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『いのちくらし 生活保護Q&A50プラス1――あきらめる前にこの一冊』

竹下 義樹 編 20040430 高菅出版,192p. 2201


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■竹下 義樹 編 20040430 『いのちくらし 生活保護Q&A50プラス1――あきらめる前にこの一冊』,高菅出版,192p.
   ISBN:490179311X ISBN-13: 978-4901793117 2201 [amazon] b i03j

■出版社/著者からの内容紹介
 生活保護行政は、1981年に出された「123号通知」以降、生活保護の申請(申込)に対する抑制と保護利用者に対する人権侵害的な締め付けが強化されてきた結果、90年代より生活保護をめぐる審査請求や訴訟が急増する。
 現行の生活保護法そのものに問題がないとはいえないが、本来の趣旨を踏まえた運用がなされるならば、憲法25条の生存権も相当程度保障できるはずなのだ。そのための様々な全国の事例を取り上げ交流し、また審査請求や訴訟のたたかいの輪を広げるため、1995年に全国生活保護裁判連絡会を結成し、今日まで活動している。
 本書は、この全国生活保護裁判連絡会のホームページ(2000年7月開設)によせられた、200件を超える(現在更に更新中)相談の中から、よくある相談や重要と思われる事例、さらに他の相談においても参考となる事例を誰もが手軽に参照できる形、Q&A方式にまとめたものである。
  回答は、利用者の権利が保障され、要求が実現されるよう、実践的、実効的なものとなるよう、また、現在の制度や実施要領の限界と思われる場合でも、利用者の権利を実現させるための見解や方法を最大限示すよう心がけられている。

■内容(「MARC」データベースより)
生活に困窮した人が権利として生活保護を利用できるように、よくある相談等をまとめる。生活保護制度の概要をやさしく解説した「生活保護のあらまし」と、実際に困ったときの実践的対処法を解説した「Q&A」で構成。

■出版社からのコメント
国の福祉切捨て政策が強行され、社会保障制度全体が後退する中、私たちの生活の最後の砦である生活保護はまさに「出番」の時勢といえる。すべての人が等しく貧困から免れ生存権が保障され、充実した人生を送ることができるよう、本書を活用していただきたい。

■著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
◆竹下 義樹
 全国生活保護裁判連絡会
(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■抜粋
生活保護制度は、世間一般では「近づきにくい」「ややこしい」制度というように受け止められているようです。しかし、本来は、そんなに難しい制度ではありません。制度を難しくしている原因は、むしろ現在の行政運用にあると思われます。この項では、生活保護がその「出番」にふさわしく、使い勝手のよい制度として、大いに利用されるよう、どのような場合に利用できるのか、制度のあらましと利用のポイントについて簡単に説明します。
1 どのような場合に生活保護と出会うことになるのか 〈ケース1〉失業と生活保護 〈ケース2〉病気と生活保護 〈ケース3〉離婚と生活保護

■REVIEW:
かゆい所に手が届くよう工夫してあり、ケースワーカーも手元に置きたい。(2004年4月13日付け読売新聞)

■REVIEW:
「生活保護制度を役所の手から、市民の手に」。そんな志が伝わってくる。(2004年4月24日付け朝日新聞)

■目次

 まえがき
 凡例
 本書の利用法
 全国生活保護裁判連絡会について

 T 生活保護のあらまし――利用のためのポイント

 U Q&A
   生活保護フローチャート

 第1章  私は保護を利用できますか?
 第2章  外国人への生活保護適用
 第3章  ホームレスへの援助は?
 第4章  けんもほろろに追い返された 生活保護の「申請」――とにかく申請を受理させよう。
      覚えておきたいこの鉄則
 第5章  音信不通だった父への扶養?
        「扶養義務」ってなに?――親子兄弟はどこまで助け合う義務が?
 第6章  高校進学のための学資保険を解約? 問われる「資産」活用
      ――車は?バイクは?持ち家は?あまりに厳しい「補足性」原理
 第7章  とにかく「働いて自分でやりなさい」? 生活保護と稼働能力
 第8章  介護のための同居は無理? 「世帯認定」って?
 第9章  生活保護と高校進学
 第10章 家賃を出してもらえない? 住宅扶助
 第11章 介護保険との関係は?
 第12章 こんなとき保護費(扶助)は出ないのですか?
 第13章 ケースワーカーとのつきあい方は?
 第14章 交通事故の示談金を全部返還? 「生活保護費の返還」ってどういうこと?
 第15章 保護を打ち切られた! 生活保護の廃止について
 第16章 あれもこれもわからないことだらけ
 第17章 審査請求のやり方は?

■引用

◆生活保護制度の特徴
@総合的生活保障システム
 「後述のように、生活保護は八つの扶助(生活、住宅、教育、介護、医療、出産、生業、葬祭)からなります。文字どおり「揺り籠から墓場まで」の生活を保障する総合的生活保障システムです。
 年金や健康保険、介護保険などのようにその分野だけに機能する制度ではなく、生活問題全体に丸ごと機能する制度なのです。このシステムが機動的、効果的に活用されるならば、生活保障の強力な制度になります。」(p.4)

A制度的「有利さ」
 「生活保護を利用できれば、他の制度利用についても利用料などの負担能力がないとされ、利用料減免制度や免税の制度があります。具体的には、固定資産税、保育料、NHK受信料は免除され、介護保険、医療保険の自己負担は払わなくてよいとされます(但し、国保は資格を失い生活保護から医療費を全額支給)。また、ほとんどの福祉制度は無料で利用できます。このため自己負担を気にすることなく、いわゆる他法他施策(生活保護以外の諸制度のこと)が活用でき、かなりの制度活用が可能となります。」(p.5)

◆生活保護の目的――生存権保障――
@最低生活保障
 「生活保護が憲法25条を具体化するものとして、すべての国民に健康で文化的な最低生活を保障するものであることから、当然に最低生活保障は法の最大且つ第一義的な目的となります。」(p.5)

A自立助長
 「人をして人たるに値する存在たらしめるには、最低生活を保障するだけでは不十分です。自立助長とは、その人のもついろいろな可能性を発見し、その能力にふさわしい状態で社会生活に適応させることであるとされています。けっして、保護からの単なる離脱を自立と称するものではありません。」(p.6)

◆基本原理
 「生活保護には、以下の四原理が定められています。四原理のうち、国家責任、無差別平等、最低生活保障の三原理が憲法上の要請・原理ともいうべきものであるのに対し、補足性の原理は自己責任の考え方に基づく資産保有限度など法解釈上の根拠となるものです。したがって、四つ目の補足性の原理は本来これら三原理を制限するものであってはならずその趣旨を最大限いかすものでなければなりません。しかし、補足性が過度に強調され、<006<補足性原理の肥大化を生んでいるのが実状です。」(pp.6-7)

◆補足性(法4条)
 「現代社会が自己責任を基調とする社会であることから、生活保護はあくまで個人が可能な努力をしてもなお最低生活を維持できない場合に登場します。
 どこまで個人の努力を求め、資産などの活用を求めるかが実は生活保護を利用できるかどうかの分かれ目となるため、生活保護基準の水準と並んで、その線引きは重要な意味をもっています。
 補足性原理は、生活水準の向上にしたがって基本的には緩和されてきた歴史ももっています。つまり緩和することによってスティグマ(「烙印」のこと)を軽減してきたのです。ところが、昨今、この原理の過度の強調が目立つ事態となっています。
 (イ)保護は生活困窮者が、その利用しうる資産、能力などを活用することを要件として行われます(法4条1項)。また、扶養義務者による扶養や他の制度による扶助は生活保護に優先します(同条2項)。
 ただし、急迫した事由がある場合には必要な保護が行われることは妨げられません(同条3項)。なお、この急迫状況とは、単に最低生活は維持できない状況ではなく、生存が危うくされるような場合とされ、職権保護における急迫状況(法7条)と同義とされています。

◆他法
 「生活保護は社会保障制度のなかにあって最後の歯止めの制度であることから、他の制度・施策によって救済できる場合には生活保護法より先に活用するように求められます。前記のように、生活保護が、総合的生活保障システムであり生活の全分野にかかわることから、他法・他施策は多岐にわたります。年金、手当、医療、介護などの制度全般が検討対象になります。」(p.11)

◆最低生活保障基準
 「保護の実施は、厚生労働大臣の定める基準により測定した、要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭または物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行われます。
 保護の基準は、毎年厚生労働大臣告示によって示されます。全国を大都市から地方まで六段階に分け、年齢別などで示されています。現在(二〇〇五年度)、標準三人世帯(三三歳男・二九歳女・四歳子)で生活扶助基準は、月額一六万二一七〇円(大都市部)です。通常これに家賃分が加算されます。」(p.13)


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