県生まれ。東北大学法学部卒業。東北大学大学院経済学研究科博士課程修了、博士(経済学)。新潟大学商業短期大学部、新潟大学経済学部を経て、現在、立教大学経済学部教授。専攻は財政学、地方財政論。論文「カナダの財政調整制度」(『立教経済学研究』第56巻第3号)により、第29回東京市政調査会藤田賞を受賞

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出版社/著者からの内容紹介
国民生活に密接に関係する地方財政がいま危機に瀕している.地方税財政制度の歴史と国際比較をふまえつつ,「分権的福祉政府」システムの構築を提起.地方税の拡充と地方交付税の改善を中軸とする地方財政改革を提唱する.

内容(「BOOK」データベースより)
分権的福祉政府の構想。深刻さを増す地方財政の危機。日本の財政制度の何が問題なのか。国際比較をふまえつつ現行制度の限界を明らかにし、抜本的改革案を提起する。
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■目次

第1章 分権化への圧力――グローバル化、市場化、そして少子・高齢化
第2章 日本地方財政の特徴と改革論―分権か、縮小か
第3章 「分権的福祉政府」の財政システム
第4章 地方税の拡充――税源移譲と課税自主権
第5章 財政調整制度の意義と地方交付税の改善
第6章 地方債発行の規制緩和
終章 地方財政運営システムの分権化

■引用

第1章 分権化への圧力――グローバル化、市場化、そして少子・高齢化

 「グローバル化と分権化はどのような関係にあるのか。
 第一に、グローバル化が進行することは、国際的企業の活動と人間生活の「ズレ」を拡大させている。国際的な労働力の移動は資本の移動ほど自由ではないし、個々の人間はどこかの地域に居住して生活している。むしろ、人々が地域で生活しながら人間形成や世代間協力を推し進めることが従来にも増して重要視されるようになってきた。<0008<
 そこで、財政的な所得・富の再分配のなかで、公的扶助・年金などの現金給付による所得保障は社会保障基金もしくは中央政府の役割だとしても、政策の重点は福祉・医療サービス等の現物給付を重視する方向へシフトしてきている。そこで、教育、保育、介護、保健・医療、環境等、広義の対人社会サービスを担う地方政府の役割が拡大しているのである。とくに教育については、IT化は始めとする技術革新や国際競争に対応する高度職業人育成や再教育、生涯学習といった要求に応えるために、従来の教育に加えて、教育と職業訓練の結合という動きが加速されている。そこで、需要サイドのみならず供給サイドの経済・社会政策においても、地方政府の役割は拡大する。
 これらの条件、とくに前者は、地域により密着した地方政府が権限と財源を持ち、サービスを展開する分権的政府システムを促進する大きな要因になっている。対人社会サービスと生活基盤整備、環境保全等は、地方政府が地域の視点に基づいて分権的に政策展開するほうがよい、という積極的な分権論もある。たとえば、北欧諸国やカナダと員た分権的政府システムをとる国家でも社会保障システムは根付いているのである。」(池上[2004:8-9])

 「基本的な公共サービスは住民に最も身近な基礎的地方政府が優先的に遂行し、それでは不十分なものについて広域的地方政府、中央政府と担当可能な政府の規模を順次拡大していく「補完性原理」(principle of subsidiarity)が、分権的政府システムの基本である。分権的政府システムの下では、サービスの充実に対する地方政府の責任及び大勢3を確立して、地方税を中心とする財政調整制度がそれを補完する。
 これらの動きを総括したものを、本書では「分権的福祉政府」と呼ぶ。この場合、狭義の社会保障制度のみならず、人間形成に密接に関わる教育や生活基盤としての環境衛生等も含めた広義の対人社会サービスを「福祉政府」の役割としてとらえる。つまり、「文展的福祉政府」とは、中央政府の「縦割り行政」を超えて対人社会サービスを拡充するシステムである。」(池上[2004:8-9])


UP:20100408 REV:
池上 岳彦  ◇  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
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